95 / 1,903
大量の料理再び
しおりを挟む家の中に入った俺達は、一度自分達に宛がわれた部屋に戻り、持ち歩いてた荷物を置いて居間に集まる。
集まった皆に、俺はまず手洗いうがいをするように言った。
……今日のエルフ達は皆怪我で病気じゃなかったけど、傷口からの感染症とかよく聞く話だからね。
念のための予防だ。
皆は首を傾げながら、何故そんな事をするのかと疑問に思ってたみたいだけど、食事前に綺麗にするためと言ったら、素直に従ってくれた。
皆、食事に対しては真剣だよね……エルサも器用に前足というか、手をこすり合わせて洗ってるし……うがいは出来なかったみたいだけどね。
そんな事をしてるうちに結構時間が経っていたらしく、フィリーナが昨日に引き続き大量の料理を運んで来た。
今日も数人のエルフを連れて、今のテーブルがいっぱいになる程の量だ。
「さあ、今日もいっぱい食べてね! リクのおかげでこの集落も久しぶりに活気が出て来たからね!」
「いや……あの……昨日もそうだけど、さすがにこの量は多過ぎて……」
「遠慮なんかしなくても良いのよ! さあ!」
遠慮してるわけじゃないんだけどなぁ……。
まぁ、フィリーナとエルフ達の厚意だ、今日もお腹いっぱい食べよう。
……多分、また残す事になるだろうけど。
フィリーナの言ってる集落に活気が出たというのは、俺が怪我をしたエルフ達を治療したからだろうと思う。
集落を回ってる時に、怪我の治ったエルフ達が元気に過ごしてるのを見た時は、この魔法を試して良かったと思ったもんだ。
多分、魔物から襲撃を受けるようになって、この集落は今まであまり活気が無くなってしまっていたんだろうな……。
とりあえず今日は怪我を治したから、明日から魔物退治を頑張ろう。
「今日もテーブルがいっぱいねぇ」
「食べ応えがあるな」
「キューも沢山あるのだわ!」
「いっぱい食べるの!」
「……皆、お腹がいっぱいで動けないとかにならないようにな……」
「「「「はーい」」」」
俺の言葉に、エルサやソフィーさんも含め、皆元気に返事をする。
目の前にあるご馳走を前に他の事はあまり気にしていられないようだね。
フィリーナさんも含め、アルネ、俺、モニカさん、ソフィーさん、ユノ、エルサでテーブルにつき、一斉に食べ始める。
俺やソフィーさん、ユノは数少ない肉料理から、モニカさんとアルネとフィリーナは野菜を使った料理を、エルサはいつものようにキューが積み重なった皿の前に陣取り、両手で1本のキューを掴んでかじり始めた。
各々好きな料理を勢いよく食べてるが、量が量だけに減った気がしない。
食事が始まり、1時間が経過した頃……テーブルの上に置かれていた料理達は残り3割くらいにまで減っていた。
「……もう、食べられない……うぷ……」
「さすがに食べ過ぎたわ……明日は何か運動をしないと……」
「私も……もうこれ以上は……」
「お腹いっぱいなのだわー」
「よく食べたのー」
「……ごめんなさい……本当に量が多かったのね……私ももう食べられないわ……」
「俺ももう無理だ……フィリーナ、明日からはもう少し考えて料理を持って来てくれ……」
フィリーナさんが料理を運んで来るのを手伝っていたエルフ達はもういない。
料理を運びきったところで帰って行ったからね。
そして残された俺達は、限界まで詰め込み、皆お腹に手を当ててる。
……今動いたら逆流しそうだ。
俺を含め、皆食べ過ぎて動けないのか、その場で休憩してた。
それはいいけど、この残った料理はどうしよう……。
昨日のは、運んで来てくれたエルフ達が引き取ってくれたけど、今日はいないしなぁ。
「……残った料理はどうするんだ?」
「……もったいないけど……捨てるしか……」
「何を言ってるの? 保存できる物は明日の朝食よ?」
モニカさんは捨てる事に反対のようだ。
まぁ、もったいないからね、朝食に出来るならそれで良いと思う。
「じゃあ、とりあえず保存できる物と保存出来無い物に分けて……と」
「これは、こっちね。えっと……これは保存出来るのかしら?」
「ああ、それは明日までなら大丈夫よ」
フィリーナさんとモニカさんが二人で手分けしながら、テーブルに残った料理を分け始めた。
……もう動けるんだ……俺はもうしばらく動けそうにないんだけど。
よく食べるエルサやユノですら食べ過ぎたようで動けずにいるのに。
「じゃあ、保存できるのはこうやって……布をかぶせて……と」
「これで終了ね」
「意外と保存出来る料理が多かったわね」
「エルフは森に暮らす種族だからね。保存の効く食料を使って料理をするのが普通よ」
「へぇー、森で暮らすのも大変そうね」
「慣れればそうでもないわよ? まぁ、不作だった時や、狩りが上手く行かなかったら保存されてる味気ない食事が続くけど」
「味気ない食事は嫌ね……」
モニカさんは特にそうだろう。
マックスさんの料理を食べて育って来たんだ、おいしい料理を食べる事に慣れてるはずだからね。
モニカさんとフィリーナは仲良さそうに二人で残った料理を片付けてくれた。
見てた限りだと、ほとんどが保存出来る物だったみたいで、捨てる料理は少なかった。
……手伝えなくてごめんなさい……。
「それじゃ、お腹もいっぱいになった事だし、お風呂に入りましょ」
「そうね。ユノちゃん、動ける?」
「お風呂入るのー!」
「私も行こう」
モニカさんとフィリーナはユノに声を掛け、そこにソフィーさんも加わって4人でお風呂に入りに行った。
残されたのは、俺とアルネとエルサだ。
「女性陣は元気だな」
「本当に。あれだけ食べたのにすぐお風呂に入りに行けるなんて。ユノもソフィーさんも食べ過ぎてうごけなかったんじゃないのか?」
「お風呂は心の洗濯なのだわ。女の子なら大事な事なのだわ。動けなくても入るために動くのだわ」
「……そうか」
アルネと俺はお腹いっぱいで動けなかったはずの女性陣を、半ば呆れ気味で見送ったが、エルサは違ったようだ。
というかエルサ、心の洗濯って……また俺の記憶から変な言葉を使ってるな……しかも、動けなくても動くとか矛盾してないか?
