「2人の運命」

愛理

文字の大きさ
上 下
16 / 61

第16話「電話」

しおりを挟む
  それからは不思議なことに俺と美香のところに得たいの知れない誰かからは何も送られてこなくなった。
  そして、夏休みの間は大阪で会った時に言っていたように俺と美香は大阪と東京をお互いに何回か行ったり来たりして、その時は幸せな時間を過ごした。
  だけど、その分、やっぱり、いつもそばにいたい。
  美香とすぐに会える距離にいたい。
  その想いも強くなった。
  でも、お互いにまだ大学生の俺達にはどうすることもできなくて。
  
  そして、夏休みが終わり、俺と美香は段々と大学での勉強に身を入れるようになった。
  今の大学生の現状ではもう1年生から就職に向けての行動もしておかないとならないから。
  美香は通訳の仕事につけるように向けて、大学以外でも英会話の塾に通っていた。
  俺は大学に入るまでと入ってから暫くは一体何がしたいかよく解らなかったけど、最近は、国際学科の中にもパソコンでプログラミングを組む授業があり、それが凄く面白いと感じていたので、SE(システムエンジニアリング)を目指そうかなと思っていて、偶然に大学のサークルにSE部というのがあるのを知り、そこに入り、アルバイトへ行く時間くらいまでは大学がある時はそこでパソコンをいじりまくっていた。
  そうして、俺と美香の電話する回数もLINEで会話する回数も徐々に減っていった。
  だけど、決して、俺の美香への想いが前より冷めたかと言えば全然、そうじゃない。
  むしろ忙しすぎると感じる時にやっぱり会いたいと思うのは美香で。
  でも、大阪と東京じゃ勿論、すぐ会えるわけもなくて―。

「あー、疲れた」
  俺はラーメン屋のアルバイトを終え、家に帰り、自分の部屋のベッドに仰向けに大の字で寝てそう言った。
  ここのところ、本当に忙しかったから、すっげー疲れた。
  俺はそう思いながら、枕元に置いていたスマホを何気なしに手にした。
  そして、無意識のうちに美香に電話をかけていた。
  今は夜の11時。
  もしかしたら美香はもう寝ているかもしれない。
  だけど、何だか今は凄く美香の声が聞きたかった。
  美香の声を聞けばこの疲れが少し癒されるような気がしたから。
  何回か呼び出しコールが鳴る。
  ああ、やっぱり、寝てるのかな。
  じゃあ、このまま鳴らし続けて、起こしてしまっても悪いよな。
  今日は美香の声を聞くのは諦めよう。でも、明日はアルバイトもないから、もっと早い時間に美香に電話をかけて今度こそ声を聞こう。
  俺はそう思って電話を切ろうとした。
  するとその瞬間に、
「はい」
  と何故か男性が美香の電話に出た。
しおりを挟む

処理中です...