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エフライムとレナの紹介

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「リクは、最高勲章を持っている英雄よ。それに、冒険者でもあるわ。国に寄らない人物として、親しくする方がいいの。周囲が臣下ばかりだと、疲れてしまうからね」
「はぁ……そうなのですか……」

 姉さんの言い方は少し乱暴だけど、その方向で行こう。
 身に余る評価だとは思うけど、英雄という事で一般の人より女王や貴族と近い。
 さらに、一つの国に寄る事のない冒険者だから、臣下とはまた違った付き合い方をしている……という事にしておこう、うん。
 ちょっと面倒になって来たとか……そんな事はない……よ?

「リク、そろそろ私達の方も、いいかしら?」
「あぁ、ごめん。フィリーナ達の事を無視してたわけじゃないんだけど……」
「陛下がいるのだから、私達が下がるのは当然だけれどね。――えぇと、私はフィリーナ。エルフの集落の代表として、ここに来ています。エフライム・シュタウヴィンヴァー殿、以後お見知りおきを」
「アルネです。私が兄、フィリーナが妹となります。お見知りおきを」

 姉さんとの関係をどうするか考えていたら、フィリーナに声をかけられた。
 エフライムやレナは、視界には入っていたんだろうけど、姉さんとの対面が強烈過ぎて、そちらに意識を向ける余裕はなかったんだろう、今更ながらに驚いた様子だ。
 エルフがいるのは教えていたから、いずれ会えると考えていたんだろうけど、こんなにすぐ対面するとは思ってなかったからだろうね。

 フィリーナが立ち上がり、礼をしながら自己紹介。
 それに続いてアルネも名乗る。

「エフライム・シュタウヴィンヴァーです。エルフ殿達と会えるとは、光栄です」
「レナーテ・シュタウヴィンヴァーです。噂の通り、エルフは美形なんですね!」
「こらレナーテ、失礼だろう?」
「ふふふ、いいんですよ。エルフは人間の国では珍しいですからね。王都に来て、珍しい物を見る視線にも、随分慣れましたから」
「そうだな。レナーテ殿くらいなら、可愛いものです」

 改めて、エフライムとレナの自己紹介。
 レナは目を輝かせながら、フィリーナとアルネの容姿を褒めるけど、それをエフライム注意する。
 確かに、初対面の人の容姿を、いきなり褒めるというのは微妙に失礼かもしれない。
 まぁ、貶してるわけじゃないし、フィリーナ達も気にしてない様子だから、問題ないようだけどね。

「そういえば、メイさんはどうしたの、レナ?」
「メイドですか? えっと……」
「私でしたら、ここに。リク様、何か御用でしょうか? 夜のお相手でしたら、私以外を求めて欲しいのですが……」
「ふぉ!?」

 お互いの紹介も終わり、一息入れようと皆でソファーに座る。
 レナはともかく、エフライムの方はエルフの二人がいる事や、姉さんもいる事で、かわいそうなくらい恐縮してた。
 ……そのうち、慣れるかな?
 ヒルダさんが新しくお茶を淹れてくれて、皆の前に用意してくれた時、メイさんの存在を思い出した。

 ヒルダさんを見て、メイドのメイさんを思い出したのは……ちょっと失礼かもしれないけど。
 エルフに会えた事が嬉しいのか、フィリーナ達を見て俺の隣でニコニコしているレナに聞く。
 レナがメイさんを探すように、顔をキョロキョロさせた瞬間、俺の後ろからメイさんから声をかけられ、驚いて変な声が出てしまった。
 いつの間に後ろに……気配を殺すのは止めて下さい。

 フィリーナとアルネも驚いてる。
 エフライムとレナは……もう慣れてるのか、若干諦めの表情が見える。
 姉さんとヒルダさんは驚いてないな……もしかして、最初から気付いてた?

