「愛って何ですか」

愛理

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第11話「消えた光」

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 結局、やっぱり愛なんてものは存在しない。
 少なくとも自分の傍には。
 しずくの所から自分のマンションに帰った悟はそう思っていた。
 悟はベッドの上に寝転がった。
 せっかく本当の幸せを手に入れたと思ったのに。
 やすらぐ場所を見つけたと思ったのに。
 自分はしずくの大切な彼の代わりだったんだ。
 冗談じゃない。
 死んでしまった相手への想いになど叶うはずがない。
 しずくと重ねた逢瀬は何だったのだろう。
 結局、本気だったのは自分の方だけだったんだ。
 そんな想いが悟の頭の中をぐるぐると駆け巡る。
 しずくを抱き締めた時、感じた居心地の良さ。
 結局、あれもすべては幻覚に過ぎなかったんだ。
 そう。愛なんて全てが幻覚なんだ。
 今の悟はそう思う。
 だから、もう誰も信じない。
 もう、誰も愛さない。
 やはり、そんな生き方が自分には似合っている。
 悟はそう思いながら、浅い眠りへと落ちた。

 それからの悟はしずくには一切、連絡は取らなかった。
 例え向こうから悟に会いに来ても追い返した。
 もし、あの時、あんな風な話の流れにならなければ、自分達はまだ付き合っていたのだろうか。
 そんな想いも時にはよぎった。
 けれど、そんなことはもうどうでもいいと無理矢理に悟はしずくのことを心の奥に閉じ込めていた。
 本当はざわざわといつも心の何処かが騒いでいたのに。    
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