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「君の傘になりたくて」
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今日の俺は営業回りに時間がかかって会社に戻ったのは夜の8時過ぎだった。
2月の今は俺が勤めている会社はそんなに忙しい時期じゃないから、こんな時間だと多分、もう社員全員帰っているだろうと思って会社の前に着いたら、俺が所属している部署が使っているフロアの場所の電気が点いていた。
ちなみに俺が勤めている会社の建物は5階建てのビルで俺が所属しているフロアがあるのは2階だった。
そして、2階の俺が所属している部署があるフロアだけの電気が点いていた。
この会社に勤めているのは78人で、この会社は中小企業と呼ばれる部類に入る。
でも、売り上げのいい会社でボーナスも俺が勤めてからちゃんと出ているし、給料も下がったことはなかった。
企業内容は日常で使う電家製品とかに使うプラスチック部分の部品をつくっているというものだった。
俺が自分が所属している部署のフロアがある事務所のドアを開けると、山野美弥ちゃんという女性だけがいた。
この部署にいるのは全員で12人で、そのうちの2人だけが女性で、この美弥ちゃんはそのうちの1人だった。
この部署は一応は会社の花形と言われる、営業部だった。
でも、実際は花形という言葉なんて似合わないんだけど。だって、お客さまからのクレームとかがあり、頭下げに行ったりもしなきゃいけないわけだから。
まあ、でも、売り上げの成績がいい月は確かに気分が凄くいいけれど。
今ここにいる美弥ちゃんは小柄でくりっとした目と肩ぐらいの髪の長さで少し茶色ががっていて、多分、緩くパーマをあてている感じの女性で見た目は可愛らしい雰囲気の女性だった。
小柄なこともあってかわりと皆からファーストネームの方の“美弥ちゃん”と呼ばれていた。
俺もそう呼んでいる。
確か年齢も俺より3つ年下で23歳だったと思うから、俺は余計にそう呼んでしまうのかもしれないけど。
「あ、崎田さん、お疲れ様です。遅くまで大変ですね」
美弥ちゃんが俺に気づいてそう言った。
そして、その後、笑おうとしたみたいだけど、その顔は何処かひきつっているように見えた。
俺はおや? と思って、じっと美弥ちゃんを見たら、美弥ちゃんの目には涙が少し溜まっていた。
「お疲れ様。聞いていいかどうか解んないんだけど何かあったの? それに美弥ちゃんだってこんなに遅くまで残ってるし珍しいよね」
俺がそう言うと美弥ちゃんは少し戸惑ってから、
「……はい。実は今日、仕事で大きな失敗をしちゃいまして。で、さっきまでその仕事の尻拭いを木下部長と一緒にしてまして。勿論、木下部長にも大目玉くらっちゃいまして」
仕事の失敗は確かに褒められたものじゃないけれど、木下部長は癖のある人なので、きっとネチネチと長く怒られたんだろうな、可哀想になと俺は思った。
「そっか。まあ、でも、ずっと仕事を続けているとそういうこともあるよ。俺も今まで何回かヘマしたことあるし」
俺がそう言っても美弥ちゃんはまだ暗い表情のままだった。
「でも、私、この仕事を始めた時から失敗ばかりなんです。私って不器用で1つのことにばかり必死になっちゃうし、でも、こういった事務の仕事は1つのことだけしてればいいわけじゃないので、時々何で私ってこんなに出来ない子なんだろうって嫌になっちゃいます」
そう言った後、美弥ちゃんはやっとひいたかと思われたはずの涙がまた目から零れた。
そんな美弥ちゃんの傍に行き俺は頭を優しく撫でた。
あ、こんな風に触っちゃやばかったかな……と一瞬、思ったけど美弥ちゃんは別に気にしているような様子はなかった。
だから、俺は、
「そんな風に自分を低評価しなくていいよ。今まで沢山色んなことにチャレンジしてきたことに意味があるし、それに美弥ちゃんは優しいし」
