267 / 1,903
練習を終えてまったり夕食
しおりを挟む「パレードの時に着る鎧の事なのですが……」
ヒルダさんが来た理由は、俺が着る鎧に関する事だった。
俺が着る鎧は、昨日ワイバーンの皮を使った青い鎧だ。
けど、少しだけサイズが合わないようで、微調整をするため俺の体の採寸をしたいとの事。
服と違って、鎧のサイズを調整するなんてできるかと考えたけど、部位ごとに調整する職人さんがいるらしい。
確かに昨日着た時は、すこし大きく感じるような気がしたので、調整してくれるならありがたい。
ヒルダさんに言われて、採寸に行こうと思ったところで、ハーロルトさんが帰って来た。
「お待たせしました……ヒルダ殿? どうかされたのですか?」
「ハーロルト様。実は……」
ヒルダさんがここにいる事を疑問に思うハーロルトさんに、もう一度説明をする。
「成る程、鎧のサイズですか。今回は、パレードのためなので、戦う事はありませんが……サイズは調整しておいた方が、見栄えは良いでしょうね」
「はい。パレードの最中、リク様が違和感を感じられてもいけませんので……」
「違和感を感じる……という程でも無いのですが……」
ほんの少し、大きいかな? と思うくらいだ。
パレードで着るだけなんだから、1日我慢すれ良いだろうと考えて言ったんだけど、ハーロルトさんとヒルダさんには反対された。
なんでも、サイズが合わなかったら動いた時に、不自然な音が鳴って敏感な者は勘づくだろうとの事。
……少しだけなんだから、大丈夫だとは思うんだけどなぁ。
でも確かに、鎧とかを作ってる職人さんや、詳しい人なんかは気付くかもしれない……のかな?
まぁ、サイズの調整をやってくれると言うのだから、ここは変に反対せず、お願いしておこう。
「では、こちらになります」
ハーロルトさんと別れ、ヒルダさんに案内されて別の部屋へ。
モニカさん達は、俺が馬の練習をしてた間も、こちらを見ながら書類でパレ―ドの行程を確認していた。
今は、俺の採寸までついて来る事はないため、部屋に戻ってゆっくりしてる事だろう。
「では、ここで採寸をさせて頂きます」
「はい、お願いします」
案内された部屋は、あまり大きくなく、ベッドすらない部屋だった。
数人が入るスペースと、椅子が数個あるくらいだから、更衣室とか、そういった感じの部屋なのかもしれない。
「はい、確認致しました。お疲れ様です」
「……はい」
採寸は、ヒルダさんに色々な体のサイズを計ってもらったのだけど、ちょっと恥ずかしかった。
さすがに下は履いたままだけど、上半身は裸にされたからね……。
採寸のために必要とは言え、ここまでする必要ってあるのかな……?
どうせギャンベゾンも着るんだし……とも思ったけど、口には出さないでおいた。
ヒルダさんが一生懸命調べてくれたからね、水を差さないでおこう。
「はぁ……これで、あとは明日のパレードを待つだけ、か」
「そうね。いよいよパレードなのね」
「勲章授与式の時もそうだったが、リクといると、大きな催しに関わる事が多いな」
「城への魔物襲撃にも関わったしね?」
「おいフィリーナ、それはさすがにリクが原因ではないだろう」
「ははは……。でも、確かにそうだねぇ……」
勲章授与式と来て、さらに今度はパレードだ。
俺と同じように冒険者になった人で、こんな経験をしてる人は他にはいないんだろう。
それに、フィリーナの言う通り、魔物の襲撃に関してもそうかもしれない。
俺が原因ってわけじゃないけど、短期間に、こんなに大量の魔物と戦う経験なんて、早々あるもんじゃないんだろうなぁ。
「ヘルサルでのゴブリン、エルフの集落でのサマナースケルトンを始めとした魔物達、さらには王都でワイバーンや城を襲撃する魔物達……」
「普通の冒険者では、最初のヘルサルで命を落としていてもおかしくないな」
「そうね。聞けば聞く程、リクの経験が凄い事になってるわね」
「リクは自分の力だけじゃなく、他の者達もいたから切り抜けられたと言うが……リクがいなければどれも切り抜けられなかっただろうな……」
「私も頑張ったの!」
「私もいるのだわ」
「ははは、ユノやエルサ。皆が協力してくれたおかげだよ」
