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これまでの報告と説明
しおりを挟む「しかしリク殿、アメリを助けて下さった事は感謝しますが、どうしてこちらに?」
「そうよね、リクは優しいんだけど……結構ドライなところがあるから……」
「ドライって……まぁ、偶然行き先が一緒だったからなんだけどね。オーガに怯えて馬が逃げちゃったのもあるし、ついでだから一緒にエルサに乗って来ただけだよ。エルサだと、王都の外で降りるよりも直接王城へ来た方が早いでしょ?」
「まぁ、そろそろ城下町を歩いても、大丈夫になっている頃合いだと思うけど……時間の短縮と言えばその通りね」
「あとは、アメリさんから聞いた話で、陛下や皆にも報告して話しておかなきゃいけない事があったから」
「話しておかないといけない事?」
「陛下が入って来る前に、エフライム達にも話そうとしていたところだったんだけど、えっと……」
改めて、姉さんが来て中断していた話に戻る。
ルジナウムの事や、ブハギムノングでの事を説明し、何があってどうなったのかを伝えた。
姉さんは、エフライムと同様にルジナウムからの伝令から伝えられた事を知っていて、俺とエルサが協力して魔物の集団を殲滅した事を話したら、心配よりも呆れている様子だった。
……アメリさんだけは、魔物に関する事がよくわからなくて頭にハテナマークを浮かべている様子だったけど、それでも俺が英雄の勲章を授与されたリクだというのを、この時初めて知って、驚いていた。
同時に、オーガを簡単に倒したりドラゴンといるのも納得されたけど……オーガはともかく、英雄のと言われているからって、絶対ドラゴンといるわけじゃないと思うんだけどなぁ。
まぁそれは余談だけど……ともあれ、ルジナウムで魔物達と戦った後に俺が意識を失って丸二日間寝込んだというのを話したら、さすがに姉さんには心配されてしまった、そりゃそうか。
無茶をしてとか、もう少し周りと協力して無理をしないように気を付けろとか言われたけど、さらに魔力量が増えたみたいだから大丈夫と伝えたら、溜め息を吐かれた……どうしてだろう?
「ブハギムノングで鉱夫に紛れ込み、密かに行われていた研究……ねぇ」
「兵長さんとか、フランクさんと話したけど、組織だっての行動だろうって結論だったよ」
「そうでしょうな。ほそぼそとした研究ならともかく、リク殿に聞く限りでは規模が大きすぎます。ガラスの用意も含めて、数人程度ではできる事ではないでしょう」
「ルジナウムを襲った魔物とも繋がっているのなら、当然目的があるはずだな。だが、そんな大それた事を少人数では考えられないだろう。いや、考えたとしても、やはり実行に移すには大規模な何かが必要だろう。人数にしろ、金にしろ、な……」
「バルテルの事もあるし、獅子身中の虫っていうんだっけ? 組織がいると仮定して、何処に紛れ込んでいるかわからないから、注意しようってフランクさんとは話したね」
「結構、難しい言葉を知っているのねリク」
「これくらいは、俺でもわかるよ……」
「小さい頃はあんなに勉強嫌いだったのに、偉くなってっ……!」
「いや、今はそういう話はいいから……」
「そうね。確かにリクの言う通り、何かを狙い、無辜の民の命をどうとも思わない組織がいるのだとしたら、危険ね。ハーロルト?」
「はっ、ただちに部下の者達に探らせます。また、軍だけでなく国に所属する機関の者達の身辺の調査も、実施いたします」
「大変だろうけど、よろしくね」
情報部隊だからか、こういった事はハーロルトさんの領分なのだろう。
姉さんが端的に命じ、ハーロルトさんが受けて……という部分を、アメリさんは嬉しそうに見ていた。
……邪推する姉さんじゃないけど、ハーロルトさんの方もオーガに襲われたと聞いた時の反応といい、これはお互い脈ありっぽいね。
ハーロルトさんは俺より年上なのは間違いないけど、まだ若くて実直な性格で、アメリさんの方は姉さんと同じくらいかな? 長く伸ばした髪が似合っていて、助けに入った時に感じたけど、いい人なのは間違いないから、お似合いだろうなぁ。
はぁ……俺も、そういった浮ついた話が欲しい……いや、現状に不満があるわけじゃないし、エルサのモフモフで満たされているから、焦っているわけじゃないんだけどね。
「それで、ルジナウムの街とブハギムノングの街を行き来して、調べているうちに一度、陛下達にも報告をしておこうと思って、こちらに向かってたんだ」
「その時に、アメリさんを助けたのね。……良かったわ、リクに忘れられてなくて。全然頼ってくれないから……」
「陛下に頼ると、国を動かしてしまうので……それに、英雄と知られていても、冒険者がそれはまずいのではないでしょうか? ――あ、リク、我が子爵家は何か困った事があれば、全力で協力するからな?」
「お兄様の言う通りです! お爺様に頼んで、全てを投げ打ってでもリク様に協力します!」
「卑怯よエフライム! それなら私もりっく……いえ、リクに助けられているし、国を挙げて協力しても……」
「いえ陛下、貴族方が協力するのとは違い、陛下が身を乗り出す程の協力をしてしまうと、特別扱いとなって不公平に感じる者も出るでしょう。立場が違うのですから、せめて検討するくらいに留めておかなければ、宰相様あたりから怒られますよ?」
「うぐぐ……」
「あははは……まぁ、気持ちだけ頂いておくよ……」
なぜか急に俺への協力合戦になってしまったが、とりあえず姉さんはヒルダさんに注意されて押し留まったようだ……悔しそうにして入るけど。
とにかく、今はそういう話じゃなくて、アメリさんが見たものの事が重要だ。
「えっと、とにかくアメリさんがオーガに追いかけられていて、それを助けたんだけど……アメリさん、オーガに追いかけられていた時の事を話せますか?」
「え、えぇ。何かしら……リク君、いえリク様と話すのはここに来るまでと一緒だから平気だけど、他の方と話すとなると、緊張するわ……」
「気にするな……というのは無理だろうが、この場にいる方達は皆、温厚な方達だし、身分を気にしてその声を聞かないという方達ではない。大丈夫だ、落ち着いて話せばいい」
「……わかったわ」
「あと、アメリさん……俺の事は今まで通りで、様を付けなくてもいいので……」
「りっく……リクは、リク君と呼ばれるのが好みなの? 私の影響かしら……年上好きなのかもねぇ」
とりあえず、姉さんがからかって来るのは無視する事にして、アメリさんの話に集中する事にした。
ハーロルトさんが声をかけてくれたおかげで、アメリさんは貴族のエフライムや、女王様の姉さんに話すのも、落ち着いて話ができていた。
「オーガが出て来た家……ねぇ?」
「そのオーガは、リクが言っていたエクスブロジオンオーガとは、違うのだろう?」
「エクスブロジオンオーガは、力はそれなりに強いけど、小さいんだ。けど、アメリさんを追いかけていたオーガは、通常のオーガと一緒で人間よりも大きいくらいだったね。そして、エクスブロジオンオーガと同じく爆発する。大きさの違いがあるからなのか、ブハギムノングでの研究を参考にしたのかはわからないけど、そのオーガの爆発も威力は高そうだったよ」
「その爆発とは、どれくらいの規模なのですか? エクスブロジオンオーガは、小規模で爆発しても怪我をするのは稀だと聞きましたが……?」
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