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埋まっていたクォンツァイタ

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「クォンツァイタ……?」
「はい、そのようです。私も鉱山を持つブハギムノングを領地としているので知っていますが、クズ鉱石と呼ばれ、見向きもされない物なのです。……リク様は、ご存じでしたか」
「いえ、俺もつい数日前に知ったばかりで……えっと……」

 フランクさん達に、クォンツァイタの事を簡単に説明する。
 詳しく説明してもいいんだけど、時間がかかるし結界を維持するための魔力蓄積と言っても、まだ確実な話じゃないからね。

「ほぉ、我が領内に新しく売れる鉱石ができたと。それは朗報ですな」

 クォンツァイタにどれ程の値が付き、これからも継続的に必要になるかはこれから次第だけど、クズ鉱石と呼ばれていた物が売れるとあって、フランクさんは嬉しそうだ。
 まぁ、鉱夫さん達や街が潤えば、そこを収めている貴族にも利益があるからかもしれない。

「しかし、鉱石なのはまぁ、見ればわかるが……これがそんなに有用なのか?」
「まだ試していないのでわかりませんが、多くの魔力を蓄積できるようなので。これは、白いので魔力がない状態らしいんですけど、魔力を蓄積すると紫に近いピンクに。そして最大まで蓄積したら、黄色くなるんです」
「紫に近いピンク……」
「という事は、あの時の?」
「何か思い当たる事でもあったんですか?」

 魔力の蓄積状態によって色が変わる事を伝えると、俺以外の皆が顔を見合わせた、その様子に首を傾げる。
 机に置かれているのがクォンツァイタで間違いないなら、もしかして魔力を誰かが使って見た……とか? でも、これは白だから魔力を蓄積していないはずなんだけど。

「リク様、実はここに持ってくるまでの間に、このクォンツァイタに対して試した事があるんです」
「試した事ですか?」
「はい。以前、魔力反応がわかる魔法具があると伝えましたね?」
「そうですね。それがあったおかげで、不審な魔力の跡を見つけたとか……」
「えぇ。その繋がりで、このクォンツァイタを見つけたのです。魔力が繋がっていたわけですな。これは、魔物が集結していた場所の付近……森の入り口辺りで、土に埋まっていたのです」
「土に……」

 クォンツァイタはクズ鉱石と呼ばれて、今まで価値のなかった物だ。
 今回アルネが調べてくれたおかげで、利用価値が出て来た訳だけど……それまでに誰かが使用をしていた、という事になるのか。
 鉱石が産出される鉱山でもなく、森の入り口に埋まっているなんて、自然にあるわけがないからね。

「そして、掘り出したこのクォンツァイタを、魔法具を使って調べてみると……微かに魔力反応があたようなのです。――そうですな、モニカ殿?」
「はい。リクさん、調査をしていた私達が魔法具を使って、その球……クォンツァイタを掘り出したんだけど、その時はまだかすかに色付いていたの。ほんの端の方だけだったのだけどね。リクさんの説明にあったように、色は確かにピンクにも見えたわ。土から出してすぐに、色が今の白になったけど」
「少しだけピンクで、すぐに白……という事は、すぐに魔力が放出された、偶然魔力がなくなる場面だったか、だね」

 フランクさんに問いかけられたモニカさんが、説明を継いでくれる。
 実際に調査をしていたのはモニカさんやノイッシュさんだから、発見して色が変わる瞬間を見た二人の方が説明に適しているか。
 ともかく、掘り出したクォンツァイタはすぐに蓄積していた魔力がなくなり、白くなったという事なんだろうけど……。

「今の状態、白くなってからは魔法具による反応はなくなったの。だから、これは魔力を蓄える物じゃないかって考えたのよ。魔法具で何かの役割があったんじゃないかってね?」
「まぁ、少しくらいなら魔力を蓄える物もあるし、それが魔法具に使われる事もあるからね」

 都度、魔力を与えるのではなく、元々魔力を蓄積させておくような魔法具があるのは聞いている。
 鉱山にあった照明とかがそうなんだけど、使い切りの物があったり、何度も魔力を補充して使える充電式のような物もあって、用途も様々だ。
 大抵は、モニカさん達が持っている武器とは違って、少量の魔力しか蓄積できないために攻撃するような魔法は使えず、生活を便利にするようになっているんだけどね。
 俺の魔力や、多くの魔力を消費する結界を維持するために、大量の魔力を蓄積するとして注目しているのがクォンツァイタになるんだけど……これを埋めた人はそれを知っていた?
 ……大量の魔力をとまで考えなくとも、他の魔法具とは違ってそれなりの量を蓄積できるから、どこかから持ち出して使ったのかもしれない。
 
「そう、魔法具かと思ったの。丁度魔力が切れたから効力がなくなったんじゃないかとね。それで、私が持って魔力を少しだけクォンツァイタに与えたら、ほんのりとピンク色になったのよ」
「それで、色の説明で何か気付いた風だったんだね?」
「えぇ。まぁ、問題はその後ね。魔力自体は少なかったから、すぐにまた今のように白くなったんだけど、魔物が寄って来たのよ」
「魔物? でも、森の入り口付近という事なら、魔物がいてもおかしくないんじゃないの?」
「そうなんだけどね、本来この地域にはいない魔物で、リクさんが散々戦ったマンティコラースだったのよ」
「マンティコラースは、今までこの地域では見なかった魔物だ。そもそもにBランクの魔物だからな、早々来てもらっちゃ困るが、そんな魔物が簡単い引き寄せられたという事だ」
「近くにまだ残っていた……とかではないんですよね?」

 モニカさんの言葉を継いで、マンティコラースの補足をするノイッシュさん。
 とはいえ、ルジナウムについ最近押し寄せてきた魔物でもあるし、俺やユノが打ち漏らしたのが付近に残っていたという可能性がないわけじゃないと考え、聞く。

「いや、あれから周辺の警戒や調査はしているからな。近くに残っているならわかるはずだ。そのマンティコラースは、この街に押し寄せていた魔物と同様なんじゃないかと考えている」
「マンティコラースそのものは、ユノちゃんがあっさり倒したのだけどね。移動してきたのが、森の奥からで調査範囲の外側だったようなの。だから、他の魔物と同じように、集結しようとしていたんじゃないかって。途中でリクさんや色んな関係で、集結を止めて魔物達はルジナウムへ向かったけど、そのマンティコラースはまだ到着していなかったから、中途半端になっていたんじゃないかしら?」
「成る程ね。だとしたらつまり……このクォンツァイタが魔物をおびき寄せて集結させた……と考えるべきかな?」
「私達も、そのように考えております。魔力がなくなり、今は効力を失っておりますが、魔法具に詳しい者に調べてもらったところ、魔法具としての処理が施されているようです。見ただけではわかりませんし、その者にもどういう仕組みで、どういう効果が発揮されているのかわからないようでしたが……今までの事を考えると……」
「元凶というか、原因と考えられますね……」

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