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空腹
しおりを挟む…死ぬ思いで黒のドレスの撮影を終了したところで
すぐさま次のお色直しに突入した…
赤のドレスはスレンダーラインで、背中が気持ち良く開いていた
光沢のある綺麗な生地にキラキラのストーンが散りばめられていて、こちらも高そうな…
ブラックでボリュームのあるファーのストールを肩にかけ、今度は自分で裾を持ち上げ移動する
チャペルに入ると、先ほどとは違う壁を背景にした場所で装飾が進んでいた
「け~いさんっ」
と、私の後ろから理人がやってきた
化粧室へ行っていたみたいだった
理人の衣装は、襟がブラックの赤のジャケットに黒のボトムという格好
そのジャケットにはドレスと同じキラキラのストーンがあしらわれていた
先ほど緩く巻かれていた髪は、今度は後ろでまとめられていた
そして中に着ている黒のシャツはへその辺りまでボタンが無く開いている…お母様のセンス…!!!
「慶さんごめんねぇ、ちょっと大変でしょ…?」
理人がまるでこの手の業界人のように言う
…いや、お母様が業界の方なんだから裏側を知ってはいるか
「でもまぁ、初体験だから記念になるよ」
そう言いながら思い出したが、過去に成人式の前撮りがあったなぁ…
まぁ今回のはそれとは比べ物にならない規模の撮影だから初体験で間違いはない
綺麗にメイクをしてもらって、一体どのように写真に写っているだろう
お母様のドレスが台無しにならない事を祈るばかりだ
「じゃあお願いしま~す!!」
カメラさんの助手の方に呼ばれ、立ち位置に着く
こうして2着目の撮影、そして最後はウェディングドレスかと思うような
理人も私も真っ白な衣装を着て最後の撮影となった
朝9:00に現地に入り、3着を撮影するだけで16:00になっていた
私たちはそれで終わりだけれど、先に準備に入っていた方たちはこの後撤収作業がある
お母様も大事なドレスたちを連れて帰らなければいけないし、このために1日立ち会っていただいて本当に大変なお仕事なのだと思い知った
「これでパーティーの日程が出せるから、また近くなったらね」
と言うお母様に、早く帰りなさい!と背中を押され車に乗り込んだ
「お疲れ~、腹減ったぁぁあああ!」
と車のドアを閉めるなり空腹の雄叫びをあげる理人、まずはご飯を食べようと車を走らせる
私は緊張で水分を摂るのがやっとだったというのに…
しかし私のいた控え室にはちょっとづつ口に入れられそうな物が用意してあったけど?
「なんかそういうの、ちょっぴりは食べたけど水もがぶ飲みするなって言われてさぁ」
どうやら理人のメイクを担当してくれた男性の方が、お母様から厳しく言われていたとのことで
「腹が出ては衣装の邪魔になる」から、終わるまで飯は食わすなという方針だったようだ…プロの現場は過酷だ
普段はお腹が減ったら、お腹いっぱいまで食べている大型犬にはキツかったようだ
スタジオと言う特殊空間から出て、フワフワした気持ちが落ち着いてくると私もようやくお腹が鳴った
帰りの道中に見つけた、お肉料理がメインのレストランに入り
2人で胃が痛くなるほどお肉を食べた
私はここの喫煙スペースへ来てやっと煙草を吸えた…
ーーーーーーーーーー
後日、撮影したもののデータを貰ったので確認した
「うわぁ…慶さんガチモデルじゃん!」
理人はそう言ったが、自分で自分がどんな顔をしているのかなんて恥ずかしくて見られたものじゃ無い
それに対して理人は普通にモデルかと思うほど自然な顔で写っていた…写真ってすご!!
まさにSNSとかでバズりそうな「いい男」の空気が出ていた
フォルダの写真を見ていると
「ん?これなんだ…?」
と理人がなにかを見つけた
写真の最後にお手紙のような形でお母様からのメッセージが入っていた
「先日はお疲れさまでした。どのドレスも慶さんに似合っていて着てもらえて嬉しかったので、この撮影分は宣材で使わせてもらうね!」
…とのことだった
「慶さん…知らないところで知らない人たちに晒されるんだ…」
と不穏な言い方をする理人
だってそれは、お母様のデザインしたドレスの写真でもあるんだからこちらからNGなどとは言えない
「いいよ、記念にもなったし一石二鳥じゃん」
それにあれだけの場所と人員を駆り出しての撮影でいくらかかったのだろう
それを考えれば回収するために何だって使ってもらえたらいいと思った
そのメッセージのあとにもうひとつメッセージが…
「そうそう、3着合わせてみて決めたんだけど
あなたたち赤の衣装でパーティーに参加しなさい、じゃあね」
作った方がそれがいいと言うならそれが正解だと思う
私は個人的に黒の「シースルー越しのアート」の写真を全部保存したけれど
普段着ないような赤のドレスは、こうして自分で写真を見ても胸が躍る
「やった!あの赤のドレスが一番えっち!!」
母からの指定に喜ぶ息子…w
まぁ、理人は正直なにを着てもセクシーだったよ
幸い写真ではこんな「えっちに喜ぶ大型犬」では無く「いい男」風だったし
こうしてなんとか、ひとつの山を越えたのだった
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