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第46話 リィムとマイアは魔族を知る

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 カーライル達がブリザードの断末魔を聞いている頃、魔王国王城、城下町にて。

「はぁ……何だったのあの馬は……?」
「わからないなのよ。魔物では無かったみたいだけどなのよ」

 リィムとマイアの二人が、ほうほうの体で王城の城下町まで辿り着いていた。

「目が血走ってたわよね……何かおかしな物でも食べたのかしら?」
「食べ物だけであぁなるとは思えないなのよ。……疲れたなのよ……」
「そうね、私も疲れたわ。どこかに休める所があれば良いのだけど……」

 二人は疲れた体を引きづるようにして、城下町を歩く。
 服も顔も薄汚れており、その姿は魔族で賑わう城下町の中にあって、とても目立っていた。
 当然、魔族ばかりの町のなかに人間がいるというのもあるが……。

「姉ちゃん達、どうしたの?」
「何かボロボロね。魔物にでも襲われたの?」
「あら? 魔族の子供達ね。……そうよ、私達は疲れてるの。どこか休める所を知らない?」
「魔物には襲われてないのなのよ。けど、変な馬がいたなのよ」

 10歳にも満たないくらいの男女魔族の子供が、二人を心配そうに見つめながら声を掛けた。
 子供達には、そこらの大人魔族より立派な角が生えているが、疲れている二人は気付いていない。

「休める所か……あそこが良いよね!」
「そうね、あそこが良いわね!」
「あそこ? どんな所なの?」
「何でも良いから、休みたいのなのよ」
「ついて来て、姉ちゃん達」
「こっちよ」
「案内してくれるの? ありがとう」
「ようやく休めるなのよ……」

 子供達の案内で、城下町の端に向かう二人。
 そこは、以前カーライルがフランに連れられて行ったデザート屋だった。

「ぼろぼろね」
「ぼろぼろなのよ」
「こっち!」
「え、この中に入るの?」
「怪しさ大爆発なのよ」

 二人は建物がボロボロな事に躊躇するが、子供達は腕を引っ張られてそのまま中に入る。
 相変わらず壊れてる扉の下を潜って中に入ると、初老の女性……もといお姉様がいた。

「おや、新しいお客さんかい?」
「休ませて欲しいんだって」
「ちょうど良いから、私達も遊びに来たのよ」
「そうかい。それじゃ、こっちだよ」

 子供達とお姉様に案内されて、建物の地下に入る二人。
 怪しく思っていても、まさか子供が危ない場所に案内するわけが無い、と考えている二人は子供達に連れられてそのまま奥へ向かう。

「美味しいわ! 何なのこれ!? こんなの食べた事が無いわ!」
「リィナは相変わらず一口で食べるなのよ。でも……確かに美味しいなのよ!」
「そうかい、そりゃ良かったね」
「おや、先程の子供達は?」
「あいつらはあっちさ。それと、あいつらは子供じゃあないよ?」

 お姉様が示す方向には、デザート屋に着くまでに通った賭博場。
 そこでは、先程の子供達が大人相手に、カードゲームで賭け事に熱中していた。

「子供があんな事を……魔王国は乱れているのね……」
「私もやろうかなのよ……でも負けたら損するのなのよ……」
「あいつらは子供じゃないって言ったろ? あれでも100歳以上で、城に勤める兵士さね。魔族を見た目で判断しちゃいけないよ」
「100歳!?」
「……そういえば、魔族は長寿だったなのよ」

 魔族は長寿であるがために、体の成長速度が人間とは違う。
 人間にも個人差はあるが、数百年を生きる魔族ともなると差が激しい。
 フランのように早熟で、18という年齢で体が成長しきる魔族もいれば、先程の子供のように100歳を越えても子供の姿だったりもするのだ。

「そういえば、アンタ達人間だね?」
「えぇ、そうよ」
「人間なのよ」
「そうかい。前にアンタと同じように、一口でデザートを食べた人間がいたねぇ……」
「本当か!?」
「まさか、カーライルなのよ?」

 リィムはカーライルと一緒に、一口で全て食べ終わるという事をしていた剛の者。
 もちろん、マイアもそれを見ているので知っている。
 この城下町で、カーライルの情報を集めようとしていた二人は、到着してすぐ当たりを引いたようだった。


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