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光の走った線を追って

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「この辺りは確か……モリーツのいた場所からは離れているな。あいつとの関係があるとは思えんが……」
「とにかく、調べてみましょう。一応、念のために結界を張っておきます」

 触った瞬間爆発……なんて罠じゃないと思うけど、調べる時に何かの仕掛けがあったらいけないので、俺とその壁を覆うようにして結界を発動しておく。
 俺は多少の事なら大丈夫だろうけど、フォルガットさんに危険が及んだらいけないからね。
 突起は岩にくっ付いているので、壁に衝撃が伝わらないようにすることはできないけど……爆発さえしなければ、なんとかなる……と思う。

「では、触ります」
「……」

 結界で覆っているため、お互いの声は聞こえなくなったが、手を振ったりで合図を送り、フォルガットさんからも頷きが返って来る。
 少し緊張をしながら、突起に対して手を伸ばして触れる。
 ……触った感触は……木材じゃないね……金属が近いかな? 壁の色に塗って保護色になっているけど、岩肌のようにゴツゴツしておらず、表面はツルツルとしているからこれが人工的な物なのだとわかる。

「触っただけじゃ何も起こらないか……ん? 押せる?」

 指先、手のひらで触っても、何かが起こる事はなく、ツルツルした感触がわかるだけだったけど、少し押してみると突起の後ろに空間があるようで、スイッチみたいになっている事がわかった。
 何かの発動スイッチかな?
 どういう物かわからないから少しだけ迷ったけど、何もしないでおくとわからないだけなので、思い切って突起を押してみる。

「うん? これは……」
「……」

 突起から数センチ上に、小さな隙間が現れた。
 スイッチを押す事で、隙間を塞いでいた壁が少しずれて腕を入れられるくらいの隙間を空ける、という仕組みらしい。
 結界の外で、フォルガットさんが何やら身振り手振りで驚いた事を伝えようとしているみたいだけど、生憎声が届かないので、何を言っているのかわからない。
 んー、結界を解除して話すのも、時間がかかるから……とりあえず調べてみよう。

「……お? 何か手に当たって……うん?」

 腕をゆっくりと隙間に差し込んで、中を調べてみると、奥に先程押し込んだ突起と同じくらいの大きさの物に触れた。
 見えないので、大きさは触った感触でしかわからないけど、突起と同じくツルツルとしていて、こちらは金属っぽい感触ではなく、ガラスとかに近い感触だった。
 それに触れて首を傾げていると、少しだけ手の平に違和感を感じた瞬間、細い糸のような光が隙間を伝って出てくる。
 その光の糸はそのまま壁を伝って結界の隙間を通って天井まで伸び、さらにそこから天井を伝ったまま坑道内を突き進んでいった……。
 光の糸が過ぎ去った後、顔を近付けてよーく見てみると、壁に線のようなものがあってそのせいで結界に隙間ができていたんだろう。

「これ以上は、何も起こらないか。危ない事はなさそうだから、結界を解除するかな」
「……リク、今何か光のようなものが見えたんだが?」
「奥に、何かがあってそれに触ったら出てきました。うーん、こちらの光はもうなくなっていますね……あの光、何処へ向かったかわかりますか?」

 結界を解除してすぐ、フォルガットさんに声をかけられる。
 俺にも何が起きたのかはわからないけど、傍て見ていたフォルガットさんはもっとわからないから当然か。
 ともかく、光の線が向かった先に何かあるかもしれないと思って、坑道の先に何があるのかを聞く。

「あっちは……特に何もないはずだな。見えなくなった先から、光がどう動いているかはわからんが、方向としては出口に向かっている」
「出口……鉱山の外に向かった? うーん……とりあえず、この線を追って行けば光の動きがわかるかもしれません。ちょっと、調べてみてもいいですか?」
「構わんが……こんな所に線ができているとはな……突起以上に、よく見ないとわからん」

 俺がフォルガットさんに示した線は、腕を入れた隙間から天井へ……そこから坑道内の天井を伝っているようだから、よく見ても見つける事は中々できないだろう。
 まずそんなものがあると知らないし、照明が下向きなせいで天井付近はさらにくらいうえ、糸くらいの細さだから岩肌がゴツゴツしているのもあって、何も知らずに見つけるのは不可能とさえ思えるからね。

「あー……ここは天井が高いんですね……」
「まぁ、横に掘るだけで、全ての鉱石が採掘できるわけじゃないからな。上に向けてはあまりやらないが、下を掘る事だってある」

 線を辿って歩く事しばらく、ちょっとした広場になっている場所では、天井が高くなっていて距離が離れるため、線がどこへ向かっているのかわからなくなってしまった。
 フォルガットさんに聞くと、下にも掘る事があるために、結果的に場所を整備すると天井が高くなっている場所も多々あるとの事だ。
 まぁ、山の中だし、坑道が坂道になっていて上下する場合もあるから、平坦でないのは仕方ないか。
 広場からは、道が数本伸びているので、このどれかだと思うんだけど……全部確かめてたら時間がかかるだろうしなぁ……かと言って、悩んだままでも同じく時間だけが過ぎてしまう。

「あ、そうだ。フォルガットさん、ちょっとしゃがんでもらえますか? あと、俺を持ち上げるのはできます?」
「俺だって、鉱夫の一人だからな。リクは軽そうだから大丈夫だろう。……こうか? しかし、どうするんだ?」

 二メートル近くの身長がある、フォルガットさんに肩車をしてもらえれば天井が近くなるし、もしかしたら線が見えるかもしれないと思って、しゃがんでもらう。
 不思議そうにしながらも、お願いした通りにしゃがんでくれるフォルガットさんの背中に手を付きながら、説明しつつ首を跨いで立ち上がってもらう。
 できる事なら、肩に俺が立つ形が一番高い位置に行けるんだろうけど、肩車でわからなかった場合の最終手段だね……バランスがとりづらそうだし。

「よっ……と。どうだ、見えるか?」
「うーん……もう少し、なんとなく見えそうではあるんですけど……」

 さすがに天井近くは照明が届きづらく、見えにくい。
 そのため、視点を高くしても線をはっきり見る事はできそうにない。
 目をこらして、なんとかどの道に繋がっているかを確かめようとするけど、わからないな……もう少し線が太ければ良かったんだけど……。
 仕方ない、ここはフォルガットさんにお願いして、肩に足を乗せて立ち上がるしかないか……靴はちゃんと脱がないとな。

「ん、リクか? どうしたんだそんなところで?」
「こっちは真面目に見回りをしているのにだわ、そっちは遊んでいるのだわ? ふわぁ~だわぁ……」
「あれ、ソフィーとエルサ?」
「親方、何をしているのですか?」
「お? あぁ、これは……」

 肩車から形を変えて靴を脱ごうとした辺りで、俺達が来た道とは別の方向から、ソフィーと頭にくっ付いたエルサ、それに案内をしている女性が現れた。
 エルサは真面目にって言っているけど、案内の女性が手を伸ばして撫でているし、あくびをしているから、エクスブロジオンオーガが見つからなくて、暇で寝ていたんだろうな――。


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