「2人の運命」

愛理

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第35話「解き明かされた真実」

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  俺は瀬戸にまた浅川に騙されたんじゃないのかと言われたことがどうしても頭から離れなかった。
  勿論、そうあってほしくはない。
  だけど、浅川を抱いた時のあの反応に俺はどうしても引っかかるものがあった。
  まさか。でも。
  まさにそんな言葉ばかりが頭の中に浮かんできて。
  そして、俺のそんな疑問の答えは瀬戸によって俺にもたらされた。
  瀬戸に浅川とのことを話してから1週間後に瀬戸から大事が話があるから、大学が終わったら2人で何処か静かに話せるところに行かないかと言われて、俺は頷いた。
  本当はアルバイトが入っていたんだけど、瀬戸が凄く深刻そうだったので、俺は電話してアルバイトはどうしても学校の用事で行けなくなったと言い、休ませてもらった。
  
  大学が終わり、俺と瀬戸は2人で帰り、何処がいいかなと思ったけど、やっぱりゆっくり話せると言ったら、部屋がいいかなと思い、俺は瀬戸を自分の家に呼んだ。
  母さんは今日、友達のところへ出かけているし、父さんは通常通り仕事に行ってるから、俺と瀬戸と本当に2人きりで話せるから丁度いいとも思って。
「とりあえずオレンジジュースくらいしかないけど」
  そう言い俺はオレンジジュースが入ったグラスを2つ小さなお盆に乗せて部屋に持ってきた。
「ありがとう」
  瀬戸はそう言いグラスを取り、少しだけ飲んで俺がフローリングのところに置いたお盆にまたグラスを乗せた。
「ところで瀬戸、大事な話って?」
  俺もオレンジジュースを少しだけ飲んでから言った。
「うん、本田、お前さこの前、浅川とのこと俺に話しただろ」
  俺は瀬戸のその言葉を聞いて、やっぱりかと思った。
  多分、瀬戸は浅川のことを話してくるのではないかと思っていたから。
  そして、それはもしかしたら俺にとってはまた堪らないものかもしれないとも半分くらいは思っていた。
「うん、それがどうかした?」
  だけど、俺はあくまで冷静にそう言った。
  すると瀬戸は俺を真剣な顔でじっと見て、
「本田、やっぱり、浅川、男に性的暴力なんて受けてなかったよ」
  そう言った。また、その後に、
「男に暴力受けてたっていうのも浅川の仕組んだことだった」
  瀬戸は少し怒ったような口調でそうも言った。
  だけど、俺はああ、やっぱりかと思ってしまった。
  また、俺は騙されて……。
  挙句の果てに美香を傷つけ一番大切な人を失ってしまったんだと思った。
  本当に俺は一体、何処までバカなんだろう。
  そう思いながら俺は唇を噛みしめた。
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