409 / 1,903
クラウスさんの予定
しおりを挟む「決定するかどうかはわからないけど、ヘルサルでキューが作られるかどうかがわかると思う」
「そうなのだわ……いっぱい作ってくれるといいのだわぁ」
「そうだなぁ。皆が欲しがる物を作るんだから、街にとってもいい事だと思うし……多分大丈夫だと思う」
気になるのは、キューの需要が収まった時だけど、そのあたりはこれから考えればいい。
差し当たって、重要なのはキューが不足してしまうのを避けることで、エルサの食べる分を確保する事だし、皆が買うのを躊躇ったりしないようにする事だ。
高くなったり、数が少なくなったら、普通の人には買えなくなるかもしれないしね。
それに、もしキューの消費が減ってきても、獅子亭のようにキューを使った料理を広めれば、ある程度維持はできるだろうしね。
キューか……きゅうりとほぼ同じ物だし、色々と使い道はあると思う。
まぁ、そのあたりは姉さんや、国とか街の人が考えてくれるんじゃないかな。
もちろん、全て任せっきりというわけじゃなく、ここまで関わったんだから、有効な手立てを思いついたら、提案してみるようにしようと思ってるけどね。
「ともかく、今日はもうする事がないから、お風呂に入ってさっさと寝よう? 空を飛んで疲れてるだろ?」
「あれくらいなら、なんともないのだわ。けど、キューの事を考え過ぎて、疲れてるのは確かなのだわ」
「いきなり、キューがなくなるような事はないんだから、考え過ぎなんだよ。ほら、お風呂に入ってリラックスするぞー」
「わかったのだわ……」
キューの事を聞いた時から、ずっとその事ばかり考えてるんだろう。
自分じゃどうしようもない事をずっと考えるのは、それはそれで疲れるものだと思う。
体を動かしてるかどうかは関係なくね。
ひとまず、頭を空っぽにして休めるよう、お風呂にエルサを連れて行って、丹念に毛を洗ってやり、いつもより緩い温風で気持ち良さが長持ちするように、乾かしてやった。
これだけで、エルサが完全にリラックスできたとは思わないが、多少は楽になったと思いたい。
ドライヤーもどきの魔法で、温風を当ててやってる時、いつものようにコテンと横に転がって寝たから、大丈夫だろう。
寝顔も寝息も穏やかだしね……悪夢は見てないと思う。
「ただいまなのー」
「しー……」
「エルサ、寝てるの?」
「いつもと同じだよ。毛を乾かしてる時に寝たんだ。それに、キューの事ばかり考えて、頭が疲れてたみたいだしね」
「エルサは考え過ぎなの……」
「ははは、そうだね」
エルサをベッドに連れて行っていると、モニカさん達にお風呂に入れてもらっていたユノが、部屋に戻って来る。
エルサを起こしてしまわないよう、口に人差し指を当てて静かにするよう合図をする。
それと見て、小声になりながらユノが寝ているエルサを覗き込んだ。
小声で話しながら、やれやれといった様子のユノの髪を、ドライヤーもどきで乾かして、ベッドに入った。
いつものように、エルサを挟んで川の字だ。
ユノはエルサが気持ちよく寝れるように、仰向けのお腹をゆっくりと優しく撫でながら、一緒に寝た。
こうして見てると、ユノがエルサの保護者みたいだな……。
って、元々ユノがドラゴンを作ったんだったか……そう考えると、母親みたいなものなのかもな。
エルサのお腹に手を置いたまま、寝てしまったユノに毛布をかけ、俺も夢の中へ――。
――――――――――――――――――――
翌朝、朝食を頂いて、クラウスさんの所へ行こうか、まずは獅子亭の準備を手伝おうかと考えていた時、ハーロルトさんが訪ねて来た。
「リク様、クラウス殿は本日、仕事が立て込んでいるそうで……昼の休憩時になら、話をする事ができるそうです」
「昼ですか……クラウスさんの方は、それでも大丈夫なんですか?」
何やらクラウスさんは仕事で忙しいらしい。
昼の休憩の時になら……という事だけど、それはクラウスさんが休憩する時間で、昼食の時間でもある。
そんな時に俺達と話しをするのは、休憩にならないんじゃないかと、少し心配だ。
「大丈夫だそうです。むしろ、リク様と話をするのであれば、仕事を全て放り出してでも……と言っておりました」
「あははは、相変わらずなんですね」
「秘書のトニ殿が、クラウス殿を止めておりました。仕事に差し支えなく、リク様と話しをするならば昼の休憩時だろうと」
「あー、トニさんが見張ってるなら、抜け出せそうにありませんからね。わかりました、昼ですね」
俺のファンを公言して憚らないクラウスさんだから、仕事を放りだす事も厭わないんだろう。
そこは仕事をきちんとして欲しいと思うけど、トニさんが見張ってるなら安心だ。
クラウスさんが大丈夫であるなら、昼に会って話をする事にしよう。
「クラウス殿と話しをする場ですが……どこがよろしいでしょうか?」
「え、クラウスさんのいる所に、俺達が行くと思っていましたけど?」
「いえ、それが……リク様と話をするのに、仕事がチラつく場所では行いたくないとの事でして……むしろリク様がいる所に、クラウス殿が行くと息巻いてるそうです」
「えーっと……そうなんですか……それじゃあ、獅子亭……は、駄目ですね」
「……そうですね」
まぁ、元々が昼の休憩時間なのだから、仕事とは離れたいのかもしれない。
とは言え、俺達が話す事も仕事に関係する事なんだけど……クラウスさんがそう言うなら仕方ない。
そう考えて、話す場所を獅子亭にしようとしたけど、昼の準備を始めているマックスさん達を見て、却下した。
ハーロルトさんも周囲を見て、同意するように頷いている。
昼休憩という事は、昼食の時間でもあるから、その時には当然ながら、獅子亭はお昼の営業時間だ。
人が押し寄せる店の中で、クラウスさんを呼んで話をするとしても、マックスさん達は許可してくれるだろうけど、落ち着かなさそうだしね。
昼の営業を邪魔しないように、他の場所にするべきだ。
ヘルサルで、落ち着いて話をする所かぁ……カフェのような場所はあるし、知ってるけど、そこが相応しい場所かどうかわからない。
あまり多くの人に言いふらすような内容でもないから、できるだけ信用できる場所がいいと思う。
そういう意味でも、人の出入りが激しいお昼の獅子亭ではダメだろうし……。
「リクさん、それなら冒険者ギルドはどうかしら?」
「冒険者ギルド?」
「えぇ。あそこなら、人が来ない部屋も用意してくれると思うわよ?」
どこで話せばいいのかを考えていたら、近くのテーブルで、ゆったり食後のお茶を飲んでいたモニカさんから提案される。
冒険者ギルドかぁ……ヤンさんに会うのにも丁度良いし、行ってみるのもいいかもね
「それに、ヤンさんとも一度話しておかないといけないし……街の事なら、冒険者にも関わりが出て来るから、その話もね」
「街の事も……そうか、確かにそうだね」
俺達の事をヤンさんに報告する以外にも、街ぐるみで農地をするのであれば、冒険者にも関わって来る。
簡単な手伝いのような依頼から、農地に近付く魔物を討伐とか、警護をしたりね。
その辺りの事もあるから、ヤンさんも交えて話した方が、手っ取り早いとモニカさんは考えたんだろうと思う。
言われてみれば確かにと、俺もモニカさんに同意した。
1
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
目覚めれば異世界!ところ変われば!
秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。
ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま!
目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。
公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。
命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。
身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる