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昼食を食べた後は鉱山へ

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「はい。ベルンタさん、ルジナウムのギルドマスターのノイッシュさんが、これからはそれぞれのギルドとの連携を強めて、情報共有や協力をしていく……と言っていました」
「まぁ、ここだけの話でないなら、各ギルドで警戒せねばならんじゃろう。わかった。こちらからもルジナウムや他のギルドに働きかけよう。……差し当たって、依頼を頼んだ冒険者が戻って来てからじゃがの」
「……今、俺達くらいしか冒険者がいないですからね。王都に戻る時には、ついでなので代わりに俺が伝えておきますよ」

 とりあえず、話しだけでもと王都に戻る前に一度ルジナウムに寄り、ノイッシュさんに話をしておく事にする。
 正式には、依頼で出払っている冒険者さん達が戻って来てから連絡を取るようだけど、それまでに情報などを整理しておくとの事だ。
 俺は、やりやすいように話を通しておくだけで良さそうだね。
 ベルンタさんとの話が終わり、アルテさんにも挨拶をして鉱夫組合へと向かった。


「えっと、フォルガットさんは……?」
「ようこそ、リク様。お待ちしておりました!」

 鉱夫組合の建物に入って、フォルガットさんを呼んでもらおうと声をかけると、建物内から事務の職員さん達も集まって来て大歓迎のムード。
 まぁ、クォンツァイタだったり、エクスブロジオンオーガを倒したりして、貢献した影響なんだろうけど……周囲に集まった職員さん達を邪魔そうにしながらも、あまり強く言えない様子のフォルガットさんと話して、少し後にまた鉱山へと入る事になった。
 一応、まだエクスブロジオンオーガが残っていないかの、最後の点検みたいなものだね。
 俺とフォルガットさんが話している時、モニカさんやフィネさんを交えて、職員さん達がエルサにキューをおやつにあげたりしていた。

 真剣な雰囲気を出さなきゃいけないわけじゃないから、いいんだけど……モニカさん達、馴染むのが早いなぁ。
 というか、何も言っていないのにキューが出てきたんだけど、エルサはキューが好物だとどこから知って……って、ここでも遠慮せずに酒場で食事をする時や、外でもエルサにキューを食べさせていたからか。
 まぁ、こちらでは俺がキューを買っているという情報で、真似をしてとかではなく、エルサ用のおやつとして用意していただけらしいので、品切れや値段の高騰まで行っていない模様だ。
 鉱夫さん達も含めて、街の人達の多くがクォンツァイタに意識が向いているというのも、大きいのかもしれない。

「今日はよくキューが食べれる、いい日なのだわー!」
「組合でも結構食べていたのに、まだ食べるんだな……」
「キューは別腹だからなのだわ! いくらでも入るのだわ!」
「よく満腹になって仰向けに転がってるから、いくらでもは言い過ぎだと思うよ?」

 フォルガットさんとの話を終え、鉱山では案内が付く事を決めた後、先に昼食を済ませるため馴染みになりつつある酒場での食事。
 職員さん達から大量にキューをもらっていたのに、ここでも頼んで食べている……よく入るなぁ。
 お腹を膨らませて、ひっくり返っている事があるから本当に無限に入るとか、そういう事はないんだろうけど、エルサとしてはいくらでも食べられるくらい好きって言いたいんだろう。
 昨日は、キューの値段が上がったのを気にして、食べる量を減らさないといけないのかと気にしていたのに、実際食べ始めるとそんな事は忘却の彼方らしい。

「そういえばリクさん、組合では案内の人が二人来てくれるって言われたけど、そんなに大人数で鉱山の中を調べるの? 私達も入れると……えっと、八人になるわね」
「あぁ、そうか。モニカさんはルジナウムにいたから、鉱山の中に入っていなんだったね。えっと、大人数で動くのは狭いから、二手に別れて調べるんだ。広い場所もあるけど、鉱山の中にある道は基本的に二人並んで歩くくらいの幅しかないからね。八人でぞろぞろと歩いていても、いざという時動けないから」
「あぁ、そういう事ね。だから二人と……成る程」

 鉱夫組合では、地図を覚えている人が二人程、俺達の案内をする事になっているんだけど、一人じゃなくて二人というところにモニカさんは引っかかったみたいだ。
 一応、鉱山で起こった事とかはある程度説明してあるんだけど、二手に別れて広い範囲を調べる、とかまでは伝えていなかったからね。
 というより、ここ最近色々と話す事ややる事が多くて、そこまで細かく話せなかった……と言うのが正しいかもしれないけど。

「でも、リクさんの探査魔法で調べれば、全てでなくても広い範囲で魔物がいるかわかるんじゃない?」
「そこも説明していなかったっけ……えっと、鉱山の中には魔力を含んだ鉱石とかもあって、探査魔法の邪魔になるんだ。だから、ほとんど役に立たなくて使えないんだよね。使っても、わかるのは目に見える範囲より狭いくらい、かな」
「クォンツァイタとか、魔力を蓄積している事があるんだったわね。鉱山の内部を調べると一言で言っても、色々と面倒なのねぇ」
「もし魔物が出ても、モニカ嬢ちゃんは魔法具の武器を使う出ないぞ? 単純な槍として使うんじゃ」
「それは、さすがにわかります。以前にも言われましたから……」

 探査魔法が使えない大きな理由って、もしかしたらクォンツァイタが埋まっているからというのが大きいのかもしれない。
 他に魔力を含んだ鉱石……いや、自然の物でも何かしらの魔力があるから、それだけじゃないだろうけど、大きな理由ではありそうだね。
 あと、エアラハールさんがこれから鉱山の中に入るというのに、お酒を飲みながらモニカさんに注意……大丈夫だろうかと思うけど、エクスブロジオンオーガはほぼいないだろうから、なんとかなるか。
 単独行動さえしなければ、案内の人もいるし、鉱夫さん達も採掘を再開しているから、迷って出られなくなるなんて事もないだろうし、エアラハールさんが戦うような事もなさそうだからね。

 そのエアラハールさんが注意したモニカさんの魔法具、最近は別々に戦っている事が多いため、見ていないけど、火の魔法が使える魔法具であり槍だから、鉱山の中で使うのはさすがに厳禁だ。
 ちょっとした事で空気がなくなったりはしないだろうけど、それでも注意しておくに越した事はない。
 まぁ、それがあるから、モニカさんはブハギムノングの担当になったんだから、本人もわかっているはずだ。

「ではリク、今回はどう別ける?」
「そうだね……」

 肉多めの野菜炒めをつつきながら、鉱山内でのメンバーの分け方を聞くソフィー。
 前回は俺とソフィーだったから、単純に別々になればいいだけだったけど、今回は人数が多いから……。
 昼食を食べながら、メンバーの別け方を考えて少しだけ悩む事になった――。



 昼食後に組合をもう一度訪ね、案内してくれる人を連れて鉱山の入り口へ。
 ざっくりと、鉱山の西側東側で別けて調べる事になり、入り口で東側に行くソフィー達と別れる。

「それでは、リク。私達はあちらだな」
「こちらは任せるのだわー」
「大丈夫じゃろうが、油断するでないぞ?」
「お爺ちゃんの事は私がよく見ておくの!」
「ユノ嬢ちゃんや、さすがのワシもこんな中では真面目にするぞ?」
「はははは、まぁ、皆気を付けて……」


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