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モニカさん達と合流
しおりを挟む「というか、いきなり十翼?」
「急ぐのだから、それくらいは出しておくのだわ」
「まぁ、仕方ないか。それじゃ……結界! よし、エルサいいぞ!」
「飛ばすのだわー!」
前回全力で飛んだ時のように、最初から十翼を出しているエルサ。
俺が焦っている気持ちが流れ込んでいるため、エルサの方も多少は焦る気持ちが表れているのかもしれない。
いつもなら、もう少し暢気にゆっくりしているだろうし、そういう性格だしね。
ともあれ、十分に浮上した事を確認し、結界を発動させて全力の速度に耐えられるようにする。
それを確認した後、エルサが全力でルジナウムへ向かって移動を開始した。
「着いたのだわ!」
「はやっ! えっと……はやっ!」
一瞬……とまでは言わないけど、数分も経ったかどうかくらいだったので、思わず驚いて二回同じ事を繰り返してしまった。
「えーと……まだ街は大丈夫そうだね。うん? なにか、門の方に人が集まっているように見えるけど……」
「そこに行くのだわ?」
「そうだね。でも、いきなり降り立つと驚かれるから、少し離れた所に行こうか」
「リクは気遣いさんなのだわー、わかったのだわー」
上空から街を見下ろせる位置で確認。
ルジナウムの街は以前見た時と変わった様子はなく、魔物達が襲撃した形跡も一切ないので、まだ無事な事がわかる。
いっそ、黒装束の男の言っていた事が、嘘なんじゃないかと思うくらいだ。
そんな中、俺達が初めてルジナウムに入る時に使った、西門付近で人が集まっているのが見えた。
なんであんな所に集まっているんだろう……?
理由はわからないけど、とにかくそこの様子を見に行くため、付近に降りるようエルサにお願いする。
上空から、急にエルサのような巨大な生物が降りて来たら、集まっている人達も驚いてしまうだろうと、離れた場所って言ったんだけど……気遣いさんって……。
「リクさん!!」
「あれ、モニカさん?」
「リクなのー!」
「ユノもいるのだわ」
「そうみたいだね……どうしたんだろう? あ、エアラハールさんもいる」
西門から少し離れた場所で、大きな木の陰に隠れるように降り立つエルサ。
すぐに小さくなってもらっていると、モニカさんが俺を呼ぶ大きな声が聞こえた。
こちらに走って向かっているようだね。
それと一緒に、ユノの声も聞こえてさらに後ろにはエアラハールさんもいるようだ。
モニカさんとユノはともかく、エアラハールさんも全力疾走している様子で、離れて見ているとちょっと面白い。
って、今はそれどころじゃないか。
「はぁ……はぁ……リクさん、来てくれてのね!」
「モニカさん。えっと、どうしてここに? それに、西門に人が集まっていたけど……モニカさんが来たって事は、集まっている中にいたんだよね?」
「そうよ、あの中にいたわ。えっとねリクさん、話せば色々あるのだけど、簡単に言うと魔物が街を目指して動き始めたのよ!」
「……やっぱり、か」
「数はリクがこの街にいた時から増えてないの! でも、急に街を目指すように大移動を始めたの!」
「何があったかわからぬが、予想が外れたようじゃ。魔物達は一定以上の数にならずとも、街を目指し始めたんじゃよ。……しかしリク、驚いておらんの?」
「確かに驚いていないわね?」
「まぁ、ちょっとした事があってね。ルジナウムに向かって魔物が動き出すのがわかっていたというか……これも、話すと長くなるかな?」
走って俺の所まで来たモニカさん、息を整えながらも嬉しそうな声。
まだ魔物達が来ていないようで、無事なのと喜ばれているのがわかって、俺も嬉しいね。
まぁ、そんな事はともかく、西門に人が集まっていた事やモニカさんが来た事を質問。
空を飛んでいるエルサが見えたから、モニカさん達が来たんだと思うけど、駆け付ける時間で考えると、人が集まっている西門に一緒にいたんだと思う。
息を整え終えたモニカさんから、口早に魔物が街へ向かっている事を教えられる。
ユノやエアラハールさんも、同様の事を伝えてくれた。
やっぱり、あの男が言っていた事は本当だった……って事だね。
モニカさん達は、俺に魔物の事を伝えたら驚くと思っていたんだろう、俺がただ納得するだけに留めていると、首を傾げていた。
「リクさんの方も、何かあったようね? でも、今はゆっくり話している時間はないわ」
「魔物が来ているんだよね?」
「えぇ。リクさんと考えた通りに、調査をしながら集まろうとしている魔物を倒していたの。……ほとんどユノちゃんとエアラハールさんが、だけどね」
「頑張ったのー!」
「一応、危険が低そうな魔物は、モニカ嬢ちゃんにも相手をさせたがの。……まさかユノ嬢ちゃんが、キマイラを遊ぶように倒すとは思わなかったのう」
「あははは……まぁ、ユノは特別でしょうけどね」
一定以上の魔物が集結しなければ、付近の街へ襲い掛かる事はないだろうと予想していた。
実際、黒装束の男はその条件も言っていたし、間違ってはいなかった。
その予想をもとに、モニカさん達が調査をしながらも一定数へ達する事がないよう、魔物を倒していたんだろう。
まぁ、ユノが遊びの延長で魔物を倒すのはいつもの事だから、もう驚かないけど、大活躍だったようなので、頭を撫でたらすごく喜んでくれた。
「魔物を倒すだけなら何も問題はなかったんだけど……フランク子爵も協力してくれて、フィネさんを始めとした数人を魔物討伐に充ててくれていたから。でも、少し前に集まっていた魔物が急に動き出したのよ」
「異変はすぐにわかったのう。大きな魔物もいるせいじゃが、今まで森付近でおとなしくしていた魔物が、急にルジナウムの街に向かって移動を始めたのじゃよ。幸い、数種類の魔物がいるおかげで、集団行動が上手くいっていないから、移動自体は遅いがの?」
「少し前……そうなんだね。それでモニカさん達は西門に?」
もしかしなくても、俺が実験施設のような場所で、男を逃がさないように結界を張った時くらいからだろう。
あれで繋がっていた魔力の線が途切れ、魔物達が一斉に動き出したんだと思う。
どうやって集結させたのか、魔物同士が争わないのはなぜなのか、わからない事は多いけど……これが人為的に仕組まれた事だというのはわかる。
おそらく、モリーツさんのような研究者が、今回の事を実現させる方法を使ったんだろう。
開発したのか、発見したのかはわからないけど。
「えぇ、西門に駆け込んで、フランク子爵とギルドマスターを呼んでもらってね。幸い、リクさんの仲間と知られていたから、すぐに連絡が取れたわ。で、今は魔物を迎え撃つべく、西門に戦力を集中させているの。街にいる兵士だけでなく、冒険者や戦える人達は全員駆り出される事になっているわ。魔物が近付いているのは南からだけど、西門寄りだからね」
「ただのう……いささか心許ないのも正直なところじゃ」
「強力な魔物が、混じっているからですね?」
「そうじゃ。訓練された兵士や、それなりのランクになっている冒険者はともかく、低ランク冒険者や、ただ戦えるだけの者達は悪く言えば有象無象と言ったところじゃ。それで、どれだけ戦えるかじゃの。ゴブリン程度ならなんとかなるかもしれんが……」
「キマイラだけでなく、マンティコラースやキュクロップスもいたの!」
「マンティコラースにキュクロップス……」
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