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理由や原因はわからず
しおりを挟むでも、フィネさん達が見た魔物の死骸の数から、偶然魔物と遭遇して倒したというのは考えられないと……。
だったら、一体なんで魔物の死骸が打ち捨てられていたんだろうか?
「……わからんな。魔物と討伐しておいて、そのままにしている。ない事ではないが、数が多いとなると何者かが目的を持って行動しているとも考えられる」
「そうですね。――モニカさん、ソフィー、フィネさん。あとフィリーナは……調査には行っていないけど、何か考え付いたら教えて。それで、もし魔物の死骸をそのままにしていた場合、それで周囲の街や村に与える影響って何かあるかな?」
「そうね……シュットラウル様も言っていたけど、魔物の死骸には魔物が集まる事があるわ。楽して食べられる食料だからね。でも、わざわざそうする理由がわからないわ」
「魔物が集まれば、周辺の街や村にも被害が出る事だってある。だが……以前のルジナウムを見ていれば、効率が悪すぎるとしか言えないな。リクは、今回もあの組織が拘わっていると考えているんだろう?」
「可能性としてね。不穏な事が、全部あちらの組織と関係している、とは決めつけられないよ」
決めつけて考えていたら、そこで思考が止まって本質が見えなかったりするからね。
なんだっけ、日本で漫画を読んだ時に主人公か誰かが、そう言っていた。
可能性が高く、そうとしか見えなくても他の可能性も常に考える、確実と言えるまで決めつけるのは本質を見抜けない単なる思考停止だ……とかなんとか。
「ほほう、リク殿はそうやって、これまで数々の騒動や調査を行ってきたわけだな……」
ソフィーに答える俺を見て、シュットラウルさんは面白そうな表情をしながら呟く。
「いえ……考え方よりも偶然の方が多いんですけどね」
それに、受け売りだし常に心掛けている程でもない。
まぁ、一応は考える指標とはしているけど。
「でも、これまでの事から不自然な状況は、ほとんどあの組織が関係している場合が多かったけど……」
「だがリクの言う通り、確証はないから決めつけるのも良くないな」
「どういった理由、どういった者が拘わっているにせよ、魔物が減らない事との拘わりがあるような気がします」
「そうですね……まぁ俺の考え方は一つの考え方というだけですから、それにこだわる必要はないんですけど。んー……フィネさん、その魔物の死骸には、他に不自然な点はありませんでしたか?」
モニカさんの言う事もよくわかる……これまでを考えたら、アテトリア国内で起こった不自然な出来事は、ほとんど帝国の組織が拘わっていたからね。
もちろん全部が全部というわけじゃないけど、俺達が拘わってきた……というより巻き込まれた事が多いから、どうしてもそう考えてしまう。
ともあれ、現状では決めつけることはできない。
もう少し何かしらの情報があれば……組織が拘わっているかはともかく、調査の指針とかのためになりそうなんだけど、と思ってフィネさんに聞いてみた。
「不自然と言われると……打ち捨てられた魔物の死骸が多い、という部分が既に不自然なので……」
「……魔物の倒され方とか、そういった部分では? まぁ、あまり死骸を詳しく調べていないかもしれませんけど」
誰かが何のつもりでかはともかく、既に事切れている魔物を調べるというのは、気持ちがいいものじゃないからね。
不自然だとか、不思議に思っている事でもあまりじっくり調べていないかもしれない……数が多い、という部分を少し不自然に考えただけだろうし。
もちろん、自分が倒した魔物は冒険者としてはちゃんと、討伐証明部位を切り取ったり、素材を入手する必要はあるんだけど。
「数が数なので……私達が見て回った範囲だけでも、数十はいましたからさすがに全ては」
「まだ一日しか調査をしていないから、魔物が確認された場所全てを見て回れていないのよね。何かの理由があるのなら、私達が見た場所以外でも魔物の死骸が打ち捨てられているのかもしれないわ」
「調査と直接関係があるわけじゃないし、魔物の死骸をじっくり調べるのは難しいか……」
「……リク、はっきりとはしていないし私も詳細を調べたわけではないから、確かな事は言えないのだが」
「ソフィー、どうしたの?」
数も数だしで、調査があるため死骸を一つ一つ調べたりはできないか。
それでもまだ魔物がいる箇所全てを見て回れたわけじゃないみたいだし。
初日というのもあって、できるだけ広範囲を見て回るようにしていたみたいだし、そもそも魔物の死骸が何か関係しているかすら考えていなかったんだから。
フィネさんとモニカさんの話を聞いて、考え込む俺に対し、ソフィーが難しい表情をしながら声をあげた。
「あくまで、見かけた死骸を観察しただけなんだが……一つ一つを調べたわけではない事は、理解してくれ」
「うん。何か、気になる事があったの?」
「死骸のほとんどは、剣などの武器で付けられた傷があるのと、魔物同士で争ったんだろう、武器以外での傷があるのもあった」
大まかに見ただけでも、大きな傷を負って事切れている魔物なら、どういう死因だったかは予想できる。
とは言っても、本当に直接の死因かどうかは詳しく調べないといけないけど。
ともあれ、魔物同士が争ったような傷というのは、多分だけど噛みつき跡みたいなのがあったり、明らかに武器とは違う傷の付き方だったという事だと思う。
これも、ちょっと観察すればわかる事だね。
「武器でというのは、誰かがやった事だと思うけど……魔物同士と言うのなら、ルジナウムや王都とは増々違うね」
ルジナウムや王都に押し寄せた魔物は、様々な種族が混同しておきながら、魔物同士で争う事なく襲い掛かって来ていた。
だからこそ作為的な印象を受けたんだけど、今回はそうじゃないって事は、もしかしたら組織との関係はないのかもしれないとも考えられる。
決めつけは良くないけどね。
「あぁ。だが一部の魔物で傷どころか、体の大半が食われていた死骸もあった。これ自体は、魔物が魔物を食べる事もよくある事だし、不自然とも言えない」
「食事が必要な魔物は、近くにいる人間や魔物を襲い、食べる。もちろん、打ち捨てられた死骸も魔物が集まって食べる事だってあるだろう。そこに不自然さはなさそうだが?」
「はい、私が観察した時も不自然に感じなかったので、特に気にしていませんでしたが……」
ソフィーの話す内容に、シュットラウルさんが反応。
確かに放っておかれた死骸を、他の魔物が食べる事に何も不自然な事はなさそうだ。
魔物同士が争わないようにされているならまだしも、争った形跡も見られるなら特にだね。
「ですが、その……なんというか、中途半端なんです」
「中途半端……?」
「ソフィーは、その食べ跡に何か感じたの?」
「何かを感じたというか……さっきも言ったが、体の大半を食べられている死骸もあったんだが、それならなぜ全てを食べていないのか、と思ってな」
「うーん、偶然とも考えられるけど……それこそ、途中でお腹いっぱいになったんじゃない? ソフィーが見つけた食べ跡がそうだっただけで、全て食べられていたら、痕跡を見つけるのも難しいだろうし……」
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