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事後処理を終えて中央管理棟へ

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 さすがに、ヒミズデマモグを逃さないために作った土の壁を、そのままにはできないからと、すぐに元に戻すよう動き出す。
 壁そのものはまだしも、円形に深い溝ができてしまっているし、人が落ちたら危ない……幅は狭いから、下まで一気に落ちる事はないけど、足を取られたり危険なのは間違いないからね。
 何もないはずの場所を囲むように、急に円形の溝があったら東村の人達も困るだろうし。
 アマリーラさん達に言って、ヒミズデマモグの片付けを任せて俺は土の壁と溝の処理を担当。

 とは言っても、固めた土に触れて別の魔法で上書き、固まらずに元の状態と変わらない、周辺の土と同じようにするだけなんだけどね。
 イメージと最初の発動場所から移動しているから、全体に魔力を行き渡らせるのに、少し時間がかかるくらいか。
 兵士さん達を呼んで、ヒミズデマモグの解体を始めたアマリーラさん達を眺めながら、のんびりと処理させてもらった。
 急にできた溝を兵士さん達が飛び越えるのを見た時は、やっぱり迷惑をかけてしまったなぁと思う。

 とりあえず、溝ができた事に関しての説明は、アマリーラさん達に任せておこう……まともに説明していないから、伝えられるかわからないけど。
 そうして、大きいヒミズデマモグは兵士さん達の協力の下、テキパキと片付けられる。
 あちらが終わる頃には俺の方も、溝と壁の処理も終わっていた……掘り返したような、見るとはっきり何かの跡だってわかる感じになっちゃったけど、特に問題はなさそうだ。
 念のため探知魔法で調べてみても、二度魔力を伝わせて魔法を使っても変に魔力をため込んでいる様子はなかったし、その後の影響はないはず。


 ヒミズデマモグの処理後、その場を兵士さん達に任せて俺とアマリーラさん達は、農地の結界内へ。

「リク様、おそらくアダンラダもそうですが、ヒミズデマモグの討伐報酬も、センテの冒険者ギルドで処理させて頂きたいと思います」
「え? でも討伐証明部位とか、取っていませんし……」


 シュットラウルさんが待っているはずの、中央棟へ行く途中にアマリーラさんから言われる。
 確かに倒したけど、両方ともその後の処理は任せたし、俺一人で倒したわけじゃない。
 それに、その魔物特有の素材か討伐証明部位がないと、本当に討伐したと認められないので、冒険者ギルドに行っても報酬はもらえないはず……嘘ついて倒したって人がいたからいけないからね。
 そもそも、報酬が欲しくて倒したわけじゃないし……。

「問題ありません。ルーゼンライハ侯爵様が保証してくれますし、私達も。リク様がいて下さらなければ、ある程度の被害が兵士に出ていた可能性もあります」
「リク様のおかげで~、誰も怪我をしなかったんだから当然もらう権利はありますよ~」
「うーん、そうですか。報酬のためにやったわけじゃありませんけど……ありがたくもらっておきます」

 あんまり遠慮するのも失礼だと思うし、ここはありがたくもらっておこう。
 もしクランを作るとしたら、運営資金も必要らしいし……これまでの報酬や褒賞やらで、それなりのお金を持っているけど、あって困る物でもないだろうから。
 ちなみに、ヒミズデマモグは触角と土を掘る爪、硬い毛と柔らかい毛が混合している体毛が、それなりの値で取引される素材らしい。
 処理はアマリーラさん達に任せたので、そちらの素材もどうするかはお任せすると、歩きながら話していたんだけど、報酬に上乗せしてくれるとか。

 シュットラウルさんではなく、アマリーラさん達がそれを決めていいのか、と少しだけ気になったけど……俺に同行する前にシュットラウルさんから、報酬に関しての話をされていたらしい。
 本当に魔物がいたら討伐後に、いなければアダンラダの討伐報酬を、戻ってきた時にシュットラウルさんから伝えられる予定だったのだとか。
 報酬は最初から決まっていた事だったのか……まぁ、ありがたくもらっておこう。


 アマリーラさん達と中央棟付近に戻ると、少し離れた畑区画の中にいるシュットラウルさんから声をかけられる。

「おぉ、リク殿。戻ったか。やはりリク殿の言っていた通り、魔物がいたのだな。しかもヒミズデマモグ……中々厄介な魔物だったようだが」
「シュットラウルさん……なんで外で寛いでいるんですか……?」

 ヒミズデマモグの事は、アマリーラさんが兵士さんに伝令をさせていたので、知っていても不思議じゃないけど……なんでわざわざ外なのか。
 中央棟は管理棟の役目もあるので、それなりのスペースがあるからそっちで寛げばいいのに。
 畑区画の中と言っても、まだ耕されてすらない予定地なので、そこにいるのは問題ないとは思うけど。

「いやなに、建物の中というのは少々息が詰まるのでな。普段、部屋のこもっている事が多いのもあって、こうして外の空気を感じているのだ。まぁ、風がほとんどないのが残念だが……」
「結界で覆っていますからね。完全には塞いでいないので空気は入れ替わりますけど、さすがに風はここまで届かないでしょう」

 空気の流れ自体は、それなりにある。
 一応これまでの事を考えて、ドーム状に農地を覆う結界に空気穴のような物もあけてあるから、酸素が足りなくなる事はない。
 作物を作り始めれば、植物が一斉に育つからそこまで考えなくていいのかもしれないけど。
 とは言っても、温度管理が難しくなるので空気穴も針を通すくらいの大きさをイメージしたし、出入り口も遠いので、中央までは風が届かないのは当然の事。

「だがしかし、こうしてここでお茶を飲みながら、広い農地を見渡すのもまた、良いものだ。できれば酒が良かったのだがな」
「シュットラウル様、さすがに外でお酒を出すわけには参りません。持って来てもおりませんから」

 見渡して見えるのは、耕され始めた畑や中央棟くらいなものなので、景色がいいとまでは言えないけど見晴らしはいい。
 こういう所でのんびりとお茶を飲むのも、美味しく頂けるのかもしれないね……確かにこれなら、風も少しあった方が気持ち良かったかもしれないと、シュットラウルさんの気持ちを少しだけ理解。
 ただ、お酒が欲しいと漏らすシュットラウルさんには、隣でお茶の入ったポットらしき物をもって待機している、執事さんに注意されていたけど。

 そういえば、さらに離れた場所で焚き火をしている様子が見えた……そこでお湯を沸かしたりしているんだろう。
 焚き火後の灰とかは、肥料になるだろうからまだ種すら飢えていない畑区画であれば、自由に使い放題ってわけかな。

「わかっておるよ。おっと……リク殿。立ち話もなんだから、座って寛ぎながら話そうではないか。結界の境目の確認も済んでおらんし、フィリーナ殿もまだ戻っておらんからな。そういえば、リク殿は酒もいけるくちか?」
「いえ、お酒はちょっと……そうですね、立派なセットがあるのでせっかくですし、寛がせてもらいます」

 お酒にはいい思い出がないからね……この世界に来るまで飲んだ事がなかったし、今のところ特に飲みたいとは感じないため、断りながらシュットラウルさんの向かいに座る。
 アマリーラさん達は同じ席に付かず、近くで待機するようだ――。

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