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さいこ

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秘密の通路

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 さて、今週は例の緊張が伴うイベントがある
 
 それまでは普段通り仕事に専念する、それが一番落ち着けるから

 
 会社では百海に恋心の話はしていない
 優からも百海とどうこうといった話も無いし、私が変に気にしても仕方がないことだ

 お昼どき、百海と近所の洋食屋さんのランチに来ていた

 「今週は木曜に休むから頼むね」
 
 と、私が週の間に休むことを伝えた
 百海は「任してくださいよ、ニヤリ」と言った
 
 実質1人でも百海は仕事を回せると思う



 そうしてイベントの日はすぐにやってきた…



 仕事終わりに理人と合流して、タクシーで会場へ向かった
 湾岸エリアに立つ大きなホテルの前に到着すると緊張で視界がチカチカした

 お母様からの連絡に従って、そのフロアにある控室を目指す
 
 エレベーターを降りそろそろと歩いていると、撮影会の時にメイクしてくださった泉さんの姿を見つけた

 「あの、お疲れ様です…」

 近寄って声をかけた
 

 「あ!慶さん、どうもどうも…」

 と、覚えていてくださったようで一安心である
 余裕のある時間に来てくれて良かった~!と、お姉さんがさっそく控室に連行しようとする

 「あ、ちょっと!俺はどこで…?」

 と理人が訪ねると、私の控屋の隣だと教えてくれた

 「前に理人さんを担当したたきさんが来てますので…」
 
 ということで私たちは一旦別々にされた
 

 
 私は前回同様、メイクとヘアメイクをした後、着替えて会場へ移動という流れのようだった
 
 「あの、泉さんは参加されるんです?」

 と、ものすごく初心者な質問をした

 「ええ、慶さんのお色直しとして会場内に居ますのでお声がけくださいね」

 …え?私の担当としてずっといてくださるということ?!
 それは申し訳ないのではないかと恐縮した

 あ、でもドレスの回収までが仕事なのかな?…と1人納得する


 ヘアメイクに差し掛かったとき、泉さんが思い出したように

 「あ!そういえば、こちらの奥にせまいですけどベランダがあるんです」

 と言った
 
 「お煙草どうぞ」と…

 申し訳ねぇ…と思いながらも抗えなかった

 「1本だけ失礼します」


 その、奥のベランダに向かったときだった
 壁沿いに通路があることに気が付いた

 というよりも、パーテーションで大きな空間を仕切っているのだということが分かった
 方向で言えば、隣の理人の部屋に繋がっていそうだった

 私は音を立てないように、そーっとそちらの様子を伺った…
    
  
 男性の話し声が聞こえる
 声の方へ移動すると、パーテーションの隙間から椅子に座る理人の後ろ姿が見えた
   
 手を伸ばせば届きそうな位置に理人が居る
 私は隙間から腕を伸ばし、理人のベルト辺りをトントン、と触る

 「……?!!!」

 勢いよく振り返りこちらを確認する理人
 ちょっとビックリさせちゃったかも…ww


 パーテーションの隙間に居た私と目が合った 
 
 「…ちょっとトイレ行くわ」

 と立ち上がった理人がパーテーションの裏側に来る

 「…なんてとこから現れんのよ!(小声)」

 と、ヘアメイクが済んで男前になっている理人が言った


 「ほら、あそこのベランダで煙草吸おうと思ったら秘密の通路見つけちゃってさ…」

 と、壁沿いの通路を説明した
 
 「慶さんはメイクしちゃったのかぁ…」

 と残念そうな声の理人、その理由は分かっている
 私も今は理人をチャージしたい気持ちだった


 「メイクは直してもらうから…理人が私のものだって、ちゃんと教えて…」

 私は慣れない場に緊張していて
 理人の手に触れているだけで安心できた

 「もう~、そうやって煽るのやめてよ…えっち」

 そう言って私の唇を開かせる理人
 ドレスに負けないようにメイクしてもらった綺麗な発色の真っ赤なリップが2人の唇に滲んだ

 「…んっ」

 人の目を盗んでなにやってんだ、と分かってはいても…
 そのうち理人の手が私の下腹部に触れた

 
 「ちょっとだけだから…」
 
 「ダメダメダメだめだめ!!!」

 私は必死に理人のイタズラな両手を押さえた

 「…じゃあコレどうするの…?」

 理人は自分の勃起したモノを私の身体に押し付ける
 

 どうするのって…
 私は女性なので対処法は分かりませんよ… 

 「慶さん、早く帰ってセックスしたい」

 …まだ始まってもいないうちから何てことを言うんだ!私だって本音は今すぐ逃げ出したいです



 てゆーか今思い出したんだけど、完全に泉さんを待たせてた…

 

 私は発情した理人を置いて、慌てて部屋へと戻る
 
 「すいません!ちょっとのんびり煙草休憩させていただいて…」

 言い訳に必死な私の顔を見て泉さんがニヤッとした気がした

 「じゃあヘアメだけ終わらせましょ!着替えは直前でいいので」

 そう泉さんに促され鏡のほうを向いて座り直す
 …案の定、私の赤いリップは滲んではみ出してホラーメイクのようになっていた
 これを笑わずに堪えてくれたんだ、泉さん…

 「本当にお手を煩わせて申し訳ありません…(震え)」

 もう、どう謝罪すればいいのかとパニックになった


 そのとき


 「てめぇはハロウィンにでも呼ばれてんのかぁ?!」

 という男性の低い怒鳴り声が聞こえてきた

 「あ~、あれ瀧さんですね…」

 理人さんもメイク直しでしょうから…という泉さん
 理人も今ホラーメイクを見られちゃったんだね…

 
 
 もう…
 2人揃ってバカップルだってメイクさん方には言いふらされるんだろうな…
 
 



 
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