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モニカさんと合流

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「私は、魔力がないわけではないが……多いわけではないからな……そもそも契約をしていないから、エルサに魔力をというのは無理そうだ」
「契約してないとねぇ。まぁ、魔力でなくとも、お風呂に入った時にしっかり洗ってやるだけでも、モフモフは保てるだろうから、大丈夫だよ」
「……そう思いたいな。それで、洗い方なのだが……」

 魔力に関しては、契約をしているという事もあるし、俺の魔力はどうやらかなりの量らしいので、ソフィーは諦めているようだ。
 とは言え、それでもお風呂での洗い方や風を送って乾かす事で、多少は違いが出るだろうと、ソフィーとエルサの洗い方談義で、ルジナウムへ向かう移動中の時間を使った。
 エアラハールさんは、毛のモフモフを保つ方法自体には興味がなさそうだったが、ソフィーがお風呂と言ってから、良からぬことを考えているのか、顎に手を当てて何やら思索にふけっている様子だった。
 多分、変な事を想像しているんだろうなぁ。

 ソフィーはあまり気にしていないけど、視線がソフィーの体へと向かっているし……。
 うーん……想像だけなら、注意する程でもない……かな?
 もし覗きとか、実際に何か不埒な事をしでかそうとしたら、実力行使をしてでも止めないといけないだろうけど。
 ……ルジナウムの街に行ったら、ユノに念を押してもらおう。

「到着なのだわー」
「あ、降りる時は……」
「わかっているのだわー。できるだけ遠くからも見られないようにするのだわー」

 ルジナウムの街が近くなったところで、エルサがゆっくりと地上へ降り始める。
 一応、誰かに見られたりしないよう、エルサに注意をと思ったが、心得ていたらしい。
 とは言え、人を三人乗せても余りある程大きな体を持つエルサだから、完全に身を隠しながら降りると言う事はできないだろうけど、念のため。
 空を飛ぶ大きな魔物……ワイバーンとかそれ以上の魔物まで、付近に集結し始めたなんて勘違いされたらいけないし、誤解を解くのも面倒そうだしね。

「さて、ここからは歩いて街へ向かうだけだね……おっと」
「はぁー、補給なのだわー」
「長時間飛んだわけでもないし、特に疲れていないだろ?」
「それでも補給なのだわー。リクの魔力に浸かる気分なのだわー」

 地上に降り立ったエルサの背中から降りる。
 早速歩き出そうとしたところで、後ろから小さくなったエルサが後頭部にドッキング。
 昨日はずっとソフィーにくっ付いていたから、ちょっと懐かしい……という程ではないかもしれないけど、いつものモフモフが感じられてちょっと嬉しい。
 補給と言っているエルサは、特に疲れた様子ではなかったけど。

 魔力に浸かるって、温泉にとかぬるま湯に浸かっているような感覚なのかな?
 エルサが俺の魔力をどう感じているのかはわからないが、遅くなってもいけないし、モニカさん達も待っているだろうから、疑問はそのままに街へと向かった。

「この年になると、歩くのも堪えるのう……」
「昨日は鉱山の中で存分に歩きましたが……」
「それはそれ、これはこれじゃ。魔物が出るとわかっておる場所じゃと、集中状態になって体が勝手に動くんじゃよ。これも、職業病と言えるのかのう?」

 ルジナウムの街へと歩いている途中、エアラハールさんが少し面倒そうに声を漏らした。
 鉱山の中では特に疲れた様子を見せなかったし、時折見せる鋭い動きからは年齢を感じさせないけど、今は年相応というか、街で見かけるお爺さんとあまり変わらないように見えた。
 というか、この世界にも職業病という言葉があるんだろうか?
 いや、エアラハールさんが言っているんだからあるんだろうし、別に日本独自の物というわけでもないから、あってもおかしくないんだけどね。

 元Aランクのエアラハールさんは、魔物が潜んでいる可能性がある場所では、無意識なのか体が勝手に動くと言う。
 それだけ、冒険者として色々な経験を積んできたという事でもあるんだろう……俺はまだ、その感覚がわからない。
 ソフィーも冒険者になってからそれなりに長いようだし、もしかしたらわかるのかも?

「その感覚は、確かにわかりますね。スイッチが入ると言った方がいいのでしょうか……魔物の気配を感じたり、警戒しなればいけない場所へと入ると、自然と体に力が入ります」
「入り過ぎても、後で疲れたり、長時間もたなかったりするからの。適度に力を抜く術を覚えなければならんがの。リクは常に力を入れておるように見えるから、まだまだじゃ」
「まぁ、今は剣を折らないようにするのでいっぱいいっぱいですからね……慣れればもう少し力の抜き方を覚えるんでしょうけど……」
「剣に気を使っている分、以前のように力任せという部分はなくなりつつあるがの。まぁ、何事も経験と反復じゃ。エクスブロジオンオーガと戦った時の感覚を体に染みつかせる事を考えるんじゃの」
「……はい」

 ソフィーならわかるかもと考えていたら、エアラハールさんに同意するように頷いて話し始めた。
 二人の話を聞いていると、自分にはまだ経験が不足してるんだなというのが、よくわかる。
 もっと、自然に動けるようにしないとなぁ。
 それにしても、剣を折らないように戦うというのは、力を入れ過ぎないようにという訓練の一環だったと思うけど、本当にそれで大丈夫なのか少し疑問が沸いて来る。

 確かに、エアラハールさんが言う通り、力任せに剣を振るという事より、刃筋を意識して必要以上に力を込めないようにしてはいるけど……。
 別の場所へ余計な力が入るようになっている気がする。
 とは言え、今はエアラハールさんの言う事を信じて、このままボロボロの剣を折らないようにして戦ってみよう。

「……剣を折らずに戦い続けていれば、いずれわかるようになるかもしれん。……そこはまぁ、素質にもよる所ではあるがの。じゃが、これができないと最善の一手を放てるようにはならんじゃろう」
「最善の一手……」

 エアラハールさんが、俺の持っていた木剣をボロボロの剣を使って斬った技だ。
 目にも止まらぬ速さではあったけど、力任せに斬ろうとしていたら木剣の丈夫さもあって、剣の方が折れていただろう。
 訓練に使う木剣なんだから、硬い木材だし、丈夫じゃないといけないからね。
 それはともかく、錆びついて刃こぼれまでしている部分があるような剣で、木剣を斬るなんて事を可能にするのは、並大抵のことじゃない。

 技への憧れとか、格好良さとかは抜きにしても、あれを使えるようになれれば技術という意味では申し分ないだろう。
 今は、エアラハールさんの言う通り、疑問には感じても言われたように訓練をしておこうと思う。
 大体、本当に効果あるのかわからない事が、実は後になって凄い技術に……! というのはよくある事だしね。
 まぁ、今やっている事は、力を入れ過ぎないように剣を扱うという、初歩のようなことかもしれないけども……。


「リクさん! ソフィーにエアラハールさんも!」
「リクなのー! 久しぶりなの! エルサも元気そうなの!」
「モニカさん。――ユノ、昨日一日会わなかっただけで久しぶりは大袈裟じゃないか?」

 ルジナウムの街へ北門から入ると、広場になっている場所で既に待っていたモニカさんユノが、俺達を見つけて駆け寄って来てくれた。
 特に怪我をした様子もないし、元気そうで良かったけどユノ、久しぶりというのは大袈裟過ぎるだろう……。


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