「伝説を超える時」

愛理

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番外編「辿り着きたい場所を探しに」(クラウス篇)

第8話「今まで感じたことがない気持ち」

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  食事が終わって、風呂にも入って、後は寝るだけになったけれど、クラウスは中々、寝つけなくて何となく外に出てみることにした。
   同じ部屋に泊まっているラウルはサリアのこともあって、疲れていたのかすぐに寝てしまって、クラウスが部屋から出ていこうとしても全然、起きる様子はなかった。
「クラウス、眠れないんですか?」
  外に行こうとドアを開けようとしていたクラウスの背後からリンナの声がした。
  だから、クラウスは後ろを振り返った。
「リンナ」
「実は私も眠れなくて、外に出て、少し空を眺めようかなと思っていたんです。ご一緒してもいいですか?」
「ああ、勿論」
  そして、クラウスとリンナは2人で外に出た。
  クラウスはリンナにいい場所があるからとリンナの家から少しだけ離れたところに連れて行かれた。
  その場所には白い2人掛けのベンチがあって、クラウスとリンナは並んでそのベンチに座った。
  そのベンチに座ってすぐに2人は空を見上げた。
  すると今日は沢山の星空が出ていた。
「うわあ、綺麗だな」
  クラウスが感動しながら言った。
「ええ、とても」
「俺さ、この地上にいる時はよく空を眺めてたんだ。だって、空にはスカイ国があって、そこに両親がいるからさ、幼い頃からこの地球にいた俺は空を眺めてよく両親のことを思い浮かべてた」
  クラウスがそう言うとリンナは優しい顔でクラウスを見つめて、その後、
「私もそうです。私もクラウスと一緒で幼い頃からこのカーゴ村にいましたから、空を眺めては両親のことを想っていました」
「リンナ」
「勿論、今もこのカーゴ村にいる時はそういう想いで空を眺めているんですけどね」
  リンナはそう言った後、また空を見上げた。
  クラウスから見たら、その時のリンナは何だかとても綺麗で、クラウスは何だかドキッとした。
  何だろう? 何で今、俺、リンナを見て、ドキッとしているんだろう?
  ジェオスを倒す旅をしていた時はリンナに対して1度もこんな気持ちになることはなかったのに。
  クラウスはそう思いながら、まだリンナを見続けていた。
  するとリンナが空を見上げるのをやめて、クラウスの方を見た。
  だから、クラウスは慌てて、前を向いた。
「クラウス」
「え?」
  いきなり名前を呼ばれてクラウスは少し動揺した。
「クラウスは自分探しの旅に出たと言ってしましたね」
  今日、食事をする時にクラウスは自分がどうしてスカイ国からまた地上にやって来たのかを話した。
「ああ」
「見つかりそうですか? 探しているものは」
「ああ、まだ何となくだけどな。ただ、すぐにそれが手に入れられるかは解らないけど」
「そうなんですか。でも、私も本当は叶えたい夢が1つだけあります」
「え? 何だよ?」
「それは恥ずかしいので言えません」
「何だそれ?」
「でも、叶えたいです」
「リンナなら叶えられるよ」
  2人はそんな会話をしながら30分くらいその場所にいて、そろそろ眠らなきゃいけないから、もう帰ろうということになり、家に帰った。
  だけど、クラウスはさっきのリンナに対する気持ちが一体、何なのかが解らずに外に出て、少し気分を落ち着かせて寝ようと思っていたのに反対に寝つけなくなってしまった。
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