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第54話「あなたを守りたい」
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陸人が雅人のことを車で轢いた(勿論、雅人の名前は伏せているけど)ということが雑誌でフォーカスされてから、陸人の環境はガラリと変わってしまった。
記事にはどうしてそういった事故が起きたのかという経緯は詳しく書いていなくて、何故か陸人が全面的に悪いように書かれていた。
だから、今は陸人に対するバッシングが酷くなっていた。
陸人に対するネット記事も色々出ていたけど、どれも真実からはかけ離れている内容ばかりだった。
そして、私と陸人はそのフォーカスが出てから会えなくなった。
というよりも陸人が今は会わない方がいいと言ったから。
陸人のことはテレビでもスキャンダルニュースで報道されたりして、両親も目にしたけど、その時は両親は何も言わなかった。
そして、私が陸人にやっと会えたのは陸人のフォーカスが出てから2ヶ月後のことだった。
都内にあるあまり大きくない建物のビジネスホテルの部屋で会った。
「ごめんな、わざわざ来てもらって」
私達は念の為、別々に部屋を取っていた。
そして、私が陸人がいる部屋に行った。
久しぶりに会った陸人は痩せていた。
だから私は陸人が言葉を発した後、すぐに陸人に抱きついた。
「亜美?」
「痩せたね陸人」
私がそう言うと陸人は少しだけ困ったような顔をした。
そして、陸人も私を抱き返して、
「ごめん、また心配かけて」
そう言った。
だから、私は思いっきり首を左右に振って、
「そんなの全然いいよ。それより大丈夫? ちゃんとご飯は食べれるの?」
そう言った。
「うん、食べてることは食べてるよ」
陸人は今度は少しだけ辛そうな顔をしてそう言った。
「陸人」
「亜美は大丈夫?」
「うん、私のところにも最初の頃はまた記者みたいな人達が何人かやって来たけど、もう落ち着いたから大丈夫だよ。それに何か陸人のファンからの嫌がらせはなくなったし」
「もう俺のファンはいないからだろうな」
私は陸人のその言葉に驚く。
「そんなわけないじゃない」
「いや。だって、俺、人を殺してるのにそれを隠してのうのうとモデル活動なんかしてたんだよ? そんな奴、誰が好きだって思う?」
「そんなの解らないじゃない。それに雅人のことは全部が陸人が悪いわけじゃないんだよ」
私はそう言いながら陸人に抱きついている力を強める。
「亜美」
「陸人、辛いなら私に何でも言って。悲しいなら私の前では泣いて」
私がそう言うと陸人の顔が歪んだ。
そして、陸人の目から涙が零れた。
だから、私は更に強く陸人に抱きついている力を強めた。
「亜美」
陸人はそうやって私を呼んだ後、暫く私を抱きしめたまま何も言わなかった。
ううん、言えなかったんだと思う。
私の左肩に顔を埋めて声を殺して泣いていたから。
そして、私はそんな陸人を見つめながら、
今は私が陸人を守りたい。陸人を明るい光の中に戻してあげたい。
そう思っていた。
記事にはどうしてそういった事故が起きたのかという経緯は詳しく書いていなくて、何故か陸人が全面的に悪いように書かれていた。
だから、今は陸人に対するバッシングが酷くなっていた。
陸人に対するネット記事も色々出ていたけど、どれも真実からはかけ離れている内容ばかりだった。
そして、私と陸人はそのフォーカスが出てから会えなくなった。
というよりも陸人が今は会わない方がいいと言ったから。
陸人のことはテレビでもスキャンダルニュースで報道されたりして、両親も目にしたけど、その時は両親は何も言わなかった。
そして、私が陸人にやっと会えたのは陸人のフォーカスが出てから2ヶ月後のことだった。
都内にあるあまり大きくない建物のビジネスホテルの部屋で会った。
「ごめんな、わざわざ来てもらって」
私達は念の為、別々に部屋を取っていた。
そして、私が陸人がいる部屋に行った。
久しぶりに会った陸人は痩せていた。
だから私は陸人が言葉を発した後、すぐに陸人に抱きついた。
「亜美?」
「痩せたね陸人」
私がそう言うと陸人は少しだけ困ったような顔をした。
そして、陸人も私を抱き返して、
「ごめん、また心配かけて」
そう言った。
だから、私は思いっきり首を左右に振って、
「そんなの全然いいよ。それより大丈夫? ちゃんとご飯は食べれるの?」
そう言った。
「うん、食べてることは食べてるよ」
陸人は今度は少しだけ辛そうな顔をしてそう言った。
「陸人」
「亜美は大丈夫?」
「うん、私のところにも最初の頃はまた記者みたいな人達が何人かやって来たけど、もう落ち着いたから大丈夫だよ。それに何か陸人のファンからの嫌がらせはなくなったし」
「もう俺のファンはいないからだろうな」
私は陸人のその言葉に驚く。
「そんなわけないじゃない」
「いや。だって、俺、人を殺してるのにそれを隠してのうのうとモデル活動なんかしてたんだよ? そんな奴、誰が好きだって思う?」
「そんなの解らないじゃない。それに雅人のことは全部が陸人が悪いわけじゃないんだよ」
私はそう言いながら陸人に抱きついている力を強める。
「亜美」
「陸人、辛いなら私に何でも言って。悲しいなら私の前では泣いて」
私がそう言うと陸人の顔が歪んだ。
そして、陸人の目から涙が零れた。
だから、私は更に強く陸人に抱きついている力を強めた。
「亜美」
陸人はそうやって私を呼んだ後、暫く私を抱きしめたまま何も言わなかった。
ううん、言えなかったんだと思う。
私の左肩に顔を埋めて声を殺して泣いていたから。
そして、私はそんな陸人を見つめながら、
今は私が陸人を守りたい。陸人を明るい光の中に戻してあげたい。
そう思っていた。
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