温度

ゴング

　




    ピピピピピピ…ピピピピピピ…

　アラームが鳴っている

　ピピピピピピ…ピピピピピピ…

　もう起きる時間…


　
　ハッとして起き上がった
私は昨日、理人と一緒にマスターの店に行ってそのまま寝てしまったんだ
　
　今からタクシーを捕まえて帰ったところで支度が間に合わない…今日は平日も平日、普通に木曜日だった

　
　そういえば…と思い、自分の着ている物を確認するが上着まできっちり着たまま寝ていたようだ

　脱がされていないことに少々ホッとした


　ベッドに理人の姿は無かった
どこに行ったのかとリビングのほうを確認しようとベッドを出た

　リビングにもキッチンにも理人の姿はなかった…


　私は勝手にバスルームに向かい、シャワーを浴びて置いてあったバスローブを借りた

　「…そうだ」
　
    ベランダの存在を思い出し煙草を持って向かった
　平日の朝から時間を気にせず吸う煙草は美味しいなぁ～…などとぼんやり考えていると、玄関の方から声が聞こえる

　「慶さ～ん、送ってく～？」

　ベランダから大声を出して返事をするのも面倒なので放っておいた


　少し待つと理人がベランダにたどり着いた

　「あれ？…のんびりしてて大丈夫なの？」

まぁ、そう思うよね

　「今日は風邪で休もうと思う」

　「あ～！大人がズルしてる～！！」

理人の反応は面白い
理人と居ると楽しいなぁ…と思った


　9：00頃を見計らい会社に体調不良の連絡を入れる

　「じゃあ明日も休んじゃいなさい、また来週ね」

とサラッと言われてしまった、社長は本当に素敵な人だ
私も普段はほとんど休まないから労ってくれたのだろう

　こうしてズル休みから4連休となった私


　「さっきエマのとこでご飯買ってきたよ」

と、部屋に戻り2人でご飯を食べた

　なんでも理人が自炊が出来ないので「お腹減った！」とテオさんの所に行くそうで、
　そうするとテオさんがあり合わせで何か用意してくれるとのこと…

　「…甘やかされ過ぎじゃない？」

この人たらしは私だけでなく、義理の兄までたらしてるのか…


　まぁそりゃそうかぁ…
最初はちょっと気の利く子くらいに見ていたけど

　付き合ってみると愛嬌はあるし、素直に物を言うし、甘えるのが上手だしで
多分女子のゲットなんてイージーなんだろうなぁ…(あと謎の財力)


　「お休みならさぁ、その間ここに居てよ」

また理人がなんか言ってらぁ…
そうやって可愛くお願いしたら誰も断らないんだろうね…　　　　　

　
　「ねぇ、理人が私に言う友達ってセフレって意味？」

可愛いお願いを破壊光線で粉砕してやった


　…別に言い争いをしたいわけでは無い
ただ、どういう意味で言ってるのかを知りたいだけだ

　「…は？そういう意味だと思ってるの？」


　以前、理人は「友達として付き合うこと」と
「セックスすること」は別でいいじゃん、と言った

　でも友人として付き合いながら、オプションでセックスがあるならもうそれは「セフレ」だと思う


　「…そんな言い方するなら俺もハッキリしたいことは色々あるよ…」


この理人の宣言により
頭の中でゴングの鳴り響く音が聞こえた気がした