「崎田さん……」
「俺、知ってるんだ。この前、仕事帰りに見たんだけど、美弥ちゃん、寒そうにしていた野良猫に自分が羽織っていたショールをかけていてあげていたのを」
「崎田さん」
「それにミスしたとはいえ、美弥ちゃんはその仕事に一生懸命に取り組んだんだから、そんなに気にしなくていいんだよ。それにもうその仕事はちゃんとなったんだろ?」
俺の言葉に美弥ちゃんはコクンと頷いた。
「ありがとうございます。そう言ってもらったら、少し心が軽くなりました」
美弥ちゃんはそう言って、その後、本格的に泣きだしてしまった。
そして、俺はそんな美弥ちゃんを思わず抱きしめてしまった。
だから、美弥ちゃんは今度は驚いて俺を見あげた。
俺と美弥ちゃんはわりと身長差があるから、美弥ちゃんはおもいっきり俺を見あげているという感じだ。
「崎田さん?」
涙が一杯溜まっている目で俺を見あげているから、何だかきゅんとしてしまう。
でも、俺はこの短時間の美弥ちゃんとのやりとりで気づいたことがある。
それは俺はきっとこの美弥ちゃんが好きなんだということ。
勿論、今まで人間的に好きだとは思っていたけど、今は恋の方の好きだということに気づいた。
だから、きっと、こんな風に抱きしめたりしてしまったのだと。
「ごめん、急に抱きしめたりして。でも、何か泣いてる美弥ちゃんを見てると堪らなくなって。で、これは美弥ちゃんといるこの短い時間の中で気づいたんだけど……どうやら俺は美弥ちゃんが好きみたいなんだ」
美弥ちゃんは驚いたあまりにか解らないけど流れ出ていた涙が止まったようだった。
そして、その代わりといったら可笑しいかもしれないけど、これでもかというくらいに大きく目を見開いた。
「いきなりこんなこと言ってごめん。でも、もし今恋人とかいなくて、俺でもいいかなとか思ってくれるなら、おつきあいしてもらえませんか?」
俺は唐突にこんなことまで言ってしまった。
でも、何故か勢いづいてしまった俺はこうせずにはいれなかった。
勿論、美弥ちゃんは急にこんな告白をされたら困るだろうし、俺に好意だってもってるわけじゃないとは思うけど。
でも、多分、俺は例えふられようがこういう風に告白したことをこれから後悔なんてしないと思った。
だけど、美弥ちゃんは、
「本当ですか? それなら凄く嬉しいです」
と言った。
俺は驚いて美弥ちゃんをじっと見降ろした。
美弥ちゃんは今、凄く嬉しいと言ったのとは対照的に不安そうな表情をしていた。
でも、俺はそのことは気にしないことにして、
「え? 俺の方が本当ですか? なんだけど。それって俺とつきあってもいいってことだよね?」
そう聞き返した。
「はい。でも、本当に私でよければですけど。私も崎田さんのことは前から優しくていい感じの方だなって思ってて……」
俺は美弥ちゃんの言葉を聞いて、再び美弥ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
自分で告白しといて何だけどまさかこんなドラマみたいな展開が自分に起こるなんて。
今日、朝、起きた時は、あー、また仕事かあなんて思ったりしていたけど、神様、今日をこんなに素敵な日にしてくれてありがとう。
なんてことを思いつつ、でも、俺は美弥ちゃんが恋人同士になってくれてもいいというなら、言っておきたいことがあったので、真面目に、
「じゃあ、美弥ちゃん、これからは俺に美弥ちゃんの傘にならせてくれる? 悲しい雨が美弥ちゃんに降ったら、俺がその雨を凌げるような傘になるから」
そう言った。
すると美弥ちゃんは一瞬、また、大きく目を開いて、でも、その後は凄く嬉しそうに、
「はい! その傘、一生大切にしたいです!」
そう笑顔で言ってくれた。
そして、俺達は恋人同士になり、その後は2人でずっと幸せな時間を過ごした。
そして、美弥は今でも時々、
「私が今最高に幸せだと思えるのはずっと俊介くんの傘が私を色んなことから守ってくれるからだよ」
そう言ってくれる。
END
2月の今は俺が勤めている会社はそんなに忙しい時期じゃないから、こんな時間だと多分、もう社員全員帰っているだろうと思って会社の前に着いたら、俺が所属している部署が使っているフロアの場所の電気が点いていた。
ちなみに俺が勤めている会社の建物は5階建てのビルで俺が所属しているフロアがあるのは2階だった。
そして、2階の俺が所属している部署があるフロアだけの電気が点いていた。
この会社に勤めているのは78人で、この会社は中小企業と呼ばれる部類に入る。
でも、売り上げのいい会社でボーナスも俺が勤めてからちゃんと出ているし、給料も下がったことはなかった。
企業内容は日常で使う電家製品とかに使うプラスチック部分の部品をつくっているというものだった。
俺が自分が所属している部署のフロアがある事務所のドアを開けると、山野美弥ちゃんという女性だけがいた。
この部署にいるのは全員で12人で、そのうちの2人だけが女性で、この美弥ちゃんはそのうちの1人だった。
この部署は一応は会社の花形と言われる、営業部だった。
でも、実際は花形という言葉なんて似合わないんだけど。だって、お客さまからのクレームとかがあり、頭下げに行ったりもしなきゃいけないわけだから。
まあ、でも、売り上げの成績がいい月は確かに気分が凄くいいけれど。
今ここにいる美弥ちゃんは小柄でくりっとした目と肩ぐらいの髪の長さで少し茶色ががっていて、多分、緩くパーマをあてている感じの女性で見た目は可愛らしい雰囲気の女性だった。
小柄なこともあってかわりと皆からファーストネームの方の“美弥ちゃん”と呼ばれていた。
俺もそう呼んでいる。
確か年齢も俺より3つ年下で23歳だったと思うから、俺は余計にそう呼んでしまうのかもしれないけど。
「あ、崎田さん、お疲れ様です。遅くまで大変ですね」
美弥ちゃんが俺に気づいてそう言った。
そして、その後、笑おうとしたみたいだけど、その顔は何処かひきつっているように見えた。
俺はおや? と思って、じっと美弥ちゃんを見たら、美弥ちゃんの目には涙が少し溜まっていた。
「お疲れ様。聞いていいかどうか解んないんだけど何かあったの? それに美弥ちゃんだってこんなに遅くまで残ってるし珍しいよね」
俺がそう言うと美弥ちゃんは少し戸惑ってから、
「……はい。実は今日、仕事で大きな失敗をしちゃいまして。で、さっきまでその仕事の尻拭いを木下部長と一緒にしてまして。勿論、木下部長にも大目玉くらっちゃいまして」
仕事の失敗は確かに褒められたものじゃないけれど、木下部長は癖のある人なので、きっとネチネチと長く怒られたんだろうな、可哀想になと俺は思った。
「そっか。まあ、でも、ずっと仕事を続けているとそういうこともあるよ。俺も今まで何回かヘマしたことあるし」
俺がそう言っても美弥ちゃんはまだ暗い表情のままだった。
「でも、私、この仕事を始めた時から失敗ばかりなんです。私って不器用で1つのことにばかり必死になっちゃうし、でも、こういった事務の仕事は1つのことだけしてればいいわけじゃないので、時々何で私ってこんなに出来ない子なんだろうって嫌になっちゃいます」
そう言った後、美弥ちゃんはやっとひいたかと思われたはずの涙がまた目から零れた。
そんな美弥ちゃんの傍に行き俺は頭を優しく撫でた。
あ、こんな風に触っちゃやばかったかな……と一瞬、思ったけど美弥ちゃんは別に気にしているような様子はなかった。
だから、俺は、
「そんな風に自分を低評価しなくていいよ。今まで沢山色んなことにチャレンジしてきたことに意味があるし、それに美弥ちゃんは優しいし」
「崎田さん……」
「俺、知ってるんだ。この前、仕事帰りに見たんだけど、美弥ちゃん、寒そうにしていた野良猫に自分が羽織っていたショールをかけていてあげていたのを」
