「君としか恋はしたくない」

愛理

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第17話「幸せな時間」

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    結局、日曜日は綾香が俺の部屋に来たいと言ったので、告白する予定はなくなったものの、綾香と2人で俺の部屋でまったりとした時間を過ごすことになった。
 綾香は自分の家で昼ご飯を食べた後、すぐに俺の所へ来た。
 もうすぐ行くねとLINEで連絡はもらっていたから、俺もそれに合わせて昼ご飯を食べた。
 俺の両親は今日は朝から出かけている。
 俺は兄弟はいないから、今、俺の家で綾香と2人きりだった。
 本当は。
 好きな子と家に2人きりとか、やっぱり思春期の俺にはキツイ部分もあるんだけど、でも、俺は今は綾香の支えになってやろうと決めているから、幼馴染として今日は思いっきり綾香を甘やかすつもりでいた。
 だけど、本当はキツイ部分はあっても綾香と2人きりで、こんな風にまったりと過ごせるのは凄く幸せなことでもあるんだけど。
「な、綾香、金曜日と昨日は眠れたの?」
 俺は後ろから綾香を抱きしめたまま言った。
 綾香は本当に俺に対しては甘えん坊で、今でも自分からこんな風に俺に抱きしめてほしいって言ってくるから、俺は僅かな理性を必死に保ちながら、いつも綾香の望むようにしてやっていた。
「うん、何か涼一に話したらスッキリして。金曜日と土曜日の夜は自分でもびっくりするくらいにすぐに寝れたよ」
「そっか。それは良かった」
「うん、ありがとうね。でも、昔から涼一に話すといつも私の抱えてたモヤモヤが何処かへ行くんだよね」
「綾香」
「何だか涼一は私の安定剤みたいだね」
「安定剤ってお前な」
 それってやっぱり、俺といると安心しかしないってことだよな。つまり、ドキドキはしないってことだよな?
 俺はそう思って、また落ち込みそうになった。
 でも、俺は心の中でぶるぶるとその考えを振り落として、
 まあ、でも、考え方を変えると安定剤ってことは俺は綾香にとったら必要ってことだよな。
 そう思い直して、やっぱり、綾香と2人でまったりできるこの宝物のような時間を満喫しようと思っていた。
 そして、この日は本当に俺と綾香はまったりしながら過ごして、何だか俺は今までの色んな気持ちが洗われていくような気がしていた。
 だけど、せっかく洗われたような気がした俺の気持ちが、この後、またすぐに掻き乱されることになるんだけど。
    勿論、この時の俺はそんなことを知るはずがなかった。
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