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なぜ怖いのか
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誰かが近づいてくる。
私はそれを分かりながらも、目を開ける事が出来なかった。
心地良い眠り。
テントでの睡眠は最高だった。
寝袋というのも初めてで、なんだかイモムシみたいだけど、自分がピッタリと収まってて良い気分だった。
「おはようございまーす!」
明るい声が聞こえる。
ゆっくりと目を開ける。
初めて見る景色で目覚めた。
テントの天井。
曖昧な頭の中が少しずつ整理されていく。
外から聞こえる声。
「なんで嘘ついたんだよ~」
伊之助さんの声だ。
「だって、兄貴と僕を兄弟って勘違いしてるみたいで嬉しくて!でも一つショックだったのが、僕の事、兄貴のお兄さんですか?って!結構、童顔だと思ってたのに...お姉さん怒ってました?」
「お姉さん?」
「あー、まあ、そういう呼び方をする流れがあって...あー、それよりお腹空いた~」
「にな絵さんが起きたら、食べよう」
「うん」
「そうだ、大和。これやらない?」
「おっいいねー!最高の休日だよー!」
何をするのだろう?
起きなきゃ...と思いながら、起きてすぐに伊之助さんの声を聞けた事が新鮮だったので、目を閉じ、今のシーンをもう一度リピートした。
これからは...伊之助さんと一緒にいる事が増える。
ついニヤけた。
スマホで自分の顔と髪を確認して、テントを出た。
二人はバトミントンをしていた。
先に気付いた大和さんが、飛んでくる羽根を無視してこっちに走って来た。
「お姉さんー!ごめんなさいー!」
深く頭を下げる。
「必要なら謝罪会見でも開きます。許して下さい。つい、嬉しくて~」
伊之助さんがこっちを見て軽く会釈した。
私も会釈する。
「大和さん」
「はい」
「バトミントンで勝負してくれたら、許します」
「本当ですか?」
パッと明るくなる表情。
やっぱり伊之助さんに似ている。
可愛い。
まあ、伊之助さんの方が可愛いけれど。
バトミントンの試合を何度かして、朝食。
パンに、ソーセージ、スクランブルエッグ。
運動後だし、外だし、天気も良いし。
「こんなに美味しい朝ごはん、初めてかもしれないです」
あまりの感動に何度も「美味しい」を繰り返した。
伊之助さんはソーセージを食べていない。
スクランブルエッグは食べている。
「兄貴、スクランブルエッグは平気だったっけ?あ...」
大和さんはチラッと私を見た。
「あー、和美さんから聞いて、知ってます。魚とかお肉が苦手な事」
大和さんが満足そうな顔をする。
「そうですか。それじゃあもうなんでも知ってる仲ですね」
伊之助さんと目が合う。
大和さんがいると、伊之助さんがクールキャラに見えるくらいだ。
「あれ?これ何?」
大和さんは、風でめくられたノートを見つけて言った。
私は焦る。
それは伊之助さんの作曲、作詞ノートで私が昨日借りたものだ。
昨日私が伊之助さんに教えた曲の、コードと歌詞が書かれている。
新たに作った曲も。
大和さんはページをどんどんめくる。
「あー、兄貴の曲?ちゃんと聞かせてもらった事ないんだよな~」
「あっ、大和さん!」
「はい?」
「私、温泉に行きたいんですけど、連れて行ってもらえませんかね?」
「いいですよ!今行きますか?」
大和さんは自然にノートを閉じ、元の場所に戻した。
曲を見られずに安心していると、伊之助さんが心配そうに私を見た。
私はなぜ隠したいのだろう。
伊之助さんは私と一緒に進みたいと言ってくれた。
私の夢に賛同してくれた。
何を恐れているのだろう。
自己満足で曲を作っていた伊之助さんも変わろうとしている。
こういうところから、変えていかないと。
「ちょっと待って下さい、大和さん」
「はい」
私はギターを持ってきて、伊之助さんの方を見る。
「昨日教えた曲って、もうできそうですか?」
伊之助さんに初めて聞かれたあの日の曲。
伊之助さんが褒めてくれた曲。
「出来ます!」
「大和さん、ちょっとだけお客さんになってもらってもいいですか?」
「お客さん?はい、もちろんですよ」
伊之助さんと地面に座る。
横並び。
草が柔らかい。
私がギターでイントロを弾く。
伊之助さんはこちらを見てリズムをとる。
歌い出し。
二人で目を合わせタイミングを合わせる。
伊之助さんが歌い出した瞬間。
私の世界が変わった。
簡単に変わってしまった。
初めて伊之助さんの声を聞いた時もそうだった。
私はこの人に出会うために生まれてきた。
今まで見たことのない色に包まれていて、心が安らかで、隣で歌う伊之助さんを見ると泣いてしまいそうだ。
二人での始めての演奏。
目が合う度に恋しさが募った。
私はそれを分かりながらも、目を開ける事が出来なかった。
心地良い眠り。
テントでの睡眠は最高だった。
寝袋というのも初めてで、なんだかイモムシみたいだけど、自分がピッタリと収まってて良い気分だった。
「おはようございまーす!」
明るい声が聞こえる。
ゆっくりと目を開ける。
初めて見る景色で目覚めた。
テントの天井。
曖昧な頭の中が少しずつ整理されていく。
外から聞こえる声。
「なんで嘘ついたんだよ~」
伊之助さんの声だ。
「だって、兄貴と僕を兄弟って勘違いしてるみたいで嬉しくて!でも一つショックだったのが、僕の事、兄貴のお兄さんですか?って!結構、童顔だと思ってたのに...お姉さん怒ってました?」
「お姉さん?」
「あー、まあ、そういう呼び方をする流れがあって...あー、それよりお腹空いた~」
「にな絵さんが起きたら、食べよう」
「うん」
「そうだ、大和。これやらない?」
「おっいいねー!最高の休日だよー!」
何をするのだろう?
起きなきゃ...と思いながら、起きてすぐに伊之助さんの声を聞けた事が新鮮だったので、目を閉じ、今のシーンをもう一度リピートした。
これからは...伊之助さんと一緒にいる事が増える。
ついニヤけた。
スマホで自分の顔と髪を確認して、テントを出た。
二人はバトミントンをしていた。
先に気付いた大和さんが、飛んでくる羽根を無視してこっちに走って来た。
「お姉さんー!ごめんなさいー!」
深く頭を下げる。
「必要なら謝罪会見でも開きます。許して下さい。つい、嬉しくて~」
伊之助さんがこっちを見て軽く会釈した。
私も会釈する。
「大和さん」
「はい」
「バトミントンで勝負してくれたら、許します」
「本当ですか?」
パッと明るくなる表情。
やっぱり伊之助さんに似ている。
可愛い。
まあ、伊之助さんの方が可愛いけれど。
バトミントンの試合を何度かして、朝食。
パンに、ソーセージ、スクランブルエッグ。
運動後だし、外だし、天気も良いし。
「こんなに美味しい朝ごはん、初めてかもしれないです」
あまりの感動に何度も「美味しい」を繰り返した。
伊之助さんはソーセージを食べていない。
スクランブルエッグは食べている。
「兄貴、スクランブルエッグは平気だったっけ?あ...」
大和さんはチラッと私を見た。
「あー、和美さんから聞いて、知ってます。魚とかお肉が苦手な事」
大和さんが満足そうな顔をする。
「そうですか。それじゃあもうなんでも知ってる仲ですね」
伊之助さんと目が合う。
大和さんがいると、伊之助さんがクールキャラに見えるくらいだ。
「あれ?これ何?」
大和さんは、風でめくられたノートを見つけて言った。
私は焦る。
それは伊之助さんの作曲、作詞ノートで私が昨日借りたものだ。
昨日私が伊之助さんに教えた曲の、コードと歌詞が書かれている。
新たに作った曲も。
大和さんはページをどんどんめくる。
「あー、兄貴の曲?ちゃんと聞かせてもらった事ないんだよな~」
「あっ、大和さん!」
「はい?」
「私、温泉に行きたいんですけど、連れて行ってもらえませんかね?」
「いいですよ!今行きますか?」
大和さんは自然にノートを閉じ、元の場所に戻した。
曲を見られずに安心していると、伊之助さんが心配そうに私を見た。
私はなぜ隠したいのだろう。
伊之助さんは私と一緒に進みたいと言ってくれた。
私の夢に賛同してくれた。
何を恐れているのだろう。
自己満足で曲を作っていた伊之助さんも変わろうとしている。
こういうところから、変えていかないと。
「ちょっと待って下さい、大和さん」
「はい」
私はギターを持ってきて、伊之助さんの方を見る。
「昨日教えた曲って、もうできそうですか?」
伊之助さんに初めて聞かれたあの日の曲。
伊之助さんが褒めてくれた曲。
「出来ます!」
「大和さん、ちょっとだけお客さんになってもらってもいいですか?」
「お客さん?はい、もちろんですよ」
伊之助さんと地面に座る。
横並び。
草が柔らかい。
私がギターでイントロを弾く。
伊之助さんはこちらを見てリズムをとる。
歌い出し。
二人で目を合わせタイミングを合わせる。
伊之助さんが歌い出した瞬間。
私の世界が変わった。
簡単に変わってしまった。
初めて伊之助さんの声を聞いた時もそうだった。
私はこの人に出会うために生まれてきた。
今まで見たことのない色に包まれていて、心が安らかで、隣で歌う伊之助さんを見ると泣いてしまいそうだ。
二人での始めての演奏。
目が合う度に恋しさが募った。
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