「崎田さん」
「それにミスしたとはいえ、美弥ちゃんはその仕事に一生懸命に取り組んだんだから、そんなに気にしなくていいんだよ。それにもうその仕事はちゃんとなったんだろ?」
俺の言葉に美弥ちゃんはコクンと頷いた。
「ありがとうございます。そう言ってもらったら、少し心が軽くなりました」
美弥ちゃんはそう言って、その後、本格的に泣きだしてしまった。
そして、俺はそんな美弥ちゃんを思わず抱きしめてしまった。
だから、美弥ちゃんは今度は驚いて俺を見あげた。
俺と美弥ちゃんはわりと身長差があるから、美弥ちゃんはおもいっきり俺を見あげているという感じだ。
「崎田さん?」
涙が一杯溜まっている目で俺を見あげているから、何だかきゅんとしてしまう。
でも、俺はこの短時間の美弥ちゃんとのやりとりで気づいたことがある。
それは俺はきっとこの美弥ちゃんが好きなんだということ。
勿論、今まで人間的に好きだとは思っていたけど、今は恋の方の好きだということに気づいた。
だから、きっと、こんな風に抱きしめたりしてしまったのだと。
「ごめん、急に抱きしめたりして。でも、何か泣いてる美弥ちゃんを見てると堪らなくなって。で、これは美弥ちゃんといるこの短い時間の中で気づいたんだけど……どうやら俺は美弥ちゃんが好きみたいなんだ」
美弥ちゃんは驚いたあまりにか解らないけど流れ出ていた涙が止まったようだった。
そして、その代わりといったら可笑しいかもしれないけど、これでもかというくらいに大きく目を見開いた。
「いきなりこんなこと言ってごめん。でも、もし今恋人とかいなくて、俺でもいいかなとか思ってくれるなら、おつきあいしてもらえませんか?」
俺は唐突にこんなことまで言ってしまった。
でも、何故か勢いづいてしまった俺はこうせずにはいれなかった。
勿論、美弥ちゃんは急にこんな告白をされたら困るだろうし、俺に好意だってもってるわけじゃないとは思うけど。
でも、多分、俺は例えふられようがこういう風に告白したことをこれから後悔なんてしないと思った。
だけど、美弥ちゃんは、
「本当ですか? それなら凄く嬉しいです」
と言った。
俺は驚いて美弥ちゃんをじっと見降ろした。
美弥ちゃんは今、凄く嬉しいと言ったのとは対照的に不安そうな表情をしていた。
でも、俺はそのことは気にしないことにして、
「え? 俺の方が本当ですか? なんだけど。それって俺とつきあってもいいってことだよね?」
そう聞き返した。
「はい。でも、本当に私でよければですけど。私も崎田さんのことは前から優しくていい感じの方だなって思ってて……」
俺は美弥ちゃんの言葉を聞いて、再び美弥ちゃんをぎゅっと抱きしめた。
自分で告白しといて何だけどまさかこんなドラマみたいな展開が自分に起こるなんて。
今日、朝、起きた時は、あー、また仕事かあなんて思ったりしていたけど、神様、今日をこんなに素敵な日にしてくれてありがとう。
なんてことを思いつつ、でも、俺は美弥ちゃんが恋人同士になってくれてもいいというなら、言っておきたいことがあったので、真面目に、
「じゃあ、美弥ちゃん、これからは俺に美弥ちゃんの傘にならせてくれる? 悲しい雨が美弥ちゃんに降ったら、俺がその雨を凌げるような傘になるから」
そう言った。
すると美弥ちゃんは一瞬、また、大きく目を開いて、でも、その後は凄く嬉しそうに、
「はい! その傘、一生大切にしたいです!」
そう笑顔で言ってくれた。
そして、俺達は恋人同士になり、その後は2人でずっと幸せな時間を過ごした。
そして、美弥は今でも時々、
「私が今最高に幸せだと思えるのはずっと俊介くんの傘が私を色んなことから守ってくれるからだよ」
そう言ってくれる。
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