今は、採寸やパレードの準備で俺がする事は終わり、部屋に戻ってゆっくりした時間だ。
その中で、何故か俺が今まで体験した事を思い返すようになってる。
俺も頑張った事は確かだけど、俺だけが頑張ったわけじゃないと思うんだよなぁ。
ヘルサルでは、マックスさん達も含めて、ヘルサルとセンテが協力してゴブリンに対して戦ったから、怪我人はいたけど、死者が出なかった。
最初から皆が諦めてたら、すぐにヘルサルの街中へゴブリン達が侵入してしまって、被害は甚大だっただろうしね。
エルフの集落では、エヴァルトさん達エルフが頑張って持ち堪えてくれてたから、俺達が行くのも間に合った。
あそこでは、特にエルサが頑張ってくれたのもあるし、残党討伐には、ヤンさん達にも協力してもらった。
王都では、兵士さん達の協力があったから、謁見の間に裏から侵入してバルテルを止める事ができたし、囮になってくれたユノのおかげもある。
ワイバーンと戦ってる間、押し寄せる魔物達が城に入り込まないよう持ち堪えてたのも、兵士さんやモニカさん達のおかげだしね。
全ての事を俺一人で行動し、戦ってたら……と考えると、エルサがいたとしても被害は大きなものになってただろうなぁ……。
「……やっぱり、皆が頑張ってくれたおかげだよ」
「リクさんは、いつもそれねぇ……」
「ははは、リクはそれが良いんだろうな」
「皆で協力して……ね。だから皆、そう考えてるリクさんに感謝してるのよ?」
「まぁ、俺達だけの力では無理だった。リクだけの力でも無理だった……そう考える事にしよう」
そう結論付けて、アルネが締める。
その後も、まったりと談笑したり、パレードの行程を書類で確認したりして、ゆっくりとした時間を過ごした。
他に予定が無かったからなんだけど、こういう時間もたまには良いよね。
「皆様、夕食の準備ができました」
「私も一緒に食べるわよー」
「姉さん……最近夕食はいつもここだけど、大丈夫なの?」
「大丈夫よ。英雄を歓待するためって事で、皆認めてるわ」
「歓待……良いのかな……?」
夕食の準備をしてくれたヒルダさんと一緒に、姉さんが部屋に入って来た。
女王陛下なんだから、城にいる貴族の人達と食事したりとか、そういった事もあるかも……なんて考えたんだけど、姉さんが言うには、これで良いらしい。
……貴族の人達には元姉弟なんて話はしていないだろうから、俺を女王自ら歓待するため……という事で通ってるようだ。
本当に良いのかな……?
「まぁ、細かい事は気にしなくて良いのよ。大体の事は、ハーロルトと宰相がやってくれるわ」
「ハーロルトさんが?」
「そうよ。情報部隊の隊長だからね。情報操作もお手の物よ?」
「情報操作って……」
宰相さんは、補佐をする人だから、そういう事に長けてるんだろうけど、ハーロルトさんは情報操作をして、姉さんがここにいても良いという事にしてくれてる……という事なのかな?
というか、情報操作までしてるのか……ハーロルトさん、本当にお疲れ様です。
何をどう操作しているのかはわからないけど、ハーロルトさんが苦労しているのは間違いないだろう……不肖の姉が申し訳ない……。
1
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
目覚めれば異世界!ところ変われば!
秋吉美寿
ファンタジー
体育会系、武闘派女子高生の美羽は空手、柔道、弓道の有段者!女子からは頼られ男子たちからは男扱い!そんなたくましくもちょっぴり残念な彼女もじつはキラキラふわふわなお姫様に憧れる隠れ乙女だった。
ある日体調不良から歩道橋の階段を上から下までまっさかさま!
目覚めると自分はふわふわキラキラな憧れのお姫様…なにこれ!なんて素敵な夢かしら!と思っていたが何やらどうも夢ではないようで…。
公爵家の一人娘ルミアーナそれが目覚めた異なる世界でのもう一人の自分。
命を狙われてたり鬼将軍に恋をしたり、王太子に襲われそうになったり、この世界でもやっぱり大人しくなんてしてられそうにありません。
身体を鍛えて自分の身は自分で守ります!
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる