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第50話「想いが消えない人」
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俺は大学を無事に卒業して、今年の4月から社会人になった。
今、発展しつつある、システムの開発会社に入り、システムエンジニアとして正社員として雇われ、今は6月でやっと少しずつだけど会社にも仕事にも慣れてきたところだった。
涼子の右足は元通りとはいかないけれど、歩けないとはならず、少しだけ右足をひきずるけれど、何とか歩けるようになっていた。
でも、やっぱり、元通りにならない右足を見ては心が痛んだ。
だから、俺は涼子のことをうんと大切にしようと心に決めていた。
そして、美香のことは今、どうしてるのか全く知らなかった。
美香のことだから、無事に就職はしたと思うけれど、母さんも美香の母さんも俺に美香のことはもう話さなくなっていた。
正直に言うと美香と一緒にいた期間が長すぎるせいか完全に美香への想いを断ち切るということはできないでいた。
だけど、それはきっと昔を懐かしむ気持ちみたいなものだと今は思っていた。
でも、その気持ちがそうじゃないと気づくできごとが起きてしまった。
6月の中旬に入ったばかりの月曜日、俺は仕事の研修セミナーで大阪に行った。
研修セミナーは今日から3日間あって、こっちのホテルで泊まることにもなっていた。
大阪に来るのなんて凄い久しぶりだな。
俺は新大阪駅に着き、今日の午前10時から行われる研修セミナーの会場に向かいながらそう思っていた。
研修セミナーが行われる会場は新大阪駅から徒歩5分くらいのところにある大きなビルの11階だった。
そのビルの近くに行くと俺みたいにスーツを着てキャリーケースを持っている男性と女性が何人もいた。
多分、その人達も俺と一緒の研修セミナーを受けるかあるいは違うセミナーとかを受けるんだろうなと思った。
そして、俺はビルの中に入り、エレベーターに乗った。
エレベーターの中はすぐに一杯になった。
でも。
「すいません! 乗せてください!」
と大慌てで女性が来て言ったので、エレベーターの開けるボタンを誰かが押して、その女性がエレベータの中に何とか入った。
でも、そのおかげでエレベーターの中は本当にぎゅうぎゅう詰めになった。
俺が受ける研修セミナーは10時からだし、今はまだ9時45分だから時間はあるし、今、乗ってきた女性は俺とは違うセミナーを受けるか或いは確かこのビルには何社か会社も入っているから、このビルの中に入っている会社で働いているのかな?
なんて全くの知らない人のことを何気なしに考えてしまった。
だけど、エレベーターの真ん中辺りに乗っていた俺が何気なしに顔をあげて、恐らく、一番最後に乗ってきたから、ドアの凄いそばにいるだろう女性の顔を見て、俺は一瞬、思考が固まってしまった。
だって、その女性は―全くの知らない人どころか凄くよく知っている女性の美香だったから。
そして、俺は凄く久しぶりに美香を見て、鼓動が高鳴った。
それは美香に対しての気持ちが今も懐かしむ気持ちではないことを意味していた。
今、発展しつつある、システムの開発会社に入り、システムエンジニアとして正社員として雇われ、今は6月でやっと少しずつだけど会社にも仕事にも慣れてきたところだった。
涼子の右足は元通りとはいかないけれど、歩けないとはならず、少しだけ右足をひきずるけれど、何とか歩けるようになっていた。
でも、やっぱり、元通りにならない右足を見ては心が痛んだ。
だから、俺は涼子のことをうんと大切にしようと心に決めていた。
そして、美香のことは今、どうしてるのか全く知らなかった。
美香のことだから、無事に就職はしたと思うけれど、母さんも美香の母さんも俺に美香のことはもう話さなくなっていた。
正直に言うと美香と一緒にいた期間が長すぎるせいか完全に美香への想いを断ち切るということはできないでいた。
だけど、それはきっと昔を懐かしむ気持ちみたいなものだと今は思っていた。
でも、その気持ちがそうじゃないと気づくできごとが起きてしまった。
6月の中旬に入ったばかりの月曜日、俺は仕事の研修セミナーで大阪に行った。
研修セミナーは今日から3日間あって、こっちのホテルで泊まることにもなっていた。
大阪に来るのなんて凄い久しぶりだな。
俺は新大阪駅に着き、今日の午前10時から行われる研修セミナーの会場に向かいながらそう思っていた。
研修セミナーが行われる会場は新大阪駅から徒歩5分くらいのところにある大きなビルの11階だった。
そのビルの近くに行くと俺みたいにスーツを着てキャリーケースを持っている男性と女性が何人もいた。
多分、その人達も俺と一緒の研修セミナーを受けるかあるいは違うセミナーとかを受けるんだろうなと思った。
そして、俺はビルの中に入り、エレベーターに乗った。
エレベーターの中はすぐに一杯になった。
でも。
「すいません! 乗せてください!」
と大慌てで女性が来て言ったので、エレベーターの開けるボタンを誰かが押して、その女性がエレベータの中に何とか入った。
でも、そのおかげでエレベーターの中は本当にぎゅうぎゅう詰めになった。
俺が受ける研修セミナーは10時からだし、今はまだ9時45分だから時間はあるし、今、乗ってきた女性は俺とは違うセミナーを受けるか或いは確かこのビルには何社か会社も入っているから、このビルの中に入っている会社で働いているのかな?
なんて全くの知らない人のことを何気なしに考えてしまった。
だけど、エレベーターの真ん中辺りに乗っていた俺が何気なしに顔をあげて、恐らく、一番最後に乗ってきたから、ドアの凄いそばにいるだろう女性の顔を見て、俺は一瞬、思考が固まってしまった。
だって、その女性は―全くの知らない人どころか凄くよく知っている女性の美香だったから。
そして、俺は凄く久しぶりに美香を見て、鼓動が高鳴った。
それは美香に対しての気持ちが今も懐かしむ気持ちではないことを意味していた。
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