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魔法の維持

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「とりあえず、取り乱した事は謝るわ、ごめんなさい」
「私も、ごめんなさい」
「うん、それはいいんだけど……どうしてマギアプソプションは、ガラスの埋まってる地中を気にしてたんだろう? 魔力を蓄えてるって言っても、魔力溜まりでもないんだし……」

 冷静になって、興奮状態のまま俺に迫った事を謝るフィリーナとモニカさん。
 特にモニカさんは、俺に顔を寄せ過ぎた事を恥ずかしく思っているのか、顔が赤い。
 おっきなお胸様が、俺の体に当たってたような当たってなかったようなくらいだったから、それも関係してるのかもしれない。
 あ、フィリーナの方は特にそんな事は……止めておこう、考えるのも危険だ。

「何か、不愉快な事を考えてるような気がするけど……まぁいいわ」

 やはり、感づかれる寸前だったようだ。
 危ない危ない。
 デリケートな事は、あまり考えたり言ったりしない方がいいね。

「ともかく、マギアプソプションが気にしてたのは、このガラスで間違いないわね。というか、このガラスが魔力溜まりの発生源ね」
「え? ガラスが、なの?」
「これだけの量の魔力を蓄えたまま、放置されていたのよ? 魔力溜まりの一つも発生するわよ。それに、リクの魔法やゴブリンの魔力残滓も、合わさって、魔力溜まりが異常なまでの濃さになってるんでしょうね」
「という事は……?」
「魔力溜まりの発生は、リクがガラスを地中に埋めたから……という事も考えられるわ。それがなくても、発生した可能性も高いけどね。まぁ、悪い事ばかりじゃないし、農地として使うのなら、こうなって良かったとも言えるから、罪の意識は感じなくてもいいと思うわよ」
「そう言われてもね……」

 結局のところ、俺がガラスを埋めた事が原因の可能性もあるという事だ。
 フィリーナがフォローしてくるれてるし、魔法を使った事や、ゴブリン達も関係してる事は間違いないんだろうけど……さすがに後悔してしまう。
 確かに農地として、土の状態は魔力溜まりができた方が良い物になるんだろうけど……そうじゃなくても農地を作る事はできただろうし、マギアプソプションも呼び寄せちゃってるしなぁ……。

「ともかく、今はこのガラスをどうするかだね」

 頭を振って気持ちを切り替え、目の前に積まれているガラスを見る。
 自己嫌悪やら、自分を責めるのはいつでもできるんだから、まずはこれをどうにかしないといけない。
 今更後悔したって、目の前の事は変わらないんだしね。
 まぁ、さすがに反省はするけど……。

「そうねぇ……やっぱり埋め直すのが正解かしら? でも、そうすると魔力溜まりが解消される事はないでだろうし……」
「持って帰って、冒険者ギルドで管理してもらうのは? ヤンさん達なら、変な事に使わないと思うし……リクさんお頼みなら聞いてくれるでしょ?」
「ふむ……私は、魔力溜まりを囲むように埋めるのがいいと思うがな。そうしたら、魔力も分散されるし、ただまとめて埋めるよりも、解消されるのが早いだろう。それに、魔力溜まりがあれば農地としても良い状態を維持できる」
「んー……どうするのがいいんだろうか……?」

 フィリーナ、モニカさん、ソフィーがそれぞれ意見をしてるけど、皆の意見が別れてしまった。
 どうするのが一番いいのだろうか……?
 そう考えていたところで、ふとちょっとした事を思いついた。

「エルサ。結界があるだろ?」
「あるのだわ。どうしたのだわ?」
「あれって、外と中を完全に隔離するじゃないか。だとしたら、大きな結界で包めばガラスから魔力が漏れる事もないし、マギアプソプションが来る事もなくなったりは……しないか?」

 ちょっとした思い付きの一つだけど、実効性が高い事のように思えた。
 頭にくっ付いてるエルサに問いかけ、可能かどうかを聞く。
 こういう時は、長く生きてて知識が豊富……と思われるエルサに聞くのが一番かな。
 ユノに聞いても良さそうだけど……こういう事で助言をしようとは考えてないみたいだからね。

「可能か不可能かで言えば、可能なのだわ」
「だったら……」
「でも、結界を維持するのはどうするのだわ? あれは、発動している間中ずっと魔力を消費するのだわ。私やリクのように、魔力豊富で結界が使える存在がいなければ、小規模でも短時間。大規模なら一瞬でなくなるのだわ」
「むぅ……維持は確かに難しそうだ……」
「魔法の維持ねぇ……それって、他の人達じゃできないの? 例えば、魔法だけ発動してもらって、それに必要な魔力を、他から補うとか」

 結界は、包み込めば外と中を完全に遮断できる。
 だから、ガラスを包んでおけば、魔力が外に漏れる事もなく、魔力溜まりが維持される時間も減るだろうと考えたんだ。
 それに、魔力溜まりそのものを囲めば、魔力溜まりの気配が外に漏れたりする事もなくなって、マギアプソプションが集まって来ない……という考えだね。
 エルサに確認すると、それは可能らしい。

 けれど、魔法の維持が問題で、結界を維持できなければ結局はすぐに魔法が解けてしまうため、意味がないのだそうだ。
 結界が使えるのは、俺とエルサくらいだし……難しそうだ。
 眉間に皺を寄せ、どうしたらいいのか考えていると、他の案を考えていたはずのフィリーナが、俺やエルサに質問して来る。
 どうやら、考えながらも俺とエルサの話を聞いていたらしい。
 ふむ、他の人の魔力で代用……か。

「それも可能なのだわ。けど、人間やエルフじゃ、一人や二人ではとてもじゃないけど維持できないのだわ。私やリクからすれば、大した事のない魔力消費でも、他からすればとんでもないのだわ。それに、ガラスだけならまだしもだわ、畑全体を覆うとなったら、私でも無理なのだわ」
「エルサ様でも賄えない魔力量……あまり考えたくないわね」
「いい案だと思ったんだけどなぁ……」
「実行したとして、維持できるのがリクだけな時点で、無理な話ね」

 他の人だと、必要な魔力量が多過ぎて、不可能らしい。
 一人や二人でどうにかできない程の魔力量が必要なら、魔力溜まりを解消させるように、人を集めた方が現実的なのかもしれない。

「……ガラスに蓄えられてる魔力を、結界に使えるなら……しばらくは可能なのだわ」

 難しい顔をして考え込む俺やフィリーナを見かねたのか、エルサがボソっと呟く。
 ガラスの魔力……?

「それって、魔法具としてガラスを使うって事?」
「そうなのだわ。結界はリクが発動させる。ガラスの魔力はリクの魔力でできているし、親和性は高いのだら。それなら、しばらく維持する事は可能なのだわ」
「成る程……魔法具は、使用者の魔力を適正に関わらず、吸い取って魔法を発動させる。結界とガラスを繋げて、それ自体を一つの魔法具のように……という事かぁ」
「それって……できるの?」

 ガラスから魔力を供給する。
 フィリーナの言う通りなら、ガラスには相当な魔力があるため、結界を維持するために必要な魔力量も補えるのかもしれない。
 けど、それと結界を繋げるって……どうなんだろう?


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