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第1章>牝鹿の伝言[ハイスクール・マーダー]

Log.28 謎めく

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 その後無事に警察が来て、キイノは連行されていった。だがその前に、彼女は俺にこう言い残した。美頼と千夜は薪原と一緒に保健室で待っていて、俺とキイノは昇降口の下駄箱前にいた。

 「あの……言おうかどうしようか迷ったんですけど、言っちゃいます。実はわたし、ひとつ隠してたことがあるんです」

 「え?なにを?」

 「わたしがフミちゃんを落としてからすぐ、ほんとすぐに、メールが来たんです。差出人がわからないメールが。そこに、今のままだと捕まるからダイイングメッセージを偽装しろみたいなことが書かれていて……」

 とてつもなく気にかかる話に、俺は顔をしかめる。

 「つまりこれはそのメールに誘発されて起こったことだと?」

 キイノは必死に頷いた。

 「そうなんです!そうじゃないとわたし、こんなことしません……パニックになって何も考えられずに警察を呼ぶはずです。人のせいにするつもりは無いですけど、私ほんとに自分がしなくちゃいけないことを分からなくなっちゃってて……」

 「そのメールってのは……」

 「それが無いから言うのを迷ってたんです……」
 
 少し声が小さくなるキイノ。俺が黙っていると、警察官が警察車両を降りてこちらへ向かってくるのが見えた。焦った俺の声は少し大きくなった。

 「どういう事だ」

 「なんか、メールを開いた時には気づかなかったんですけど、変なウイルスみたいなものが入ってたらしくて……携帯自体が壊れちゃったんです」

 彼女は自分の携帯を開いてこちらに見せる。その画面は黒いわけではなく、いろんな色が混ざってノイズがかかっている様になっていた。見てると気分が悪くなりそうだ。これを俺に話したってことはつまり……

 「わかった。その謎を俺に頼むと?」

 「本当なら自分で解き明かしたいですけど……わたしはいつ自由になるかわかりませんから」

 そう言って弱々しい笑顔を見せる。ひとりの警察官が話しかけてきた。ダイイングメッセージの件からいろいろと話さなければなさそうだ。俺らも後で事情聴取されることを知らされ、キイノとはこれでもう会えないらしい。

 「じゃあまたねです。アキさん」

 『さようなら』ではなく『またね』。彼女はそう言った。

 「よろしくお願いしますね」

 「ああ。任せとけ」

 様々な意味を込めて、俺はそう返した。三川の死やキイノを弄んだ奴がいる。その事実だけでも、俺を怒らせるのには充分だった。

 ただ、これが俺の人格交代と関係があるなんて思いもしなかったが。それがわかるのは、ずっと後のお話。

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