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リクへ貴族の訪問
しおりを挟む翌日、朝の支度を済ませ、部屋で待機。
なんでも、パレードの準備をするために姉さんが色々手配してるみたいで、俺を呼びに来るまでは待機してて欲しいとの事だ。
「リクさん、来たわよ」
「リク、おはよう」
「おはようなの、リク」
「おはよう、皆」
朝食も食べ終え、エルサのモフモフを撫でながらソファーで暇を持て余していた時、モニカさん達が連れ立って俺の部屋を訪ねて来た。
多分、ここに来る途中に合流したんだろう。
モニカさんとソフィーとユノ、フィリーナとアルネの二人ずつで宿が違うみたいだからね。
「あら、今日はリクさんの頭にくっ付いてないのね」
「やる事がないからね。こうやってエルサの毛をモフモフしてるんだよ」
いつもと違い、今はエルサを座っている足の上に置いて撫でている。
やっぱりエルサのモフモフは癒されるなぁ……。
暇を持て余してたけど、これだけでも良い暇潰しになる。
「それで、リクさん。今日はどうするの? また冒険者ギルドに行って、何か良い依頼が無いか探してみる?」
「それとも、武具店でも探して行ってみるか? ここは王都、人も多く店も多い。何か面白い物があるかもしれないぞ?」
「王都見学もいいわよねー。まだ見て無い場所もあるし」
「そう言えば、大通りの修復は終わったようだな。そこに行ってみるか?」
「面白そうな所を見て回るの!」
「私はキューがある所に行きたいのだわ。美味しいキューを求めて……だわ!」
「いや、エルサ。お前は昨日俺と一緒に話を聞いてただろ?」
「……そうだったのだわ」
「? 何かあるの?」
皆は、俺の部屋に入ってくるなり、今日はどう行動するかを話し始めた。
一気に人が増えて、お茶の用意をするヒルダさんが大変そうだ。
エルサが言う、キューを求めて……というのはちょっとだけ気になったけど、昨日姉さんに言われて城からしばらく出られない事を知ってるはずだ。
……キューって、物によってそんなに味が違う物なんだろうか……まぁ、新鮮かどうか…vというのはあるだろうけどね。
「今日からしばらく、パレードの準備があるみたいなんだ。だから俺は、城から出ないようにって、昨日姉さんに……」
「そうだったのね」
「そう言えば、パレードなんてものがあるんだったな」
「仕方ないわねー。リクはアテトリア王国の英雄だもの。皆にはちゃんとお披露目しないと」
「そうだな。国民に広く知られ、感謝されるべきだな」
「感謝は別に……俺だけの功績じゃないんだけど……まぁ、とにかくそんなわけで、パレードが終わるまで俺は城から出られそうにないんだ」
昨日姉さんに言われてた事を、皆に伝える。
パレードの準備という事で、納得してくれたみたいだ。
アルネの言う国民からの感謝や、フィリーナの言う皆へのお披露目……というのは、俺はなくても良いと思うんだけどね。
「それじゃあ、しばらく王都でのんびりね。私達は城下町で適当に過ごしているわ」
「そうだな。良い機会だ、リクはゆっくり過ごすと良い」
「うん、そのつもり。……馬に乗る練習もしないといけないみたいだから、あまりゆっくりできないかもしれないけどね」
「リクは、馬に乗れないの?」
「うん。こっちに来るまでは、馬なんて直接見た事すらなかったからね。当然、乗れもしないよ」
「馬にも乗れずにどうやって移動……あぁ、エルサ様がいるんだったわね」
「乗り心地はまだしも、エルサ様に乗れるのなら、馬に乗れなくても不便はないだろうな」
モニカさんとソフィーはこの機会に、城下町を回って王都を満喫するみたいだ。
冒険者として正しいのかわからないけど、依頼ばかりだとのんびりできないから、良い機会何だろうと思う。
先日の依頼まで、結構のんびりしてた気がするのは気にしない。
アルネとフィリーナは、俺が馬に乗れない事に驚いた様子だったけど、すぐにエルサに乗れるからと納得した。
確かにエルサに乗れれば、馬に乗る必要はないからね。
馬より速いし。
コンコン
「ん? 誰かしら?」
「んー、パレードの準備のために、俺を呼びに来るって言ってたから、それじゃないかな?」
「どなたでしょうか?」
「フランクです。リク殿にお目通りさせて頂きたく……」
「リク様?」
「フランクさん? 誰だろう……? 会ってみようか」
「わかりました。……どうぞお入り下さい」
皆でソファーに座って話してると、部屋の入り口がノックされ、フランクと名乗る人が訪ねて来た。
俺に会いたいという事だったから、誰かはわからないけど会ってみよう。
ヒルダさんがドアを開け、フランクと名乗った人が入って来る。
部屋に入って来たその人は、綺麗な銀髪をオールバックにまとめており、皺の刻まれた顔が渋い。
体形は中肉中背で、服装からして身なりは良さそうだ。
英国紳士……って感じかな。
「リク殿、この度は誠に申し訳ございませんでした……」
「えーと、フランクさん? どうしたんですか、急に謝ったりして……」
その英国紳士、フランクさんは、部屋に入ってくるなり俺に深々と頭を下げて謝って来た。
俺、謝られるような事をされた覚えが無いんだけど……?
「私は、フランク・ハーゼンクレーヴァと申します」
「……ハーゼンクレーヴァ?」
何やらどこかで聞いた事があるような名前だ。
でも、俺はこの人を見たことはないと思う。
こんな渋い英国紳士のような人、一度見たら忘れれられそうにないしね。
「リクさん、リクさん。ハーゼンクレーヴァって確か……キマイラ討伐の時に会った、コルネリウスさんと同じ……」
「あぁ、あの時の! コルネリウスさんと同じ姓って事は?」
「はい。コルネリウスは私の息子になります」
「成る程、そうでしたか」
「キマイラ討伐に赴かれたリク殿の邪魔をした、と聞きまして……本日はその事を陳謝しに参った次第でございます」
「だから、入ってくるなり謝ったんですね。……でも、俺の邪魔……?」
コルネリウスさんの父親、フランクさんは、俺がキマイラ討伐の時に邪魔をした息子の事を謝りに来たという事だけど……。
邪魔された事ってあったっけ?
「リク、あれじゃないか? 勝手にキマイラへ突撃して、命からがら逃れた時の……」
「あぁ、そんな事もあったね。でも邪魔とまでは思ってないんだけどな」
「フィネから報告を受けました。それによると、キマイラへ突撃してリク殿の邪魔をしただけでなく、偉ぶった態度、討伐部位をかすめ取ろうと騒ぎ立てるなど……様々な迷惑をかけてしまったようで……」
キマイラへの突撃は確かに危なかったけど、あれはフィネさんとカルステンさんのおかげで助かった。
戦いそのものは邪魔とまでは言えないくらいだったから、俺は気にしていないんだけど、フランクさんは違うようだ。
けど、確かに偉そうな態度……というのはね、うん。
「まぁ、態度の方はまだしも……キマイラへの突撃は危なかったので、気を付けるように言っておいて下さい。フィネさん達がいなければ、コルネリウスさんは危ない状況でしたから」
「わかりました。コルネリウスには、厳重に注意をさせて頂きます。……しかし、あれですな。リク殿は肝が据わっておりますな?」
「肝が? それはまた、どうしてですか?」
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