「2人の運命」

愛理

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第42話「完全に新しい恋へ」

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  とうとう大学創立50周年イベントの日になった。
  俺は予定通り、タキシードを着ていた。
  そして、渡部と牧田はふりふりのウェイトレスの格好をして、本当にネコ耳をつけていた。
  うわっ。何か凄い可愛いんだけど。
  俺は渡部を見ながらそう思ってしまった。
  いや、俺は別に萌えー! とか口にする方じゃないんだけど。
  でも、やっぱり可愛い。
  俺がそう思っていると、
「俺、彼女には悪いけど、ちょっと今の2人の格好は可愛いと思うわ」
  と瀬戸が言い、俺は瀬戸も俺と同じような感覚を持っているんだなということが解って、少しほっとした。
  それから少しして、渡部と目が合った。
  だから、俺は渡部のところへ行って、
「大丈夫。凄い可愛いから恥ずかしがることないよ」
  そう言った。
  すると渡部は少し顔を赤らめて、
「ありがとう。でも、それって喜んでいいのかなあ?」
  と言ったので、俺は笑った。
  それから俺達の屋台はかなりのお客さんが来てくれて、時には男子も女子も全員、一緒に写真を撮ってほしいと言われたりもした。
  忙しくて大変だったけど、やりがいはあったし、楽しかった。

  そして、今、イベントが終わり、俺達は後片付けに入っていた。
「準備する期間は長いなと思ったのに本番はあっという間に終わっちゃったな」
  津山が言った。
  俺は津山のその言葉にもの凄く共感した。
  それから終わってしまったことに寂しさも感じていた。
  それはこのメンバーと一緒にやって楽しかったからだと思う。
「な、本田、渡部のことどうすんの? まさかこれでサヨナラってことはないよな?」
  瀬戸がゴミ袋にゴミを入れている俺のところに来て、こそっと耳元で言った。
「うん、この後、チャンスがあれば告ろうと思ってるよ」
  俺も瀬戸にこそっと耳元で言った。
「そっか。頑張れよ。もし、ふられたら慰めてやるからな」
「大きなお世話だよ」
  俺と瀬戸はそんな会話をしつつその後は片付けさえも楽しくやり遂げた。
  片付けが終わり、津山が代表して、このメンバーでやれて良かったと言った後、打ち上げをこの後したいと言ったので、俺達はまたファミリーレストランに行き打ち上げすることになった。
  ファミリーレストランではイベントの打ち合わせをした時よりも遥かに皆が打ち解けていたので、凄く楽しくそれぞれが会話できた。
  午後9時過ぎ頃、解散となった。
  だから、俺はファミリーレストランを出た後、渡部のところに行き、
「渡部、ちょっと話があるんだけどいいかな? だから、良かったら一緒に駅まで行ってほしいんだけど」
  小声でそう言った。
  すると渡部はすぐにいいよと言ってくれたので、俺は渡部と2人で駅まで行くことになった。

  他のメンバーは俺と渡部に気を遣ってくれたのかは知らないけど、急にカラオケに行くと言い出し、お前らは帰るみたいだから、じゃあなと言い、俺と渡部とは違う方向に歩いていった。
「何かごめん。皆、カラオケ行くとか言いだして。もしかして、渡部もカラオケ行きたかったんじゃ?」
  駅へ向かって歩いている時に俺が言った。
  すると渡部は首を左右に振って、俺の方を笑顔で見ながら、
「ううん、カラオケは嫌いじゃないけど、男子がいると歌うのはちょっと恥ずかしい」
  そう言った。
「そっか。でも、いつか渡部の歌うの聴いてみたいかも。渡部、可愛い声してるから、可愛い曲とか似合いそうだし」
  俺がそう言った後、少し恥ずかしそうに渡部は笑った。
  でも、俺はそこでふと足を止めた。
  もうすぐ駅に着くという場所で。
  渡部もそんな俺に驚いて足を止める。
「本田くん?」
  夜ということもあってか俺達が今、歩いている歩道にはほとんど人はいなかった。
  さっき1人だけすれ違った人がいたくらいだった。
  俺と渡部は向かい合った。
  俺は渡部と向かい合って、少しした後、
「突然で驚くと思うんだけど、俺、渡部のこと好きになったんだ。だから、もし、渡部がいいなら、俺とつきあってほしいんだけど」
  そう言った。
  すると渡部はさっきよりも、もっと驚いた顔をした。
  だけど、
「本当に? 私でいいの? それなら凄く嬉しいよ。だって、私も本田くんのこと、凄く気になってたから」
  恥ずかしそうにそう言ってくれた。
  だから、俺は思わず渡部をぎゅっと抱きしめてしまって、
「渡部がいいんだ。ありがとう。俺、渡部がそう言ってくれて凄く嬉しい。絶対に大切にするから、俺の彼女になってください」
  そう言った。
  すると渡部も俺の背中に両手を回してくれて、
「はい」
  と俺にとっては凄くストライクな口調と声の返事をくれた。
  そして、俺はこの瞬間にずっとずっと長い間、胸に抱いていた美香への想いを手離して、完全に新しい恋へと踏み出した。
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