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明日の夜
しおりを挟むあのチャペルでの夢のような撮影会から、普通の社会人に戻るのは早かった…
撮影の翌日には筋肉痛が襲ってきた
確かに普段しないような体勢をキープしたりなど、けっこう被写体には体力も必要なのだということを知った
百海の件での続報はまだ無かった
そんな中、優から「明日は休みだから姉ちゃんの仕事が終わったら時間取って」というメッセージが来た
前に変な探りを入れたせいだろう
なんと言い逃れようかと考えながら翌日を迎えた
仕事終わりの時間にエマちゃんのカフェで待ち合わせをした
私が店に入ると、奥の席にピンクの髪の毛が見えた
ラテを買って隣に座る
「お疲れ~」
優は火曜日と、それにくっ付けて月曜か水曜で連休を取ったりしている
「…で、今日は何の用なの?」
私はしらばっくれてそう言った
「こないださぁ変なメッセージ寄越したじゃん、あれなんなの?」
あれねぇ…
なぁ~んか身近な人と重なっちゃってね~
「なんなの?って、ただの勘だけど?」
堂々としっかりと言い切ることが大切だ←
「なぁに?けっこう忙しいとか言ってる割に、女の子と遊ぶ余裕あるの?」
話の方向を強引に別へ持っていく
「いやぁ~遊ぶ時間は無い、けど…」
はい、私への追及終わり
優は自分のことを話し始めた
「俺って普段は仕事終わったら疲れてまっすぐ帰るのね?」
「え?そうなの??」
若い時って寝る時間を削っても遊んだ記憶があるけど、今の子は違うのかしら?
「だから夜中にゲームしててさ…」
あ…もう答え合わせキターーーーー!
ゲームというワードが出ちゃったら、もうでしょ!!
もうちょっと時間をかけてじわじわと確信したかったよ!
「で、そのゲーム仲間でむむむちゃんって子が居て…」
…むむむちゃん??
話を聞けば、名前の表示が「MMM」なので勝手に「むむむ」と読んでいるそうだ
私はその読み方の正解を知っています…(ももみ)
「…それで?今度会おうって?」
「そう、オフ会のノリでさ!イツメンだし」
なるほどねぇ~、でもイツメンの割には2人っきりなんですねぇ?仲間はもっと居るはずでは?
まぁ優にそういう気があるのかは謎だけれど、百海の言ってた相手で間違いないことは分かった
「…かわいい子だといいね」
なんとなくそう言葉にした
「…あ?見た目のハナシ?俺中身しか見てねぇから」
は?!
今とんでもないイケメン通らなかった??
「え、可愛くなくてもいいの?」
一応ね?一応確認だけさせて??
「可愛くても中身がダメなら一緒に居らんないでしょ?見た目はあんま関係ない!」
…今すぐ父と母に報告したくなった
勢いで言ってるような感じでは無かったし…優って意外とナイスガイなのでは?!!
ーーーーーーーーーー
…その週の金曜日
百海がまたランチに公園を指定してきた…
2人でサンドイッチを購入し、鳩の襲撃に怯えながらのベンチに座る
「慶さんあたし、明日の夜行ってくるんで…」
ほう…土曜の夜にデートですか…
果たして飲みだけでおさまるんでしょうかねぇ?と、私の中の下世話なおじさんが顔を出す
「あれから色々考えたんだけどなにが正解か分からないし、逆にもう考えるのがめんどいなって思って」
うん、考えちゃうよね、わかるよ
「だから普段のままで勝負してこようって決めた!」
百海は素敵な子だよ本当に
いや、私がちょっと贔屓目で見てしまっている所はあると思うけど
「こないだ、酒はそんなに飲まない方が…って言ってたじゃん?」
最初に百海が気にしていたことだ
「あ~、まぁどうするのがいいかな?って思ってたから」
「きっと大丈夫だから、楽しかったらどんどん飲みな!」
お相手の方はきっと男性なのにすっごいお喋りで、百海と趣味の話になったら止まらないだろう
百海は持ち前の回転の速さで、その人のとりとめのない話をうまいこと処理してくれるはずで…
互いにそんな会話のテンポが楽しくなって、お酒もすすむんじゃないかな、と思った
「…なんでそんなこと分かるんすか…?」
私が無責任なことを言っていると思ったのか、ものすごく疑いの目を向ける百海
「だって、私だったら相手に気を使われていたら見てて分かるもの」
これは本当だ、なにかを気にしているときと言うのは楽しめない、それは相手にも伝わってしまう
逆になにも気にせず楽しめているときは、相手もそうだということ
仮にも百海が気にかけている男性は不肖の弟…
百海に春が来て欲しい気持ちと、その相手があのバカな子で大丈夫なのかという気持ちとで少々複雑な私…
…明日の夜なぁ…(白目)
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