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アルネへの事情説明
しおりを挟むアルセイス様の事を説明する中で、実際に行ったのであろう言葉を再現するユノ。
声真似はしていないが、ユノはアルセイス様の喋り方を真似ているようで、随分と軽い感じなのが伝わってくる。
語尾を伸ばしたり、「よん」と言ってみたり……なんだろう、考えていた神様のありがたいお言葉とかそういう感じは一切ない。
まぁ、目の前にいるユノが見た目に引きずられてか、子供っぽい喋り方なので、気にするだけ無駄なだと思うけど。
神様だからって、重苦しい喋り方をしなきゃいけないってわけじゃないからね。
「アルセイス様がそんな事を? いや、それが正しいかどうか……ユノはなぜ……?」
さすがに、ユノの事を知っている俺はともかく、妹という事で通しているアルネには、信じがたいようだ。
ユノが安易な嘘を吐いたりはしないと考えている様子ではあるけど、さりとて自分達エルフが崇めているアルセイス様の言葉を聞いた事があるというのは、すぐに信じられないよね。
あと、思った以上に軽い喋り方なので、それも信憑性を薄くしている原因だろう。
「アルセイスは、部下なの……部下、でいいの? とにかく、元々私の方が上だったの!」
「は!?……リク、ユノは何を言っているんだ? アルセイス様はエルフや森の神。それがユノの部下などと……」
「あー、えっと……そうだね……」
「面倒だから、さっさと事情を話した方がいいと思うのだわー」
「まぁ、そうか。えっと、アルネ……心して聞いて欲しいし、一部の……俺達の他には姉さんくらいしか知らないから、あまり口外はしないで欲しいんだけど……」
ユノがアルセイス様を部下と言った事に驚くアルネは、さらに信じられない様子で、俺に尋ねる。
どう説明したもんか……と悩んでいると、頭にくっ付いているエルサが面倒くさそうに、事情を話してしまえと言った。
アルセイス様やユノの事を考えれば、説明しておかないと話が伝わらないだろうし、よくわからない事が多過ぎて混乱するだろうからね。
そう考えて、アルネがは信用しているし誰彼構わず言いふらしたりはしないと思うけど、一応軽く口止めをしつつ、ユノと俺の関係やら事情を説明した。
「リクはこの世界の人間じゃない……? そして、ユノ……いや、ユノ様はアルセイス様より上位の神様である、と……にわかには信じがたいが、エルサ様がいる事や、リクの非常識な魔力。そして、ユノ様の見た目からは信じられない程、簡単に魔物を倒すさまを見ていると、信じなければならないのだろうな。まぁ、これまで共にいた経験からも、リク達が嘘を言っているとは思えない」
「うん、信じてくれてありがとう」
なんとか、かいつまんでアルネに説明して、信じられないという感覚に苛まれながらも、俺の言う事は信用してくれた。
まぁ、荒唐無稽というか、何も知らない他人だったら頭がおかしくなったんじゃないか? と思われそうな内容だから、一緒に行動して信頼関係を築けているのが大きいかな。
「それでユノ、部下……というのが神様達にあるのかは知らないけど、ともかくそのアルセイス様に呼ばれているんだな?」
「そうなの。エルフがいないと世界と直接繋がれないから、誰かエルフを連れてきて欲しいって言っていたの。私は大丈夫だけど、リクはこのままじゃ話せないの。アルセイスは、リクと話したがっているの」
「俺と……か。まぁ、ユノと一緒にいるから、興味も引くのかな?」
「アルセイス様が顕現する、という事か? うぅむ……色々な話が一気に入り込んで、よくわからんな……寝起きもあれだったし。いや、考えようによっては、神であるユノ様自らと思えば光栄な事といえるのか?」
ユノによると、アルセイス様は俺と会って話したいらしく、そのためにはこの世界と直接繋がるためのエルフが必要なんだそうだ……だからアルネを起こしたのか。
向こうからしたら、かつての上司……神々の考えで上司と部下という考えが合っているかはともかく、ユノと一緒にいるんだから、興味を引いてもおかしい事じゃないのかもな。
アルネの方はあんな起こされ方をされた挙句、色々な説明を寝起きでされて、混乱している様子ではあるが、なんとか理解しようとしてくれている。
だけど、さすがにユノに圧し掛かられる事を光栄と思わない方がいい気がする……なんというか、幼女に対して特殊な趣味に見られかねないからね。
「とにかく行くのー!」
「あぁ、わかったわかった。だから引っ張らないでくれー」
「逆らう気はないが、ここでリク達を見送って寝直したら……さっきと同じ事の繰り返しになりそうだから、止めておこう。まだ永遠の眠りにはつきたくないからな」
俺の服を引っ張って、呼ばれているというアルセイス様の所へ連れて行こうとするユノ。
後ろで、少しだけ安眠への誘惑にかられた様子のアルネも、結局ついて来る事したようだ……まぁ、さすがに冗談だろうけど――。
「静かだなぁ……夜だから当然だけど」
モニカさん達を起こさないよう、静かに外へ出ると、真っ暗な闇夜が集落を包み込んでいて、風や虫などの音が聞こえる以外は人の声や生活音すら聞こえない。
ヘルサルや王都はもちろんの事、他の街では松明などの明かりが灯されて、酒場とかも開いていたりするけど、エルフの集落はそんな事がないようだ。
「集落では、一部を除いて日の動きと共に生活する者が多いからな。夜は基本的に早く床に就くし、朝は日の出と共に起き出す。この様子を見るに、集落に訪れている者達も合わせているようだ」
「一部?」
「まぁ、研究に没頭しているエルフ達だな」
「あー、アルネみたいに夜更かししたり、徹夜したりって事かぁ」
アルネが言った一部というのが気になって聞いてみると、研究に没頭する事で寝食を忘れて集中しているエルフもいるらしい。
まぁ、アルネのようなエルフが他にもいるって事だろう。
ユノを先頭に歩いていても出歩いている人がいないのは、、暗いながらも確認できるから、この集落に来ている人間や獣人達も、エルフの生活に合わせているみたいだね。
なんとなく、お互いが歩み寄ろうとしている感じがするかな。
「でも、少しは明かりがあってもいいもしれないね?」
「エルフは森と共に生きてきたから、夜間に火を灯す事はしないんだ。家の中でくらいはしているだろうが、外で火を使っていると場合によっては危険だからな。それに、魔物が寄って来る事も考えられる。まぁ、今は森の外にも集落が広がっているから、そちらでなら大丈夫だろうが……昔の名残だな」
「成る程ね。森の中で夜そこらに松明をっていうのも危ないか」
明かりに釣られて魔物が寄って来る事もあれば、火の番をしていないと森の木に燃え移ったりする危険もあるため、夜間でも明りを灯さないようにしているみたいだ。
魔法で明かりを付ければ……とも思ったけど、そういう魔法があったとしても、クォンツァイタみたいに多くの魔力を蓄積させられる何かがないため、夜間ずっと魔法の光を放っているのも難しい。
誰かが魔力の補充をしないといけないから、手間だろうし、それなら結局火の番をしているのと変わらないからね……まぁ、魔物が寄って来ていないかとかの、見張りとかはいるんだろうけど――。
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