純粋な下心

さいこ

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ピンクのハート

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 次のレッスン日

 「先日のお礼も兼ねて」と泉さんが自分の部屋に招待してくれた


 女性の部屋にあがるなんて久しぶり過ぎてテンションがあがる
 俺は少しの期待とともに、約束の時間に部屋を訪ねた

 オートロックを開けてもらい、彼女の部屋のフロアへ到着
 手前から部屋番号を見ながら歩く
 彼女の部屋は一番奥だった

 今日はどんな格好をしてるだろう…

 そうして色んなことを想像しながらベルを鳴らした


 「…いらっしゃい」

 ドアが開くとそう言って迎えてくれた
 
 肩口がガバガバに開いてる薄手のロンTにデニムのショーパン…
 やっぱ露出に抵抗が無いんだこの人

 そして同時に危機感も無い
 まぁ?男性とこうして2人になる機会が無いんだとすれば、そんな危機感は持つ必要は無いわけだけど…



 「今日は波多野さんにお礼がしたかったから、仕事を早上がりでご飯を用意しました」

 と言う泉さん
 確かに部屋の中はものすごく美味しい匂いが漂っていた

 「へぇ~、意外とお料理が出来るんだぁ」

 「ちょっと!酷いですよ…たいしたものは作れないけど…」


 彼女が「手を洗ってきて」というので洗面所へ移動した
 女性の掃除の仕方って男性と違うんだろうなぁ、と思うほど綺麗に管理された空間だった

 そうしてリビングに戻ると
 テーブルの上には体に優しそうな和食が並んでいた

 「波多野さ~ん、ちゃんとしたお酒は無いんだけどビールでもいいですか?」

 「もちろん、俺ビール好きですよ」

 俺がバーで働いてるから?気を使わせちゃったみたいだ

 バーテンダーって言うとお高く留まっているように見られる
 安酒なんか飲まないでしょ?と

 安い酒が全部マズイわけじゃないし、居酒屋だって行くし
 (一応酒のメニューを見て選ぶは選ぶけど…) 



 「先日は本当にありがとうございました!乾杯~」

 向かい合って座りご飯を食べた
 彼女の手料理はどれも優しい味がした

 「私、男性にあんなフォローされたの初めてで…恥ずかしかったけど感動しました…」

 「…子供だったら分かんないけど、俺ももうアラサーの男なんだから」

 なんでもない話をして一緒に過ごす


 手元の缶が空になったので

 「ビール、冷蔵庫?」

 と聞いた

 「あ、はい、下のほうに入ってます」

 俺はキッチンの冷蔵庫を漁る
 あったあった…と顔を上げると、冷蔵庫のドアに貼ってある小さなカレンダーが目に付いた

 
 今日の欄に「波多野さん」と名前が書いてあり、ピンクのペンでハート型に囲われていた

 
 …すっごい女子って感じがする、こういうの男はやらないから
 それにしても、これって俺のことめちゃくちゃ楽しみにしてくれてたってこと?

 ワンチャン…あるな…!

 俺はビールを2つ持ってテーブルに戻った

 
 
 「…ねぇ泉さん、俺のこと好き?」


 「…………!!!!!」


 フリーズした泉さんの顔が真っ赤になる
 しばらくすると、空いた食器を手に取りながら

 「男性に免疫が無いからって!そうやって面白がるのは悪趣味ですよ…!」

 と怒ってキッチンへ行ってしまった
 

 多分彼女は、自分の長年の悩みを打ち明けられた俺に、恋に似たなにかを感じているんだろう
 でもきっとそれは恋ではなく錯覚なんだろうなぁ…

 そんな気がした…

 
 
 「泉さん、ご馳走様でした」

 俺はそろそろ帰ります
 
 「あっ、ちょっと待って…」

 彼女はポールにかかっていた俺のジャケットを持ってきた
 わざわざクリーニングに出してくれたの?
 名前のタグとビニールが掛かっていた
 
 「本当に助けていただいて、ありがとう」

 そう恥ずかしそうにする彼女の顔に妙にムラムラした

 
 「じゃあ、お礼も兼ねてお別れのキスをください…」
 
 俺はそっと彼女の背中に腕を回す
 泉さんはしばらく下を向いていたが、顔を上げると俺の頬にキスをした


 …なるほどね
 なかなか考えたじゃん
 なにも唇にしろとは言ってないもんね?
 
