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複数の魔力を混在させる方法
しおりを挟む「うーん、どう言えばいいのかしら……リクは、魔力を探知する事ができるでしょ? その時、同じ人間でも少し違う感覚ってないかしら?」
「うん、あるよ。大体種族によって大まかに違っていて、さらに人間なら人間の中でも少しだけ感じが違っているから、それで知っている相手に関しては、判別ができる……という感じかな」
「私の目で見ているのと、大差はないようね。魔力が混じっているというのは、種族、または別の個人と思われる魔力の質が同一の存在の中にあると確認できる状態ね。本来、魔力はその人だけのものだから、混ざる事なんてないし、一時的に魔力を流し込んでもすぐに本来の魔力に飲み込まれてしまうの。これは、人間とエルフでも同様よ」
自分以外の魔力が流れ込んでも、異質な魔力は本来ある魔力に併合して、結局混ざり合うじゃなく無くなってしまう……と考えられるという事かな。
「オーガを例にすると、種族としては人間と魔物で全然違うのだけど、復元する時に大量の魔力を吸収しているから、そちらが本来の魔力なっているんじゃないかしら。そちらの研究はした事ないから、仮定だけどね」
まぁ、魔物の研究は禁忌とされているから、魔法関係に詳しいエルフでもさすがにわからないか。
「でも、ツヴァイは混ざっている状態だったんだよね? 確かに、見た目からして明らかにエルフなのに、人間のような質の魔力を感じられたけど」
「そうなの。エルフが本来持つ事がない、人間……いえ、人間に近いような気のする魔力が、ツヴァイの魔力と一緒にあるように見えたわ」
「人間に近い?」
「えぇ。人間と質としてはそっくりなんだけど、よく見るとなんだか違う感覚もあるの。はっきり断言はできないのだけど、人間じゃないようで人間の魔力……自分で言っていても、よくわからないわね」
うーん、人間だけど人間じゃない……人間を超越した何かとか、そんな感じかな? そんな存在がいるのかわからないけど。
「あ、近い状態で言えば、エルサ様ね。リクの魔力とエルサ様の魔力が同居していて、時折妙な違和感を感じる事があるわ」
「エルサが?――そうなのか、エルサ?」
「私とリクは契約しているのだわ。魔力は川のように高い所から低い所に流れるものなのだわ。だから、魔力が異常に高いリクから、私に流れて混ざり合っているのだわ。これがまた気持ちいいのだわー。契約をしているから、お互い異質な魔力ではなく、共存する魔力として存在できるのだわ」
頭にくっ付いているエルサに声をかける……静かだから寝ているのかと思ったけど、どうやら黙って話を聞くだけだったらしい。
それはともかく気持ちいいって……そんなぬるま湯に浸かっているように言われてもな……。
でも、だからエルサは魔力が増えた時に、多くの翼を出す事ができるのか……俺の魔力を使っていたんだな。
俺はエルサのモフモフで癒されて、エルサは俺からは魔力で気持ち良く……と考えれば、お互い様と言えなくもないか、契約って便利だなぁ。
「まぁ、エルサ様とリクが特別なのは当然ね。だとしたら、ツヴァイも誰かと契約している事で、魔力がまじりあった状況という事に? でも、エルフが契約だなんて聞いた事がないわ」
「契約は、ドラゴン特有なのだわ。契約をする事で体に課されていた制限が解除されて、全力で動けるのだわ。ドラゴンが他の種族とするものであって、ドラゴン以外の種族同士ではできないのだわ」
「……もし、ツヴァイが契約をしているために魔力が混ざり合っているのだとしたら……あの方って言っていたのは、ドラゴンって事に?」
ドラゴン以外は契約ができないのなら、契約をしていると仮定するなら、相手はドラゴンしかいない事になる。
そうなれば、自然とツヴァイが言っていたあのお方はドラゴンだと考えられるけど……。
「それはどうかしら? ツヴァイと混ざり合っていた魔力は、エルサちゃんのようなドラゴンの魔力ではなかったわ。エルサ様以外のドラゴンは見た事がないけど、エルサ様の魔力とは質が全然違うもの」
「そういえば、魔法も俺のとは違う感じがしたっけ。俺が見て真似た魔法も、ツヴァイは驚いていたから、ドラゴンの魔法自体知らなかったんだろうね。だったら確かに違うかぁ」
「見ただけで真似をするって……そんな事をしていたのね……」
フィリーナが驚いている様子だけど、俺が使うドラゴンの魔法は、イメージを具現化する物と考えてもいいくらいのものだからね。
強烈な魔法を見せてくれたから、ツヴァイの魔法はイメージしやすくて真似も簡単だったくらいだ。
逆に、フィリーナが使う風の魔法は、目に見えない刃だったりもするから、逆にイメージしづらい……こちらは、真似をしようとは思っていないけど。
「もう一つ、魔力を混ぜて混在させる方法があるのだわ」
「え、あるのか、エルサ?」
「あのエルフがそうなのだから、契約以外でもあって当然なのだわ」
ツヴァイが魔力の混ざっている状態であり、それがドラゴンとの契約でない以上他の方法があるというエルサの言葉も当然なのか。
方法がわからなくて、あり得ない……と思う事でも、実際にできているのだから何かしらのやり方があるんだろう。
「魔力が異常に高い者が、低い者に対して魔力に細工をして流し込む事……だと思うのだわ」
「細工をして……それってもしかして、リクが私にという事もできる?」
「可能か不可能かで言うと、可能なのだわ。けど、止めた方がいいのだわ」
「どうして? それができれば、リクの魔力を分け与えてもらって、今までできなかった事もできたりすると思うのだけど?」
「フィリーナ、俺の魔力をどう使おうとしているんだろう?」
「よく考えるのだわ。今までリクがやってきた魔法の数々を。そんなリクが、大量の魔力を送り込むのだわ?」
「あ……」
「ん、どうなるんだ?」
細工して魔力を送り込む……という事ができるのなら、可能らしいけど……俺が魔力を流し込む事と、今まで魔法を使ってきた事の関係性はなんだろう?
なんて、首を傾げているのは俺だけで、フィリーナだけでなくモニカさんやソフィーまでが何かを察したような表情になった。
え? あれ?
「……最悪、爆発かしら?」
「オーガの散り際と同じね……」
「……私は、まだ爆発までしたくはないな」
「ちょっと皆、何を言っているんだ? そんな事になったりは……」
「もしかしたらそうなるのだわ。少量ならまだしも、大量の異質な魔力は有害の可能性もあるのだわ。どうなるかはやってみないとわからないけどだわ、問題が起きるのは間違いないのだわ。お勧めはしないのだわー」
「でも、細工をしたら混ざるんでしょ? だったら俺にも……」
「リク、今まで魔力の調整すら失敗する事が多かったのだわ。それなのに、さらに繊細に細工なんて、出来るとは思えないのだわー」
「くっ……」
爆発させる気はないし、そんな事にはならないと思うけど……エルサの言う通り今まで失敗して来たのは事実だ。
それに、魔法を使う際の魔力調整以上に繊細なのだとしたら、できる自信があるなんて口が裂けても言えない。
悔しい気持ちを歯噛みして耐えていると、俺と目を合わさないようにそっぽを向いている皆の中で、ふとフィリーナが何かが思い当たったような素振りを見せた……あ、こっちを向いてくれた――。
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