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王城の魔物も近い方法で集結した可能性
しおりを挟む「そうよね、そうなるのよね。あの時の事は妙だと思うけど、ルジナウムのクォンツァイタと同じ物が使われたとは思えないわ。けど、魔物を集結させる方法がわかった以上、繋がっていると考えるべきね……」
ともかく、王城の方はルジナウムの時とは違い、明確に王城を目指して押し寄せて来ていた。
魔物が自由意思で人間を狙ったのであれば、先に城下町で暴れているはずなのに、だね……王城は、王都と呼ばれる城下町に周囲を囲まれているから、町中を通らないといけないし、実際に通って来ていたのだから。
そして、エフライムの言うようにどこかへ集結させる事が可能だとしても、そうしている間に冒険者ギルドや国が見つけてしまう可能性が高い。
魔物が集結しているなんて、目立つのは当然だからね。
なのにあの時、そんな情報は一切なく突然魔物が大挙として押し寄せてきたのはなぜなのか……アルネの予想なら、遠くから魔物を集める場合にクォンツァイタ利用したら、キマイラやキュクロップスのような強力な魔物が来る可能性が高そうだし、あの時にそんな魔物はいなかった。
強力なのは、ワイバーンくらいだったかな。
ただ、王都付近にキマイラが派遣されたと依頼を受けて討伐した事はあるし、キマイラ自体が近付いて来ていた可能性もある……強力な魔物が遠くから来る前で、先に周辺の魔物が集まって王城を目指したとかだろうか?
「なんにせよ、王城を明確に魔物が目指す理由や方法がわからないね」
「そうね。もしかするとクォンツァイタ以外にも、何かあるのかもしれないわ。それか、クォンツァイタをまた別の方法で利用していたかね」
「別の方法?」
「魔力を蓄積させる鉱石……いわば魔石とも言える物よ? やり方によっては、他にも利用できそうじゃない? 発動させたら、周囲の魔物を集めるとか……ルジナウムのようにゆっくり集めるんじゃなくて、周辺に強烈に知らせる事で、魔物を刺激するとか? 魔法関係は詳しくないから、本当にできるのかわからないけど……」
「……確かに、一つの方法だけしか使えないわけじゃないか。もしかしたら、強力な魔物は集められないけど、数をすぐに集める方法とかがあるのかもしれないね」
クォンツァイタを利用する方法は、何も一つだけじゃない。
ルジナウムでは魔力を放出し続ける事で、ゆっくりと魔物を集めたわけだけど、姉さんの言う通りすぐに集める何かしらの方法があってもおかしくはない……かな?
それこそ、俺達が知らない魔物に対する何かの研究成果で、集める方法がわかったとかかもしれないし、クォンツァイタを利用する以外にもあるのかもしれない。
ともかく、調べて何かを見つけてみないとわからないとなり、結論は出なかった。
「エルフの集落へ行く前にヘルサルに寄ってみるから、その時ゴブリンの事も調べてみるよ」
「そうね。そっちはお願いするわ」
「まぁ、ゴブリンの方はあまり関係ないかもしれないけどね……」
「そうなの?」
「うん。ゴブリン達は、ゴブリンロードが集めたからって事だから……」
ゴブリンに関しては、クォンツァイタではなくゴブリンロードがいたから集まった、というのはわかっている。
クォンツァイタを利用した集結法ではないので、一連の事とはあまり関係性がなさそうだと、ゴブリンロードに関する情報を姉さんに説明した。
「そのゴブリンロードが、ゴブリンを集める特性を研究して、何かしらの方法を見つけた可能性は捨てきれないわね……」
「言われてみれば、確かに。あれを研究できるのかはともかく、ゴブリン限定で自然と集まるらしいから、ヒントは得られるかもしれないね」
ゴブリンロードがいる場所へ、様々なゴブリンが集まって統率されて行く……というのは冒険者ギルドも把握している情報だけど、なぜ集める事ができるのかという理由はわかっていない。
戦った俺達からすると、自然と集まっていたのであの大量のゴブリン達に紛れて、ゴブリンロードを調べる事ができるかは不可能に近い気もするけど、何かしらのヒントを得られた可能性はある。
まぁ、よくわからなくても、ゴブリンロードを攻撃したい場所にポンと投げ出すだけで、ゴブリン達が勝手に動いて暴れまわるんだから、クォンツァイタで魔物を集めた状況と似ていると言えば似ているので、絶対に関係がないとは言い切れないくらいかな。
……勝手に集まる大量のゴブリンがいながら、ゴブリンロードを好きな場所に放り出す事ができるかは、疑問だけども。
「ねぇリクさん。もしかしてなんだけど……」
「どうしたのモニカさん?」
「モニカ、何か気付いた事があるの?」
「いえ、勘違いかもしれないのですけど……」
「今は少しの情報も欲しいから、なんでも言ってちょうだい? 間違っているかもとかは気にしないで」
大きな戦いがあった時の事を考えて、色々な話をして、結論は調べてみないとわからない……と些か徒労を感じる結果になり、夕食を食べ進めて終わりそうになった頃、モニカさんが何かに気付いたように声をかけてきた。
モニカさんは自信がなさそうだけど、ちょっとした情報がヒントになるかもしれないからと、姉さんが笑いかけながら先を促す。
「その……オシグ村に行った時の事なんですけど……」
「オシグ村……あぁ、りっくん達が村の近くに来た魔物を討伐するって、依頼を受けて行った村ね」
「ふむ、あの村か」
「その、村に行った時に戦った魔物が、通常では一緒にいる事がほぼないような魔物だったんです」
「あー、そういえばそんな魔物だったね……」
オシグ村の畑にいた魔物は確か、リザードマンとビッグフロッグ、それにグリーンタートルだ。
いずれも湿地帯に多く棲んでいる魔物で、クレメン子爵領の南でよく確認されているようだけど、オシグ村は湿地帯じゃない。
それに、グリーンタートルはまだしもリザードマンは、ビッグフロッグの食糧になるような力関係で、それらの魔物が一緒にいるうえ、数もそれなりに多かった。
それぞれが戦う事もなく、おとなしく……近付いたら攻撃してきたけど、それはともかく……お互いを攻撃する事もなく、興奮している様子ですらなく、おとなしくしていたっけ。
「あの時も感じていたけど、やっぱりちょっと不自然かなと思うんです。ルジナウムに魔物が集結していた状況を見て、同じ……かはともかく、何か仕掛けがあるのではないかと考えていました」
「あれは確かに不思議だったな。いや、ルジナウムや他の状況もおかしいと言えばおかしいんだが……私達が戦闘を仕掛けたら、迎え撃つように応戦し始めたが、見つからないように観察している時にはおとなしい様子だった。まぁ、グリーンタートルは土を食べていたが……」
モニカさんがオシグ村での事を説明して、ソフィーが付け加える……グリーンタートルに関しては、土を食べる魔物だからね。
そこらに耕した畑の土があるうえ、リザードマンやビッグフロッグがおとなしくて邪魔されないのだから、気ままに土を食べていたんだろうと思う。
そこはまぁ、そんなに違和感はないと言うか自然なんだけど、問題はビッグフロッグとリザードマンが一緒にいるのに、おとなしかったという状況だった――。
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