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キューの生産量を増やす方法

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「現在の農地で、他の作物の生産を縮小し、キューを重点的に作る……という事なら、多少は時間が短縮されます。ですが、今以上の数を消費される事を考えると……」
「そうね。ひとまず、クレメン子爵には領内の生産を増やすよう、お願いしておくしかないわね」

 クレメン子爵領は、野盗が原因で寸断されている状況に近かった。
 完全ではないけど、あの森を通った際には襲われてただろうしね。
 他の道から子爵領に入る人もいただろうけど、そっちは時間がかかるから、まだ噂は広まってないんだろう。
 オシグ村でもキューは作られてたみたいだから、他の作物を減らして、キューを多く作るのは、とりあえずの策としては悪くないと思う。

 多く増やせるわけじゃないから、これからさらに噂が広まった時、消費に追いつけはしないだろうけど……。
 それでもやらないよりマシだし、その間に農地拡大や時間のかかってしまう政策の準備をする時間を、少しは稼げる……かもしれない。

「農地を襲う魔物を、重点的に討伐するのはどうでしょうか? 今は被害が少ないとはいえ、その損失分も集められれば……」
「そこは少し難しいわね……。農地を警備する人を増やす事はできるけれど、微々たるものよ。魔物がいつ襲って来るかわからないし、国内の魔物を駆逐できるわけでもない。……冒険者への協力要請も必要かしら?」
「財政を管理している部署に、聞いおきます。冒険者に協力してもらえれば、少なくとも被害は減るはずです」
「お願い」

 モニカさんが提案したのは、農地が魔物に襲われる事を減らし、損害を少なくする事。
 アテトリア王国の農地がどれだけあるかわからないけど、その農地を全て警護したり、襲って来る魔物を全て倒すなんて事は、さすがにできないようだ。
 まぁ、単純に人手が足りないよね。
 冒険者ギルドに依頼をすれば、冒険者も動いてくれるだろうけど、そのための報酬が必要だし……お金がかかるから万全とは言えない。

 マティルデさんが以前言っていた、生活に困ってる低ランクの冒険者達には良い依頼かもしれないんだけどね……。
 村とかだと、食事を出してくれるところが多いらしいし、王都よりも物が安い。
 ただ、魔物によっては高ランクの冒険者じゃないと、対処できない場合もあるから、これもまた難しい問題だ。
 この辺りは、冒険者ギルドが考えて采配してくれるだろうけど。

「……やっぱり、どうしても時間がかかるのが問題ね。今すぐ、広い農地を使ってキューを作り始められるところがあればいいんだけど……」
「それも、キューの生産量を一時的に多くして、噂が収束した時が問題になりそうですが……」
「そうね……それも考える必要があるわね。生産量を多くした分、継続的に多く消費する方策も考えないとね」

 ある程度、皆が意見を出し、時間がかかってしまう事を実感している時、姉さんとハーロルトさんの話を聞いて、確かにそうだと気付く。
 今噂が一時的に広がっているから、皆キューを買い求めてるけど、この噂が風化した時……つまり、以前と同じくらいしか買われなくなった時に、増やした生産量分をどうするかが問題になる。
 数が多過ぎれば無駄も多くなるし、価格が下がれば作ってる農家の実入りも減る……と。
 多過ぎても少な過ぎてもいけない……難しい。

「まずは生産量を増やす事。そうしながら、状況が落ち着いた時増えた分をどうするか、考える必要があるわね。はぁ……リクがいてくれる事は、良い事ばかりだと思ってたけど……頭が痛いわ」
「……ごめん」
「いえいえ、リク様がいなければ、王都を始め、国内はもっと酷い状況になっていたでしょう。考えることは多いかもしれませんが、いない事を考えるよりも、楽なのは間違いありません」
「そうですよ。今ここにいる皆様も、リク様がいなければここにいられなかった事も考えられます。リク様が謝られる事ではありません。――陛下?」
「……悪かったわ。考える事が多くて、つい口を衝いて出てしまったわ。ごめんなさい、リク」

 姉さんに悪気はない事はわかってるけど、俺やエルサがキューを食べてた事で、これだけ大きな事になってしまったのは事実だ。
 それを認めて謝ったら、ハーロルトさんやヒルダさんがフォローしてくれた。
 さらに、ヒルダさんがジト目で見ると、ばつが悪そうに謝る姉さん。
 まぁ、姉さん悪気がないのはわかってるし、俺がいなかったらとは考えないけど、最悪の状況だと、キューの事を暢気に考える余裕なんてなかったのは確かだ。

「ヘルサルやセンテ、周囲の村はゴブリンによって壊滅。エルフの集落もなくなり、王城は魔物によって大きな被害を被る。さらには、陛下も攫われ、子爵領は身動きが取れず……帝国に制圧される……。リク様がいなかった時の事を考えると、ゾッとします」
「本当に、リクがいてくれてよかったわ。そう考えると、キューの事で頭を悩ませるのは楽なものよね。改めて、リク、ごめんなさい。私とした事が、不用意な事を言ってしまったわ。それと、ありがとう」
「えっと……うん、気にしてないから、大丈夫だよ」

 ハーロルトさんが畳みかけるように、姉さんへもしもの状況を説明すると、項垂れながら姉さんがもう一度謝る。
 まぁ、姉さんも考える事が多くて、思わず出てしまった事だろうし、単なる愚痴みたいなものだろうからね。
 あまり気にする事のないよう、首を振って大丈夫と言っておいた。
 多分、この場でリラックスして話してるから、出ただけなんだろうしね。

 いつもの、女王様モードの姉さんだったら、愚痴とかは出なかったはずだ。
 気心の知れた人達が相手だから、と考えると、姉さんが気楽でいられてると実感できて、悪い気分じゃない。
 国を治める仕事なんて、気苦労が絶えないだろうし……俺相手に愚痴る程度で楽になるなら、弟冥利に尽きるってものだね、うん。

「すみません、いいですか?」
「モニカ? どうしたの、何か思いついたかしら?」

 少し話がそれてしまっていた間、何事かを考えていたモニカさんが、おずおずと手を挙げて発言。
 何か、新しく思いついた事があるんだろうか?

「思いついたというか、思い出したのですけど。――リクさん、前にヘルサルで依頼をこなした時、農地に関する依頼を受けたわよね?」
「え? うん。そんな依頼も受けたね」
「あれって、リクさんが魔法を使った跡地を農地に……という事だったわよね?」
「えーと……そうだね。あの時は、少しやり過ぎたと思ってるけど……」

 ゴブリンを殲滅した時の事だね。
 あの時、自分でも驚くほどの威力の魔法を使ってしまい、元々林だった場所が開けた場所になってしまった。
 確かあれは、街からの依頼で、せっかく開けた場所が街近くにできたのだから、農地として利用できないか……という、土が適しているかの調査だったはずだ。
 まぁ、俺としては、証拠隠滅じゃないけど……ガラス化した地面を隠す目論見もあったんだけどね。
 それはともかく、あの場所ならかなり広い範囲だし、農地の話が進んでいれば、ヘルサルの方である程度動いてくれているかもしれない、と考えられた。


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