 そんな抜け道を使われるとは意外だったが俺はそれを受け取った


 「…じゃあさん、また次回ね」

 「ちょっ…!」

 俺はドアを閉めてエレベーターに向かって歩いた


 自転車で走る帰り道、夜風が気持ち良かった

 名前のタグを付けたまんまで俺に返すなんて、ほんと抜けてるよなぁ泉さんは
 「岡村」さんなぁ~w

 俺はいい気分で部屋に帰った



 ーーー



 このところ泉さんが楽しみになっている
 

 なんだろう…
  
 俺は彼女が出来ると面倒なことが多いからと、女性とこうして触れ合うことから離れていたけど
 なんかちょっと楽しいかもしれない…と今は思っている…

 彼女は大人の女性だから自立している

 でもそれにしてはちょっと純粋過ぎるところと、ポヤポヤして抜けているところがある…


 そういうのが好みなのかな?俺は

 確かに気になるし一緒に居て癒されるカンジ?
 抜けてるとこが面白いっていうのもあるけど

 ただ「高身長でえろい体のお姉さん」だと思っていた最初とは、今は少し違った目で見ていた



 それでも彼女のトラウマ克服レッスンは1日おきにやってくる…



 今回のレッスンでは少々座学も取り入れようと考えた


 「えっちな漫画とか動画は見たことあるでしょ?」

 「えぇっ!…まぁ、無くは無いですけど」

 「じゃあ一般的な営みの流れは分かるね?」

 「はい、なんとなくは…」


 こうして理屈の把握も大事だからな
 
 「キスや前戯をして、気分をあげるのと同時に体の準備をしていきます」

 「はい」

 「ここで気持ち良くなるから、もう抗わないで委ねることが大事です」
  
 「…なるほど」


 泉さんは経験が無いから実践だけ積めばいいかとも思ったが
 色々分からずに進めても「恥ずかしい」という壁が厚いんじゃないかと考えた

 普通はなんも考えていないバカなガキの頃に、恥ずかしさよりも性欲だけで行為をこなしていくが
 彼女はガッチガチに理性の働く大人になってしまっている

 これは「誰しもがやっていること」「恥ずかしい行為でないこと」「ただの欲求のひとつであること」等の説明をしておいたほうが行為に対して変な壁を作らないで済むんじゃないかと思う



 「男はさ、気持ちいいな~ってなると、こないだの俺みたいにナニが勃起します」

 「…はい」

 返事はしたものの、下を向く泉さん
 触らされた俺のナニを思い出しているんだろうか

 「対して女性は、気分があがれば濡れて男性を迎え入れるように働きます」

 「はい」


 
 「…で、男性器を女性器に挿入したら、あとはもう愛し合う2人でぐっちゃぐちゃになります」
 
 「…そ、そんな…、具体的にはぐちゃぐちゃとはどういう…」

 …聞くな聞くな!それはその時を迎えたら分かるから


 「それが全てだよ、難しいことは何もないです」
 

 人類は皆同じ営みを日々繰り返す
 朝起きて仕事に行くのと同じように夜は愛する人とセックスをする

 どんな人だって、自分のご両親でさえ、そうして子を儲けたのだから


 「ね?そう考えるとなにも恥ずかしがるようなことじゃないでしょ?」

 「まぁそうですね…そんな気がしてきました」

 よしよし、頭での理解は上々のようだ


 「…では本日はここまで!」


 「あ、あの…実技のほうは…?」


 えぇ?
 …そんなにやる気なの?
 
 てか実技ってw
 




 
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