温度

さいこ

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未来

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    理人の体温が心地よくて具合が悪かった割にはよく眠れた

    今回は有給を取っていて本当に良かった

    お腹の辺りの気持ち悪さが度々起こるのだから内科を受診すればいいだろうと、近くの大きな病院を予約した


    しかし、診察の前に記入する問診票を見て私は気づいたことがあった…

    一応内科の先生に診てもらい、そこで念の為気づいたことを話してみると、じゃあこの後そっちの科にも診てもらったほうがいいという流れになった

    「ありがとうございました」


    内科が終わり待合室の理人に報告をする

    「この後、別の先生にも診てもらう…」

    「なにか疑いがあるの?」

    理人が青い顔で私を見ている…
    なにかの疑いと言えばそうとも言えるが…


    「次は産婦人科…」

    「…えっ……ええっ?慶さん…!」

    「しぃーーーーーーっっ…!!」

    ここは病院です、お静かに…


    「悪いものがあって体調不良を起こすのかもしれないし、色々診てもらわないと分からないから」

     理人にも自分にも言い聞かせるように言葉に出してそう言った


    産婦人科の診察に臨む際、理人にも同席してもらった


    「おめでとうございます、妊娠8週目ですね」


    あぁなるほど…

    ここしばらく生理が遅いとは思っていたけど、イベント目白押しで心的ストレスの関係かなと決めつけていた…
    
    それでも問診票の女性のみが記入する項目を見た時、もしかしてコレなんじゃないのかと思ったのも確かだ
  

    初めての妊娠ということで今後の流れや注意点の説明を受け帰ることになった

    理人はあまり反応が無かった
    内科の次に産婦人科だと言った時は確かに歓びの声をあげていなかったか?

    それが静かに、ただ運転をして家に戻った


    部屋に戻ってソファーに座る

    「不調の原因が分かってスッキリした~」

    私は悪い病気でないと分かって清々しい気持ちでいた

    ただ理人を見れば浮かない顔をしていて、喜んでくれないのかと悲しくなった

    
    「理人、乗り気じゃないの?」

    理人の何とも言えない表情を眺めているのがしんどくなった私は、彼の気持ちがどちらなのかを確認したくなる


    「…慶さんはどうしたい?」

    …は?
    そんな言い方ありますか?
 
    自分は微妙な顔をしているくせに
    私の判断に委ねるということ??


    「私は、嬉しいよ…」

    これは男性である理人には分からないだろうが
    病院で「おめでとうございます」と言われたとき魂が震えるほど嬉しかったよ

 そう思えたのは今私の隣に居るのが理人だからだ
 相手と状況が違ったら、嬉しいと思えない現実だってあったはずだ


    「慶さんはママになりたい?」

    どういう気持ちでそんなことを聞くんだろう?
    理人はもっと手放しで泣いて喜んでくれるものだと思っていたのに…

    私はママになりたい
    理人と一緒に産まれてくる子と家族になりたい
    しかし…

    「理人がどう思ってるのか聞かないと分からない」

    と私は嘘をついた

    仮に理人が子供は要らないと言ったとしても私は独りで育てるだろう

    だから理人がどう考えているのかをちゃんと聞いておかなきゃいけないと思った


    「俺は、慶さんが色々我慢して楽しくなくなるのが…嫌だ…」

    「…え?我慢って…?」


    理人曰く、私の生活が変わってしまうようなことを私ひとりに押し付けてもいいものか、という点が気になっているようだった

    妊娠による体調不良、煙草やアルコールを摂取出来なくなるといった制限がかかること

    さらに私が好きだと言っていた仕事に関しても休職もしくは退職となる未来を考えると、私のデメリットが多過ぎてどう話していいか分からなくなったと…


    まぁ、こういうところが理人だと思う

    浮かない顔して頭フル回転してたんだろうなぁ、それで手放しで「やったー!」って言えなかったんだ


    「…そんなの理人がフォローするでしょ?」

    私からしたらそんなことより
    理人の気持ちの方が大事だ

    「理人は…パパになりたくない?」

    理人は私のお腹に抱きついて顔をくっ付けた

    「なりたいよ…慶さんとベイビーにデロデロなパパになりたい…」

    めちゃめちゃイメージ仕上がってるね…
    絵が浮かぶわ


    「じゃあ、まずはプロポーズしてよね」

    「………!!!!!」

    ガバッと顔を上げた理人は、霧が晴れたようなスッキリした表情で「指輪を選ばなきゃ」と言った


    私と理人の未来を決めた日

    私たちに授けられた小さな命がそれをもたらしてくれたのだった
 




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