俺とアルネはそのまま座って休憩し、女性陣がお風呂から上がるまで雑談なんかをして過ごした。
長風呂だった女性陣を待って、俺とエルサがお風呂に入る。
アルネは男同士とは言え一緒にお風呂に入るのは遠慮するとの事だ。
まぁ、男同士で入るのはちょっと躊躇するよな。
銭湯とかの大浴場なら気にならないんだけどね。
……何で女性陣は皆で一緒に入る時あんなに楽しそうなんだろう……?
男にはわからない問題を考えつつ、エルサのモフモフを綺麗に洗ってお風呂から上がる。
今日は時間も遅いという事で、女性陣にはドライヤーもどきの魔法は遠慮させてもらった。
結構時間がかかるしね。
でも、部屋に戻ってエルサにだけはドライヤーを掛けてやる。
このモフモフを丁寧に手入れをしてやらないなんて事は俺には出来ない!
同じ部屋にいるユノがそれを羨ましそうに見ていたり、エルサの隣に行って風を受けて遊んだりしてた。
その後、10分程でエルサが気持ち良さによってコテンと横に倒れるように眠った後、しっかり乾かしてやってエルサを抱えてベッドに入る。
ユノもエルサのモフモフを気に入ってるのか、二人でエルサを挟んでモフモフをモフモフしながらモフモフな眠気に誘われてそのまま就寝。
今日はモフモフの夢が見られるかなぁ……
1
お気に入りに追加
2,153
あなたにおすすめの小説
フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!
公爵家三男に転生しましたが・・・
キルア犬
ファンタジー
前世は27歳の社会人でそこそこ恋愛なども経験済みの水嶋海が主人公ですが…
色々と本当に色々とありまして・・・
転生しました。
前世は女性でしたが異世界では男!
記憶持ち葛藤をご覧下さい。
作者は初投稿で理系人間ですので誤字脱字には寛容頂きたいとお願いします。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
侯爵家の愛されない娘でしたが、前世の記憶を思い出したらお父様がバリ好みのイケメン過ぎて毎日が楽しくなりました
下菊みこと
ファンタジー
前世の記憶を思い出したらなにもかも上手くいったお話。
ご都合主義のSS。
お父様、キャラチェンジが激しくないですか。
小説家になろう様でも投稿しています。
突然ですが長編化します!ごめんなさい!ぜひ見てください!
おもちゃで遊ぶだけでスキル習得~世界最強の商人目指します~
暇人太一
ファンタジー
大学生の星野陽一は高校生三人組に事故を起こされ重傷を負うも、その事故直後に異世界転移する。気づけばそこはテンプレ通りの白い空間で、説明された内容もありきたりな魔王軍討伐のための勇者召喚だった。
白い空間に一人残された陽一に別の女神様が近づき、モフモフを捜して完全復活させることを使命とし、勇者たちより十年早く転生させると言う。
勇者たちとは違い魔王軍は無視して好きにして良いという好待遇に、陽一は了承して異世界に転生することを決める。
転生後に授けられた職業は【トイストア】という万能チート職業だった。しかし世界の常識では『欠陥職業』と蔑まされて呼ばれる職業だったのだ。
それでも陽一が生み出すおもちゃは魔王の心をも鷲掴みにし、多くのモフモフに囲まれながら最強の商人になっていく。
魔術とスキルで無双し、モフモフと一緒におもちゃで遊んだり売ったりする話である。
小説家になろう様でも投稿始めました。
【完結】神様に嫌われた神官でしたが、高位神に愛されました
土広真丘
ファンタジー
神と交信する力を持つ者が生まれる国、ミレニアム帝国。
神官としての力が弱いアマーリエは、両親から疎まれていた。
追い討ちをかけるように神にも拒絶され、両親は妹のみを溺愛し、妹の婚約者には無能と罵倒される日々。
居場所も立場もない中、アマーリエが出会ったのは、紅蓮の炎を操る青年だった。
小説家になろう、カクヨムでも公開していますが、一部内容が異なります。
異世界転生~チート魔法でスローライフ
リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。
43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。
その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」
大型連休を利用して、
穴場スポットへやってきた!
テントを建て、BBQコンロに
テーブル等用意して……。
近くの川まで散歩しに来たら、
何やら動物か?の気配が……
木の影からこっそり覗くとそこには……
キラキラと光注ぐように発光した
「え!オオカミ!」
3メートルはありそうな巨大なオオカミが!!
急いでテントまで戻ってくると
「え!ここどこだ??」
都会の生活に疲れた主人公が、
異世界へ転生して 冒険者になって
魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。
恋愛は多分ありません。
基本スローライフを目指してます(笑)
※挿絵有りますが、自作です。
無断転載はしてません。
イラストは、あくまで私のイメージです
※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが
少し趣向を変えて、
若干ですが恋愛有りになります。
※カクヨム、なろうでも公開しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる