643 / 1,903
鉱夫組合に勢揃い
しおりを挟む「リク様、街を管理する者の一人として、感謝を。そして、よろしくお願いします」
「はい、任せて下さい」
ルジナウムでの事と、ブハギムノングでの事を話し終え、詰所を出る。
まだ鉱山内には、モリーツさんが復元させて改良した赤いエクスブロジオンオーガがいるだろうし、通常の緑の肌をしたエクスブロジオンオーガだっているかもしれない。
冒険者ギルドに改めて依頼をするという事で、ガッケルさんから討伐を頼まれて、話は終わった。
緑の方なら、なんとか鉱夫さん達で対処できるだろうけど、赤い方は結界か全身を完全に凍らせないといけないため、対処は難しい。
だから、残ったエクスブロジオンオーガは鉱山内を探索して、俺とソフィーが討伐するとなった。
復元して改良していたモリーツさんがいなくなって、もう増えないだろうからなんとかなるだろう。
ちなみに、なぜ通常の緑肌のエクスブロジオンオーガもいるかという部分には、実験する中で何もせずに復元をする必要があったからだと思っている。
単純に復元させる事ができるのかどうか、とかを試していたんだと思う。
ともあれ今日のところは宿に戻って、明日また冒険者ギルドで新しく討伐依頼を受ける事にする。
ベルンタさんへの挨拶やお礼も、その時だね。
鉱夫組合にも行って、話もしておかないとなぁ……。
「やっぱり、リクに洗ってもらうのは気持ちいいのだわ~」
「そりゃ良かった」
ソフィーと夕食を食べ、宿へと戻った後はエルサをお風呂で洗う。
ルジナウムで寝ている間に、返り血なんかは綺麗にしてもらっていたようだけど、毛が絡まったりしていたから、ゆっくり解すようにして洗ってあげた。
満足そうなエルサにドライヤーもどきの魔法を使い、こてんと横に倒れて寝るのを見て、なんとなく日常が戻ってきたような感覚。
これも、お風呂に入れる時はいつもやっているから、すっかり習慣になったなぁ。
「しかし、あれだけ寝てたのに、よくすぐ寝られるなぁ……と言っている俺も、眠くなって来たんだけど。ふわぁ~……」
エルサをベッドに運んで、あくびをしながら俺も隣へ潜り込んで、目と閉じる。
二日間丸々寝ていたとしても、いつもの習慣で夜は眠くなるんだろうね。
変に目がさえて寝られなくなるよりはいいだろうと、そのまま眠気に身を任せた――。
―――――――――――――――
翌日、支度を整えて朝食を頂いた後は、説明のためにソフィーと鉱夫組合を目指す。
冒険者ギルドにも行かなきゃいけないけど、宿からは組合の方が近いから、順番にね。
「はっ、リク様! お待ちしておりました!」
「え、えぇ……どうも……」
鉱夫組合の中に入ると、何度か会った女性がいて、すぐに奥へと通された。
前に、フォルガットさん達と地図を見て、空白地帯の話をした部屋だね。
「あれ、ガッケルさん。ベルンタさんも? ――あ、フォルガットさん」
「リク様、お待ちしておりました。昨日、鉱夫組合へ話にと言われていたので、簡単に説明をさせて頂いておりました。冒険者ギルドマスターも、お呼びしておきました」
「待っておったぞ。まったく、いくら急いでいるからと言っても、まともに話もせずに行って数日音沙汰なしとは……まぁ、おおよその事情は聞いたから、仕方ないとわかっておるがの?」
「おぉ、リク。待っていたぞ。二つの街を一度に救うたぁ、さすが俺に勝っただけはあるな!」
「組合長、英雄様ですよー! 組合長に勝つとか関係なく、凄い人なんですよー!」
部屋に入ると、フォルガットさんだけでなくガッケルさんやベルンタさんが、一つのテーブルを囲んで座っていた。
昨日、詰所で話した時に俺がフォルガットさん達とも話さないと……と言ったために、気を聞かせて集めてくれたみたいだね。
ルジナウムでの事も説明してくれたみたいで、ありがたい。
案内してくれた女性が、以前と変わらず興奮している様子に苦笑しながら、俺やソフィーもフォルガットさん達と同じテーブルにつき、説明と話し合いが始まる。
「ふむ……ルジナウムの方でそんな事がなぁ。何かがあって、住民がこちらに来るとは聞いたが、すぐに撤回されたしな。大した事ないのかと思っていた」
「そんなわけないじゃろ……領主自らの住民避難と、受け入れのための指示じゃぞ? 大きな問題が起こらないとそんな事はあり得んからの。リクが急いでいた事や、ソフィーから聞いた話。さらにすぐに次の伝令が来て撤回されたのじゃから、リクが何かしたのだとわかっておったがの」
「お二人には、住民の受け入れをするため、手伝ってもらっていましたから。……さすがに、避難して来る者達全てを宿に入れられるわけではありません。場合によっては、鉱夫や私の部下を付けて、鉱山内にいてもらう事も考えていました。外で寝泊まりするよりかはマシでしょうし、エクスブロジオンオーガの脅威は、かなり低くなったとソフィー殿から聞いていましたからな」
ルジナウムに魔物が押し要せようとしていて、それと戦っていたために戻るのが遅くなった事を、改めて説明。
その時、ガッケルさんが説明していなかった魔物の種類とかも話したら、フォルガットさんやベルンタさんは驚いていた。
ベルンタさんは冒険者ギルドのマスターだから、当然キュクロップスやキマイラを知っていたけど、フォルガットさんも知っているとは……有名な魔物なのかとも思ったけど、組合長にまでなるとそれくらいの知識がないといけないらしい。
多分、ベルンタさんが教えていたんだろうけどね。
避難民の受け入れに関しては、鉱山を使うのも考えられていたようだ。
確かに、モリーツさんがいなくなったから、新しいエクスブロジオンオーガが作られる事はないし、数も減っている。
元々入り口付近にはほとんどいなかったから、あまり奥まで行かなければ雨露も防げるから外よりマシなんだろう。
……ちょっと埃っぽくて湿っぽいけどね。
住んでいた街を追われて来た人達を、外で寝させるわけにもいかないからね。
エクスブロジオンオーガと絶対遭遇しないとは言い切れないから、ブハギムノング側としても、苦渋の選択だったんだろうけど。
鉱夫さんや兵士さん達がいれば、もしエクスブロジオンオーガが来ても、追い払う……は難しくとも避難民に被害が及ぶような事は避けられるだろうし。
なんにしても、この街の人達や避難してきた人達が困る事がなかったようで、何よりだ。
頑張った甲斐があったなぁ。
「それにしてもだ……ベルンタ爺さん、モリーツの事だけじゃなく、イオスもだという事は……?」
「そうじゃの。冒険者には当然紛れ込んでおるじゃろう。幸い、この街にはほぼいない状態じゃが、他の街にはいるじゃろうの。そして、場合によったら兵士にも……」
「そうですね……自分の部下を疑う事はしたくはありませんが、可能性はあるでしょう。まぁ、リク様やソフィー殿が聞いた話では、この街にはもうリク様達があった者達しか、いなかったようですが……」
0
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
目覚めれば異世界!ところ変われば!
秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。
ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま!
目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。
公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。
命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。
身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる