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好きなのはやっぱり
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目覚ましの音が聴こえる。
私の一番好きな歌手、fubeの曲が目覚ましだ。
彼を好きになったのは、中学一年の冬の日。
深夜に布団に潜り、聴いていたラジオで流れた歌に涙が溢れた。
その頃、飼っていた犬を亡くしたばかりで、人生で一番落ち込んでいた。
他の全てを失ったとしても、いなくなって欲しくない程の存在が消えた。
毎晩泣いて、どうしたらいいのか分からなくなっていた時。
声を変化させたアイドルの歌や違いが分からないバンドの歌が延々と流れていた。
そこに突然、悲しみが和らぐ声が私の中に入ってきた。
さり気なく隣にいてくれる優しさや温かさが愛犬に似ていたのかもしれないと、ずっと後になってから思う。
その日から、優しく語るように歌うその声の主の虜になった。
私に夢を与えてくれたのは彼だった。
幼い頃からドラマが好きだった私は、ドラマの中に行きたいと思い続けていた。
でも、fubeを知ってからはドラマを盛り上げる、歌を歌いたいと思った。
fubeがドラマや映画の主題歌や挿入歌を担当するようになっていったからだ。
ドラマの中に入るという夢は変わらず、当たり前のように持ち続けていた。
そこから私は実家から離れた所にあった、ヴォーカルとギターを習える所に通う事になる。
ただそこに辿り着くまでに、様々な困難があった。
一つ目は、両親に相談しなければならないという事だ。
両親の愛情はいつも感じていて、とても仲の良い家族だった。
4つ下の妹とも仲が良く、家庭環境で悩みを抱えた事はほとんどない。
それがまた伝える事を難しくさせた。
笑顔溢れる家庭で、ふざけてばかりいた私に、真面目な話は無縁だった。
歌手を目指すという事自体知られるのが恥ずかしくて仕方がないのだ。
決意してから半年後にようやく、私は満面の笑みで、真面目な空気にならないように両親にお願いした。
下手したら、冗談だと勘違いされるほどのテンションで。
案外あっさり承諾された時には、もっと早く言えば良かったと思ったけれど、半年は早い方だと知る事になるのはまだまだ後だ。
二つ目の困難は、家族以外には知られたくないという事だった。
学校では目立つ訳でも地味な訳でもなく、中間の位置にいたと自分では思っている。
中学二年生のクラス替えの日、自己紹介が行われた。
あるイケイケっぽい男子が教壇に立ち
「僕はバンドをやっています。今度是非ライブに来て下さい。世界のロックを変えます」
と言った。
不自然にセットされた髪を今でも思い出せる。
自身に満ちた表情も。
少し下げたズボンも。
そんなこと言える勇気に驚き、私はその男子を避けるようになった。
自分の気持ちを表に出し過ぎだと思った。
叶わなかったら恥ずかしいのにな、とも思った。
その日に私は不言実行を座右の銘にしようと決めたのだ。
とにかく誰にも知られず、誰もが驚くような私の世界をこっそりと作り上げる。
という事で、人に会わないように離れた場所の音楽教室に通う事になった。
再びfubeの曲が耳に届く。
この曲が流れたという事は...
時計を見ると、最初の目覚ましから30分経っていた。
「やばっ」
急いで身支度をする。
インスタントの味噌汁だけは飲み、部屋を出た。
毎日走ってるなとバス停に向かいながら思う。
私と同じようにいつも走っているおばさんと今日も同じタイミングでバス停に着く。
おばさんは髪がくしゃっとなっていた。
おばさんの隣の女子高生は鏡を見て、髪をとかしていた。
もう十分ですよ~、ツヤツヤですよ~、そんな誰も見てないですよ~とかしすぎですよ~
と、朝から心の中で悪態をついてしまう。
心の中。
心は自由だ。
現在24歳の私は、フリーターだ。
スーパーでレジ打ちをしている。
ロッカーで着替える時にいつも心で言う。
「今日も嫌な事が起きませんように。誰にも怒られませんように。事件が起きませんように。平穏でありますように」
感情を一定にしていたい。
深入りしたくない。
私の世界を壊さないでほしい。
その代わり私も誰の世界も壊さない。
少しでも機敏に動き、不快な印象を与えないように笑顔を忘れず。
私の願いはシンプルだが、これほど叶えるのが難しい事はないと分かっている。
休憩時間はスマホでfubeの曲を聴く。
またはfubeのラジオを聴く。
でもイヤホンは片方だけ。
誰かしらに挨拶される事が多いからだ。
休憩時間にfubeの曲を聞かないと、恐らく私は頑張れない。
私以外には音楽を聴いたりしている人がいなくて、印象が悪い気がする。
だから、曲を聴くのをやめる事も検討したが、やめる事は不可能だと分かった。
休憩時間にfubeは必須。
それに、後に入ってきた大学生の女の子が、休憩時間に動画を見て一人で笑ったりしていたものだから、私はノーマル、悪い印象ではないはずと安心した。
おばさんのパート集団がいない限り、静かな休憩室。
アンパンと塩パンを食べた私は、パンの袋の音をたてないよう細心の注意を払う。
迷惑をかけないように。
と思ったら、ここに勤めて相当長いらしい鮮魚コーナーのおじいさんがカップラーメンを恐ろしい程の音をたててすすった。
fubeの歌に集中出来ない。
音に一貫性がないから余計気になる。
今日だけは両耳イヤホンを許可する事にする。
私は迷惑をかけない人になるぞ。
帰りのバスで少しだけ気持ちが落ち着く。
あとは無事に家に帰るだけだ。
何のドラマを観ようと考える。
今は4つのドラマを並行して観ていて、昨日観ていたドラマはかなり続きが気になるけど、残り3話で終わるドラマを観てしまおうか、と幸せな悩みについて考える。
スマホを見ると、fubeのブログが更新されていた。
久しぶりに顔写真付きだった。
fubeはイケメンなのである。
初めて顔を見た時は胸がギュッとなった。
綺麗な目に綺麗な鼻筋、笑顔がとにかく素敵で、なんと、エクボもある。
絶対にこういう人と結婚したい。
私の座席の前に座る30歳くらいの男の人は、スマホゲームに夢中だ。
そんな事じゃダメでしょ、ともう一度fubeの写真を見た。
fubeの趣味は読書だ。
完璧すぎる。
ちなみに私は一度も異性と付き合った事がない。
運命の人がいると、本当に信じている。
それが恋愛経験ゼロの特徴なのかもしれない。
まあ、そういう事は考えないようにしている。
ドラマの世界に行けると信じていたいから。
私の一番好きな歌手、fubeの曲が目覚ましだ。
彼を好きになったのは、中学一年の冬の日。
深夜に布団に潜り、聴いていたラジオで流れた歌に涙が溢れた。
その頃、飼っていた犬を亡くしたばかりで、人生で一番落ち込んでいた。
他の全てを失ったとしても、いなくなって欲しくない程の存在が消えた。
毎晩泣いて、どうしたらいいのか分からなくなっていた時。
声を変化させたアイドルの歌や違いが分からないバンドの歌が延々と流れていた。
そこに突然、悲しみが和らぐ声が私の中に入ってきた。
さり気なく隣にいてくれる優しさや温かさが愛犬に似ていたのかもしれないと、ずっと後になってから思う。
その日から、優しく語るように歌うその声の主の虜になった。
私に夢を与えてくれたのは彼だった。
幼い頃からドラマが好きだった私は、ドラマの中に行きたいと思い続けていた。
でも、fubeを知ってからはドラマを盛り上げる、歌を歌いたいと思った。
fubeがドラマや映画の主題歌や挿入歌を担当するようになっていったからだ。
ドラマの中に入るという夢は変わらず、当たり前のように持ち続けていた。
そこから私は実家から離れた所にあった、ヴォーカルとギターを習える所に通う事になる。
ただそこに辿り着くまでに、様々な困難があった。
一つ目は、両親に相談しなければならないという事だ。
両親の愛情はいつも感じていて、とても仲の良い家族だった。
4つ下の妹とも仲が良く、家庭環境で悩みを抱えた事はほとんどない。
それがまた伝える事を難しくさせた。
笑顔溢れる家庭で、ふざけてばかりいた私に、真面目な話は無縁だった。
歌手を目指すという事自体知られるのが恥ずかしくて仕方がないのだ。
決意してから半年後にようやく、私は満面の笑みで、真面目な空気にならないように両親にお願いした。
下手したら、冗談だと勘違いされるほどのテンションで。
案外あっさり承諾された時には、もっと早く言えば良かったと思ったけれど、半年は早い方だと知る事になるのはまだまだ後だ。
二つ目の困難は、家族以外には知られたくないという事だった。
学校では目立つ訳でも地味な訳でもなく、中間の位置にいたと自分では思っている。
中学二年生のクラス替えの日、自己紹介が行われた。
あるイケイケっぽい男子が教壇に立ち
「僕はバンドをやっています。今度是非ライブに来て下さい。世界のロックを変えます」
と言った。
不自然にセットされた髪を今でも思い出せる。
自身に満ちた表情も。
少し下げたズボンも。
そんなこと言える勇気に驚き、私はその男子を避けるようになった。
自分の気持ちを表に出し過ぎだと思った。
叶わなかったら恥ずかしいのにな、とも思った。
その日に私は不言実行を座右の銘にしようと決めたのだ。
とにかく誰にも知られず、誰もが驚くような私の世界をこっそりと作り上げる。
という事で、人に会わないように離れた場所の音楽教室に通う事になった。
再びfubeの曲が耳に届く。
この曲が流れたという事は...
時計を見ると、最初の目覚ましから30分経っていた。
「やばっ」
急いで身支度をする。
インスタントの味噌汁だけは飲み、部屋を出た。
毎日走ってるなとバス停に向かいながら思う。
私と同じようにいつも走っているおばさんと今日も同じタイミングでバス停に着く。
おばさんは髪がくしゃっとなっていた。
おばさんの隣の女子高生は鏡を見て、髪をとかしていた。
もう十分ですよ~、ツヤツヤですよ~、そんな誰も見てないですよ~とかしすぎですよ~
と、朝から心の中で悪態をついてしまう。
心の中。
心は自由だ。
現在24歳の私は、フリーターだ。
スーパーでレジ打ちをしている。
ロッカーで着替える時にいつも心で言う。
「今日も嫌な事が起きませんように。誰にも怒られませんように。事件が起きませんように。平穏でありますように」
感情を一定にしていたい。
深入りしたくない。
私の世界を壊さないでほしい。
その代わり私も誰の世界も壊さない。
少しでも機敏に動き、不快な印象を与えないように笑顔を忘れず。
私の願いはシンプルだが、これほど叶えるのが難しい事はないと分かっている。
休憩時間はスマホでfubeの曲を聴く。
またはfubeのラジオを聴く。
でもイヤホンは片方だけ。
誰かしらに挨拶される事が多いからだ。
休憩時間にfubeの曲を聞かないと、恐らく私は頑張れない。
私以外には音楽を聴いたりしている人がいなくて、印象が悪い気がする。
だから、曲を聴くのをやめる事も検討したが、やめる事は不可能だと分かった。
休憩時間にfubeは必須。
それに、後に入ってきた大学生の女の子が、休憩時間に動画を見て一人で笑ったりしていたものだから、私はノーマル、悪い印象ではないはずと安心した。
おばさんのパート集団がいない限り、静かな休憩室。
アンパンと塩パンを食べた私は、パンの袋の音をたてないよう細心の注意を払う。
迷惑をかけないように。
と思ったら、ここに勤めて相当長いらしい鮮魚コーナーのおじいさんがカップラーメンを恐ろしい程の音をたててすすった。
fubeの歌に集中出来ない。
音に一貫性がないから余計気になる。
今日だけは両耳イヤホンを許可する事にする。
私は迷惑をかけない人になるぞ。
帰りのバスで少しだけ気持ちが落ち着く。
あとは無事に家に帰るだけだ。
何のドラマを観ようと考える。
今は4つのドラマを並行して観ていて、昨日観ていたドラマはかなり続きが気になるけど、残り3話で終わるドラマを観てしまおうか、と幸せな悩みについて考える。
スマホを見ると、fubeのブログが更新されていた。
久しぶりに顔写真付きだった。
fubeはイケメンなのである。
初めて顔を見た時は胸がギュッとなった。
綺麗な目に綺麗な鼻筋、笑顔がとにかく素敵で、なんと、エクボもある。
絶対にこういう人と結婚したい。
私の座席の前に座る30歳くらいの男の人は、スマホゲームに夢中だ。
そんな事じゃダメでしょ、ともう一度fubeの写真を見た。
fubeの趣味は読書だ。
完璧すぎる。
ちなみに私は一度も異性と付き合った事がない。
運命の人がいると、本当に信じている。
それが恋愛経験ゼロの特徴なのかもしれない。
まあ、そういう事は考えないようにしている。
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