「君に会ってから」

愛理

文字の大きさ
上 下
1 / 6

第1話「出会い」

しおりを挟む
  正直、辛いことや疲れることは嫌い。
  だから、なるべく楽に過ごせるように生きてきた。
  後、人にどう思われてもいいから、身なりなんかもあんまり構わなかった。
  だけど、そんな俺は君に会ってから、変わらなきゃいけないと思ったんだ。
  だって、そうじゃなきゃ、俺は君に自分の気持ちも伝えることができないと思ったから。

  今日から俺は高校1年生になった(入学式は省く)
  といっても、俺は地元の高校に進学したので、中学生が同じだった奴も多いし、仲のいい友達も一緒に進学して、そのうち何人かは同じクラスになったので、あんまり新鮮な気持ちはないんだけど。
「おい、お前、また、髪の毛、ぼさぼさやな」
  関西弁でそう言ったのは、俺と中学生からの同級生で、笹川広人。
  元々は大阪出身で、お父さんの仕事の都合で、小学3年生になる前に東京に引っ越してきたけど、、広ちゃんいわく(出会ったころ、皆に広ちゃんと呼ばれていたから、俺も自然と広ちゃんと呼ぶようになった)両親が家でずっと関西弁で話していて、関西弁が板についているから、東京でも関西弁を貫きとおすということで、広ちゃんはずっと関西弁で話している。
  後、広ちゃんの身長は170cmに少し及ばないくらいで、俺は何だかいつの間にか凄く成長して、180cmくらい身長があって、基本的に広ちゃんは俺と話す時、俺を見上げる形になるんだけど、それでも、わりと気が強い広ちゃんは、俺を見上げながら、キツイことを言ってきたりする。
  まあ、俺はどちらかというとのんびりしてるし、あんまり何言われても気にしないし、広ちゃんは性格が多少きつくても、性格が男前だし、頼りになるし、優しい部分もあるので、俺は常に一緒にいるんだけど。
  あ、ちなみに広ちゃんは見た目もいいので、中学生の時は女子によくモテていた。
  多分、高校でもそうなんだろうなとは思う。
  でも、それだけモテるのに何故か特定の彼女はいない。
  だから、俺は密かに誰か好きな子でもいるのかなとは思っている。
  ちなみに俺と広ちゃんは、家が近いこともあって、中学生の時はずっと一緒に登下校をしていた。
  そして、高校も一緒のところに進んだから、高校生になっても、一緒に登下校をしようということになって、今は待ち合わせの場所で合流したところだった。
  ちなみに待ち合わせの場所は俺と広ちゃんの家から近い小さな公園の前だった。
「うん、起きたのギリギリで。それにご飯全部、食べたかったし」
  俺がそう言うと広ちゃんは、はあっと溜息を吐いた。
「ほんまにお前、もったいないわ。背が高くて男前やのに。もっとちゃんとしたら、お前、絶対、モテんのに」
  広ちゃんは、本当にもったいないという顔をして言った。
「えー、俺、そんな男前違うし」
  俺がそう言うと、
「ううん、男前だと思う」
  といつの間に来たのか、広ちゃんの後ろから、小柄で、目がくりっと大きくて……はっきり言って、あんまり女の子に興味のない俺が可愛いと思ってしまう女の子が現れた。
  え? え?
  この子、一体、誰?
  ドキドキしながら、俺がそう思っていると、
「あ、そうや。谷原、悪いけど、今日から、こいつも一緒に登下校したってくれる? こいつは木崎章子。俺の幼馴染やねん。後、章子、こいつは谷原龍(りゅう)」
  広ちゃんがそう言った。
「え? 幼馴染? じゃあ、この子も、大阪出身?」
  そう俺が聞くと、
「いや、章子は東京出身や。俺がこっちに来た時に一番に俺と仲良くしてくれてん。でも、章子は中学生にあがる前に章子のお父さんの仕事の都合で千葉に行ったから、お前は知らんで当然やと思う。だって、小学校違うし」
  そう。俺と広ちゃんの家はわりと近いけど、俺達の家の近くに踏切があって、俺と広ちゃんの家はその踏切を渡らないとお互いの家には行けない。
  そして、小学校の時は何故かその踏切を境に別々の小学校へ行くことになっていた。
  だから、広ちゃんとは中学生の時からの同級生になるんだけど。
「そうなんだ」
  俺がそう言うと木崎さんがいきなり俺の前に来て、俺を思いっきり見上げて、
「うん、そうなの。それで、お父さんの仕事の都合でまたこっちに戻ってくることになってね。元々、いつかは帰ってくる予定だったから、家もそのままにしておいたの。で、高校はこっちで進学することになって、家の近くのところに進みたかったから、海野(うみの)高校にしたんだよ。あ、入学式は家の都合でどうしても出れなかったんだけどね。で、こっちに戻ってきて、広ちゃんに再会して、話したら、一緒の高校だって知ったから、それなら、一緒に登下校したいなと思って。だから、今日から、よろしくお願いします。男前さん」
  そう凄く可愛い笑顔でそう言った。
  そして、俺はこの時、完全にこの凄く笑顔の可愛い木崎さんに恋に落ちた。
  それは俺にとっては前代未聞の出来事だった。
しおりを挟む

処理中です...