「リク……使用人とか、立場の低い人に変な事を強要するのは、頂けないわよ?」
「いやいや、メイさんが勝手に言ってるだけだから! 俺がそんな事言うわけないでしょ!」
「本当かしら? リクも年頃だからねぇ……」

 そこで、可愛がってた弟の部屋で、女性の肌色が多い本を見つけた姉のような表情をしない!
 どんな表情かは、された人だけがわかる表情だ。
 メイさんとは、数日前に初めて会ったし、俺がそんな事を頼むわけがないだろうに……。

「メイさん、変な冗談は止めて下さい」
「このような夜に呼ばれたので、つい勘違いをしてしまいました」
「はぁ……確かに夜ですけど……そんなわけないでしょ。ただ、エフライムやレナがここにいるのに、いないから気になっただけです。――そういえば、陛下とヒルダさんは驚いてないみたいですけど?」
「最初から気付いてたわよ? 私にちゃんと礼をしてたし。格好を見れば、使用人というのもわかったしね」
「私も同様です。主人がいるので、メイドが前に出る事はありません。……天井に張り付くのは、止めて頂きたいですが」
「天井にいたの!?」
「最初は、エフライム様達の後ろにいましたよ? すぐに天井に移動しましたけど。……天井って落ち着くんですよねぇ……心の故郷です」

 夜に呼んだからって、変な意味とは限らないんじゃないだろうか。
 ともあれ、最初はエフライムとレナの後ろから、部屋に入って来ていたらしい。
 レナが抱き着いて来たから、気付いてなかったのかもね。
 姉さんとヒルダさんはわかっていたようだけど、フィリーナとアルネは、俺やエフライム達の影で見えなかったんだろう。

 それはともかく、天井に張り付くって一体なんなのか……本当に忍者なのかな、この人。
 恰好は、ゴシックなメイド服を着た女性なんだけど……忍者って言葉が似合わないなぁ……。

「さて、リクが驚いているのは放っておくとして。エフライム達はどうして王都へ?」
「放っておかないで下さい……はぁ……エフライム達は、子爵領であった事を、直接報告するためにここまで来たんです。クレメン子爵からの書簡に、その事は書かれてなかったんですか?」
「ん~、書かれてなかったわね。リクが王都へ帰る旨と、その時一緒に孫もついて来るくらいの事しか、書かれてなかったわよ?」
「お爺様の事ですから、書簡には詳細を書かず、私共が直接報告させようと考えたのでしょう。妨害も考えられますから」

 俺がメイさんの行動に驚いているのを、姉さんはあっさり脇に追いやり、エフライム達の方へ顔を向けた。
 さっきクレメン子爵の伝令から、書簡が来て俺達が戻って来るのを報されたと言っていたから、簡単にでもエフライム達が来る理由を書いているものだと思ったけど、そんな事はなかったみたいだ。
 エフライムが言うには、妨害も考えられるから、詳細は書いていなかったらしい。
 まぁ、まだ領内のバルテル配下の者達を、完全に排除できてないし、何があるかわからないから大事な事は書簡にしたためるのではなく、エフライム達が直接報告する事にしたんだろう。

「それはありそうね。それで、子爵領では何があったの?」
「はい。事はリクが王都にて、勲章を授与されると決まった辺りからです……」

 姉さんに聞かれて、エフライムとレナが捕まり、俺に助け出された事。
 バルテルの配下が動いて、子爵邸が封鎖されているに近く、王都からの情報が入って来ていなかった事。
 エフライム達が人質に取られていたため、クレメン子爵は身動きが取れなかった事。
 魔物の討伐のために、兵士や騎士団を差し向ける事もできなかった等、子爵領で起こっていた事を伝えた。

 もちろん、俺がエフライム達を偶然見つけ、助け出してクレメン子爵の所まで連れて行った事で、事態が好転。
 指示をしていたバルテルがいなくなった事もあり、現在子爵領内のバルテル配下の者達を排除する事に努めているという報告もした。
 姉さんは、クレメン子爵が授与式に来なかった理由に頷き、何故動きが見られないのかに納得した様子だ。
 話の途中、エフライム達を助け出す部分で、俺の活躍がレナから誇張されて伝えられていたが、あの時寝ていたはずだから、想像で話が大きくなっていっている気がするなぁ。


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