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第59話「やっぱり理解ができなくて」
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雪人さんがこの先の話も聞いてほしいと言ったので、とりあえず私は話の続きを黙って聞くことにした。
そして、雪人さんは話の続きをし始めた。
「さっきも話したとおり、俺は記憶をほとんど失くしていた。だけど、日本に帰ってきて、美春、君と再会した場所にあるイタリアンのお店を見た時、何だか俺は凄く重要なことを忘れてるような気がする、あるいは何かが足りないような気がするって感じた。そして、美春、君に会って、最初はすぐにサヨナラしたけど、前にも言ったけど、俺は君と会ってから、ずっと君に会いたいと思ってた」
雪人さんは私の目を真っ直ぐに見ながらそう言ったので、私も雪人さんの目を真っ直ぐ見たまま、話を聞いていた。
「美春に再会した初めの時は記憶が無かったから、どうしてイタリアンのお店が気になるのか、また、美春のことがどうして凄く気になるのか解らなかった。でも、美春と一緒にイタリアンのお店で食事したり、東京駅を歩いて、何だか懐かしい気持ちと美春と一緒にいることで楽しい気持ちや優しい気持ちになれたりして、段々と美春のことばかり考えるようになっていた」
私は雪人さんの話をやっぱりただ黙って聞いていた。
「そして、ある日、ふと色々と俺の記憶が蘇ってきた。本当に突然だったんだ。でも、その頃、早苗が癌を患っていて、後、半年もない命だっていうことが解っていて」
「早苗さんが」
私はさすがに口を挟まずにはいられなかった。
「ああ、だから、俺はせめて、早苗が生きてる間は橋野郁美として生きようって決めた」
「早苗さんに幸せな気持ちのままでいてほしいからですか」
私がそう言うと雪人さんはコクンと頷いた。
「だけど、結婚式まで挙げて、もし早苗さんがいなくなったら、実は自分は橋野郁美ではなく、倉崎雪人ですって告白して、その後はどうするつもりだったんですか。それに私のことを思い出してくれたのに例え偽物だったとしても、他の人と結婚式を挙げるってどうなんですか」
私は思わず本音を一気に雪人さんに言ってしまった。
雪人さんの優しさは理解はできる。
だけど、やっぱり、例え癌で、後少ししかない命の人だとしても、本当はやってはいけないことをやった人の幸せを思って、以前、その人の最愛だった人に成り代わって、結婚式を挙げるとか、また、記憶が戻ったのに恋人だった私ではなく、早苗さんのことを優先させるとかは理解することができなかった。
また、やっぱり、私の今までの雪人さんに対する想いもあり、私ではなく、早苗さんを雪人さんが優先させたことに腹が立ってしょうがなかった。
だから、私は、
「雪人さん、もう話はいいです。ただ、もうこれ以上、私達、関わるのはやめましょう。私は雪人さんを以前のようには理解することができません」
そう言った。
そして、雪人さんは話の続きをし始めた。
「さっきも話したとおり、俺は記憶をほとんど失くしていた。だけど、日本に帰ってきて、美春、君と再会した場所にあるイタリアンのお店を見た時、何だか俺は凄く重要なことを忘れてるような気がする、あるいは何かが足りないような気がするって感じた。そして、美春、君に会って、最初はすぐにサヨナラしたけど、前にも言ったけど、俺は君と会ってから、ずっと君に会いたいと思ってた」
雪人さんは私の目を真っ直ぐに見ながらそう言ったので、私も雪人さんの目を真っ直ぐ見たまま、話を聞いていた。
「美春に再会した初めの時は記憶が無かったから、どうしてイタリアンのお店が気になるのか、また、美春のことがどうして凄く気になるのか解らなかった。でも、美春と一緒にイタリアンのお店で食事したり、東京駅を歩いて、何だか懐かしい気持ちと美春と一緒にいることで楽しい気持ちや優しい気持ちになれたりして、段々と美春のことばかり考えるようになっていた」
私は雪人さんの話をやっぱりただ黙って聞いていた。
「そして、ある日、ふと色々と俺の記憶が蘇ってきた。本当に突然だったんだ。でも、その頃、早苗が癌を患っていて、後、半年もない命だっていうことが解っていて」
「早苗さんが」
私はさすがに口を挟まずにはいられなかった。
「ああ、だから、俺はせめて、早苗が生きてる間は橋野郁美として生きようって決めた」
「早苗さんに幸せな気持ちのままでいてほしいからですか」
私がそう言うと雪人さんはコクンと頷いた。
「だけど、結婚式まで挙げて、もし早苗さんがいなくなったら、実は自分は橋野郁美ではなく、倉崎雪人ですって告白して、その後はどうするつもりだったんですか。それに私のことを思い出してくれたのに例え偽物だったとしても、他の人と結婚式を挙げるってどうなんですか」
私は思わず本音を一気に雪人さんに言ってしまった。
雪人さんの優しさは理解はできる。
だけど、やっぱり、例え癌で、後少ししかない命の人だとしても、本当はやってはいけないことをやった人の幸せを思って、以前、その人の最愛だった人に成り代わって、結婚式を挙げるとか、また、記憶が戻ったのに恋人だった私ではなく、早苗さんのことを優先させるとかは理解することができなかった。
また、やっぱり、私の今までの雪人さんに対する想いもあり、私ではなく、早苗さんを雪人さんが優先させたことに腹が立ってしょうがなかった。
だから、私は、
「雪人さん、もう話はいいです。ただ、もうこれ以上、私達、関わるのはやめましょう。私は雪人さんを以前のようには理解することができません」
そう言った。
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