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「あなたが愛を教えてくれたから」
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私には人を愛することなんて、できないと思っていた。
ーあなたに出会うまでは。
日曜日の午後、私が1人暮らしをしているマンションで、彼氏の樹(いつき)と一緒にリビングルームで、DVDで映画を見ていた。
2人で並んで床に座って見ていた。
他の人達から見たら、こんなことは平凡なことかもしれないけど、私の中では、こうやって愛している人とこんな風に一緒にいるだけでも凄いことだった。
もっと言えば私に愛することができる人がいることが凄いことだった。
そして、その人とこんな風に一緒にいることは奇蹟に近いことだった。
だって、私は樹に出会うまでは人を愛するということがどんなことなのか解らなかったから。
私の両親はお互いに仕事をしていて、私は幼い頃から、託児所に預けられていたし、私が中学生になると両親は離婚して、私は父親に引き取られたけど、父親は女性関係が絶えなくて、母親とは離婚して以来会わなくなって、私は2人にとって必要がないんだと思い、そんな環境で育ったからか愛について理解することができなかったから。
そして、私は父親の女性関係も見たくなくなり、高校生になると同時に1人暮らしを始めた。
お金だけはある家だったから。
その後、私は短期大学に行き、その後は小さな会社だけど、何とかその会社の正社員になることができた。
そして、就職をしてからの私は家と職場を往復するだけの日常がずっと続くんだと思っていた。
だけど、私が社会人になって2年目の春、樹が中途採用で私が勤めている会社に入ってきて、そこから私の日常が少しずつ変わっていった。
私の仕事は事務職で、営業マンのアシスタントもするから、営業マンとして入社してきた樹とよく絡むようになり、樹は私の4つ年上だけど、気さくで、あまり人と絡むのが得意じゃない私でも、わりとすぐに打ち解けることができ、そのことがまず私の日常が変わっていく一歩だった。
そして、樹が入社してきて半年後に私は樹に食事に誘われて、樹ならいいかと2人で食事に行ったら告白された。
その時、私は正直に自分は人を愛することが解らないかも知れないと言ったけど、樹はそれなら俺が教えてあげるし、俺がたっぷりと理子(りこ)に愛をあげるよと言ってくれて、私はその手を取ることにした。
だけど、その手を取って本当に良かったと今は思ってる。
だって、樹は本当に私に愛をたっぷりとくれて、また、私も愛するということがどういうことか解ったから。
勿論、私の愛はまだまだ未熟なものかもしれないけど。
だけど、樹に出会って、恋人同士になって解ったことがある。
それは生きていくうえでは愛することができる人と愛をくれる人がいることが幸せを感じるには不可欠だということ。
だって、私は今、とても幸せを感じているし、もしも、樹と離れることになったとしても、今度は愛を信じて生きていけると思うから。
勿論、樹とはこれからもずっと一緒にいたいけど。
「理子、どうした?」
映画が半分くらい過ぎた頃、樹が言った。
「え?」
「何か少し前から俺のことばかり見てるから」
「えっ? ご、ごめんなさい」
少し前から樹とのこと考えてたから無意識に見ちゃってたんだ。
私はそう思い、顔が熱くなった。
すると樹はリモコンで映画のDVDの再生を停めて、私を抱きしめた。
「樹?」
「ばか。謝らなくていいよ。そんなに俺を見るくらい、理子が俺のことを好きってことなんだから」
冗談ぽくそう言った樹に私は笑って、
「そうだよ。大好きだから、無意識に見ても仕方ないんだよ」
そう言い、私も樹の背中に手を回した。
ねえ、樹、私に愛を教えてくれて本当にありがとう。
END
ーあなたに出会うまでは。
日曜日の午後、私が1人暮らしをしているマンションで、彼氏の樹(いつき)と一緒にリビングルームで、DVDで映画を見ていた。
2人で並んで床に座って見ていた。
他の人達から見たら、こんなことは平凡なことかもしれないけど、私の中では、こうやって愛している人とこんな風に一緒にいるだけでも凄いことだった。
もっと言えば私に愛することができる人がいることが凄いことだった。
そして、その人とこんな風に一緒にいることは奇蹟に近いことだった。
だって、私は樹に出会うまでは人を愛するということがどんなことなのか解らなかったから。
私の両親はお互いに仕事をしていて、私は幼い頃から、託児所に預けられていたし、私が中学生になると両親は離婚して、私は父親に引き取られたけど、父親は女性関係が絶えなくて、母親とは離婚して以来会わなくなって、私は2人にとって必要がないんだと思い、そんな環境で育ったからか愛について理解することができなかったから。
そして、私は父親の女性関係も見たくなくなり、高校生になると同時に1人暮らしを始めた。
お金だけはある家だったから。
その後、私は短期大学に行き、その後は小さな会社だけど、何とかその会社の正社員になることができた。
そして、就職をしてからの私は家と職場を往復するだけの日常がずっと続くんだと思っていた。
だけど、私が社会人になって2年目の春、樹が中途採用で私が勤めている会社に入ってきて、そこから私の日常が少しずつ変わっていった。
私の仕事は事務職で、営業マンのアシスタントもするから、営業マンとして入社してきた樹とよく絡むようになり、樹は私の4つ年上だけど、気さくで、あまり人と絡むのが得意じゃない私でも、わりとすぐに打ち解けることができ、そのことがまず私の日常が変わっていく一歩だった。
そして、樹が入社してきて半年後に私は樹に食事に誘われて、樹ならいいかと2人で食事に行ったら告白された。
その時、私は正直に自分は人を愛することが解らないかも知れないと言ったけど、樹はそれなら俺が教えてあげるし、俺がたっぷりと理子(りこ)に愛をあげるよと言ってくれて、私はその手を取ることにした。
だけど、その手を取って本当に良かったと今は思ってる。
だって、樹は本当に私に愛をたっぷりとくれて、また、私も愛するということがどういうことか解ったから。
勿論、私の愛はまだまだ未熟なものかもしれないけど。
だけど、樹に出会って、恋人同士になって解ったことがある。
それは生きていくうえでは愛することができる人と愛をくれる人がいることが幸せを感じるには不可欠だということ。
だって、私は今、とても幸せを感じているし、もしも、樹と離れることになったとしても、今度は愛を信じて生きていけると思うから。
勿論、樹とはこれからもずっと一緒にいたいけど。
「理子、どうした?」
映画が半分くらい過ぎた頃、樹が言った。
「え?」
「何か少し前から俺のことばかり見てるから」
「えっ? ご、ごめんなさい」
少し前から樹とのこと考えてたから無意識に見ちゃってたんだ。
私はそう思い、顔が熱くなった。
すると樹はリモコンで映画のDVDの再生を停めて、私を抱きしめた。
「樹?」
「ばか。謝らなくていいよ。そんなに俺を見るくらい、理子が俺のことを好きってことなんだから」
冗談ぽくそう言った樹に私は笑って、
「そうだよ。大好きだから、無意識に見ても仕方ないんだよ」
そう言い、私も樹の背中に手を回した。
ねえ、樹、私に愛を教えてくれて本当にありがとう。
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