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突入のための作戦会議
しおりを挟む「えーと、なんというか……オーガの反応なのは間違いないんですけど、反応としては弱いのがいくつもあります。あとは、人間でもオーガでもない反応がそこらにあって……もしかしたら、部屋? に魔力が充満しているんじゃないかと」
「部屋に魔力が充満か……何かの実験なのか? しかし弱い反応とは一体……」
「新しい研究や実験をしているのではないですか? どちらにしても、我々がここで考えているだけでは、何もわからないでしょう」
「そうですね。実際には入ってみないとでしょう」
「だな。まぁ、私達が連れてきた人数でなら、制圧も可能だろう」
「でも油断はしないで下さいね? 人間の方はわかりませんけど、オーガは爆発します。実際には見ていなくとも、合流した時にその影響は見たでしょう?」
中にいるオーガ全てが、爆発するうえ威力が高いのかどうかはわからないけど、屋外で爆発されるのと屋内で爆発されるのでは勝手が違うからね。
屋内だと物が飛んで来る事も考えられるし、飛ばされて壁にぶつかって怪我をする可能性だってある。
一度に複数爆発する事だってあるんだし、結界で即座に対応できるかどうかもわからない……警戒しておいて損はないだろう。
「それはわかっている。私は油断して足元をすくわれるような事はしないぞ?」
「ともかく、今集められる情報はこれくらいですか。一旦戻りましょう。連れて来た者達も含めて、作戦を決めませんと」
「そうですね、それじゃ……」
「見えないからわからないが、結界に包まれていると音が外に漏れずに便利だな」
「えぇ。それでもやはり注意する必要はあるでしょうけど、相手に悟られないように行動できるのはいいですね」
とりあえず、モニカさん達も待っているので一旦皆の所へ戻る事にする。
移動を開始する前に、全員を結界で包んで音が外に漏れないようにしておいた。
近づく時もそうだし、様子を窺っている時は家と俺達がいる場所の間に結界で壁を作って、話し声が向こうへ届かないようにもしていたんだけどね。
空気や衝撃も遮断する結界なら、気配すら悟られないんじゃないかと思ってやってみたんだけど……ヴェンツェルさん達の評判も良さそうだし、探知魔法を使って調べた限りでは相手に悟られた雰囲気もないから、結果は上々のようだ。
まぁ、透明な壁を作るだけだから、目で見られたら簡単に発見されるんだけど――。
発見した家から歩いて大体一時間程度、街道を横断してさらに離れた場所を野営地にしている場所に戻り、作戦会議。
あまり近いと向こうに発見される可能性があるし、オーガが街道にまで出て来ていた事から、新しく放たれたオーガが襲って来ないようにだ……街道の方を見張っていれば、こちらが見つけられるだろう事も重要だね。
会議には俺とエルサとモニカさん、ヴェンツェルさんとマルクスさんが参加、ソフィーは新兵達が始めた剣の素振りを見て指導をしている。
以前王城で俺達がエアラハールさんから訓練を受けていた事や、合同訓練の事があってなぜか新兵からソフィーが人気なのが理由。
こんなところで訓練をしなくても……と思うけど、ヴェンツェルさん曰く、いついかなる時も欠かさないのが重要だとの事だ、中々厳しい。
ソフィーが指導を担当しているのは、俺だと畏れ多いからという理由で、モニカさんだと槍を使うから……なんて言われてしまった。
うぅむ、俺相手に畏れ多いっていう事はないんだけどなぁ……新兵さんと言っても、ほとんど俺より年上だし……。
ちなみにヴェンツェルさんとマルクスさんは、作戦会議をするため不参加だから最初から指導員からは除外されていたようだ、俺もそっちの理由が良かったし、そちらを優先する必要があるから、求められても指導できなかったんだけど。
「連れてきた新兵は、周囲を囲ませるようにしよう。内部に突入しても、役に立つかわからん」
「言い方が悪いですよ、ヴェンツェル様。まぁ確かにその通りなのですが……新兵を連れて行って、何かの拍子に混乱されても手間ですからね。それでいいでしょう」
「屋内では、何があるかわからんからな。オーガが爆発する事が前提になるが、それで怪我をしてもかなわん。ある程度自身で状況判断ができる者がいいだろう」
「そうですね……俺何度も見ているので大丈夫ですけど、初めて見ると恐怖を感じるかもしれませんから」
真剣に訓練をしている新兵さん達には申し訳ないけど、さすがに突入時に一緒にというのは難しいのはわかる。
屋内なので入れる人数も限りがあるし、確実に制圧する事を考えるなら、何があっても冷静に状況を判断してくれる人がいいだろう。
「周囲を取り囲んで、もし中から逃げ出す者がいた場合に対処させよう。それと同時に、周辺の魔物が襲って来ないかの監視もな。まぁ、元々新兵は場の空気を経験させるために連れてきたのだからな」
「戦場とまでは言いませんが、戦いの雰囲気を肌で感じるだけでも十分な訓練になるかと。もしもの際には、実際に戦う事もあるでしょう。……私が、指揮をしますか?」
「そうだな……突入するのは私とリク殿達、それと数人は連れて行くが……マルクスは外で指揮をしている方がいいだろう。新兵ばかりを残してもな」
「了解しました。何かあれば、新兵を連れて対処致します」
「うむ。さてリク殿、中に入った後なのだが……」
「はい。まずは地下に続く階段ですね。家の出入り口は他の家と変わりないため、慎重に入って行きましょう。さっき調べた限りでは、地上部分にいた人間は二人です」
「速やかに対処するのがいいか」
「リク様、以前のあれは使えませんか?」
「以前の……あぁ、眠らせた魔法ですね。使えるには使えるんですけど……エルサが寝てしまうので……」
「私は何度も同じ事を繰り返したりしないのだわ! 失礼なのだわ!」
いやエルサ、初めて使った時はともかく、エフライム達を助ける時に寝てしまってたじゃないか……。
「うーん、前にも同じような事を言いながら、寝ちゃったからなぁ……」
「それなら、私がエルサちゃんを預かるわ。少し離れておいて、あの魔法の霧のようなものを吸い込まなければいいのよね?」
「……そうだね、お願いするよ」
モニカさんがエルサを預かってくれているなら、心配はないか。
モフモフが感じられなくなるから、少しだけ躊躇したけど……仕方ない。
「眠らせると言うのがどういう魔法なのか、私は見ていないのでわからないが……それは地下にいる者達にも使えないのか?」
「んー、どうでしょう? 地下なので空気を循環させるためだったり、階段が繋がっているので、できなくはないでしょうけど……多分効果が薄いと思います。魔法で眠りを誘う霧を作るんですけど……これ、上に浮かぶんですよね……」
「そうか。それが可能であれば簡単に事が済みそうだったのだが、仕方ないな」
魔法の霧は、ある程度指向性を持たせて目標へ向かわせる事はできるんだけど、魔法で無理矢理作った霧なせいなのか、霧散するまでが早い。
そのうえ、自然と高い場所にいどうする性質があるために、地下へ送り込むのは効率が悪そうだ。
地上部を制圧してから、ゆっくり地下へ流し込むというのも一瞬考えたけど、そんな悠長な事をしていたら、向こうに悟られてしまうだろうからね。
モリーツさんの研究場でもそうだったように、隠し通路なんかを作って、家の出入り口を使わなくても脱出できる方法がありそうだし……逃げられないように、こちらが先制しないといけないから――。
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