25 / 92
第1章>牝鹿の伝言[ハイスクール・マーダー]
Log.23 明かす
しおりを挟む
同性愛者。つまり……三川が、レズ?
そう聞くと、俺の中でも思い当たる節がある。
彼女自身が『特に女子生徒に関しては調べ尽くしてある』と言っていたこと。
誇りにするほど入れ込んでいた新聞部ではなく、推理問答部に入ったこと。これはキイノによほど惚れ込んでいたと思えば説明がつくだろう。
つまり自分が気になる女子に関しては念密に調べていたとなると、佐藤陽の家庭内事情について知るに至ったのも納得がいく。
そう考えると、つまり陽にも興味があったということは……
「まさか……」
「そのまさかですよ、私、色々といやらしいことされたんです」
可愛い顔してなんてこと言うんだ。俺は気まずくなってつい顔をそらしてしまう。
「私は全然そんな気はないんですよ?でも男の人にやられるよりはマシだし、それで私の学校生活が平穏で済むならいいかなって思ってました。ただ、それを兄さんに勘付かれちゃったんです」
「……そういうことか。それで喧嘩になったと」
陽は深く頷く。部活中までもしつこく問い詰めてくるので、我慢の限界だったと彼女は続けた。
「わかった、とりあえずあとはお兄さんに話を聞いてみるよ」
そう俺が話すと、陽は今までで一番安らかな表情をした。一気に息を吸い込むと空気が軽くなっているように感じた。
そしてまた本題に戻る。湖影の話だ。彼が屋上までたどり着けたこと、そして意味深な発言。『お前、ここでなんか見なかったか』
ほぼ確実だろう。
湖影がこちらへ歩いてくる。俺の前まで来ると、こちらの顔を少し伺って、その場にしゃがみ込んだ。
「ふぅ、何でも聞いてくれ」
「じゃあまず今回の事件について整理してもいいか?被害者は三川文、校舎脇の花壇で遺体が発見された。何で彼女は死んだんだっけ」
「なんでって、屋上から落ちたんだろ?」
「何でそれを知ってるんだ?」
淡々と進む会話。その最後に自分がした失言を理解し、湖影は青ざめた。
確認すると、俺は最初から、保健室に集めた時から、この事件については遺体が発見されたとしか言っていない。落下死しただなんて、目撃者か犯人しか知り得ないはずなのだ。
これで俺は湖影が三川の死を見届けていたと確信した。ただ、まだ事件は解決とは言えなかった。
陽の話によると、彼女が教室を飛び出してから湖影があとを追いかけている。そのわずかなタイミングの差で、湖影が落ちていく三川を目撃した。つまり、その時屋上には二人ともいなかったことになる。
では三川の自殺なのか。だがそれだと屋上についていた足跡の説明がつかない。
「頼む、本当のことを話してくれないか?」
俺は湖影に問いかける。静寂が流れる。目を泳がせる彼の鼓動が今にも聞こえてきそうだ。すると、湖影はついに俺の方を向いた。その目は微かにさっきとは違った。
「わかった。話す。ただ、信じてくれ。俺は三川を殺してない。ただあのダイイングメッセージを偽装しただけなんだ。ショックでどうかしてたんだよ……」
そこまで言うと、彼はドスッと背中を壁に預け、肩の力を抜いた。
そして、ゆっくりと話し始めた。
そう聞くと、俺の中でも思い当たる節がある。
彼女自身が『特に女子生徒に関しては調べ尽くしてある』と言っていたこと。
誇りにするほど入れ込んでいた新聞部ではなく、推理問答部に入ったこと。これはキイノによほど惚れ込んでいたと思えば説明がつくだろう。
つまり自分が気になる女子に関しては念密に調べていたとなると、佐藤陽の家庭内事情について知るに至ったのも納得がいく。
そう考えると、つまり陽にも興味があったということは……
「まさか……」
「そのまさかですよ、私、色々といやらしいことされたんです」
可愛い顔してなんてこと言うんだ。俺は気まずくなってつい顔をそらしてしまう。
「私は全然そんな気はないんですよ?でも男の人にやられるよりはマシだし、それで私の学校生活が平穏で済むならいいかなって思ってました。ただ、それを兄さんに勘付かれちゃったんです」
「……そういうことか。それで喧嘩になったと」
陽は深く頷く。部活中までもしつこく問い詰めてくるので、我慢の限界だったと彼女は続けた。
「わかった、とりあえずあとはお兄さんに話を聞いてみるよ」
そう俺が話すと、陽は今までで一番安らかな表情をした。一気に息を吸い込むと空気が軽くなっているように感じた。
そしてまた本題に戻る。湖影の話だ。彼が屋上までたどり着けたこと、そして意味深な発言。『お前、ここでなんか見なかったか』
ほぼ確実だろう。
湖影がこちらへ歩いてくる。俺の前まで来ると、こちらの顔を少し伺って、その場にしゃがみ込んだ。
「ふぅ、何でも聞いてくれ」
「じゃあまず今回の事件について整理してもいいか?被害者は三川文、校舎脇の花壇で遺体が発見された。何で彼女は死んだんだっけ」
「なんでって、屋上から落ちたんだろ?」
「何でそれを知ってるんだ?」
淡々と進む会話。その最後に自分がした失言を理解し、湖影は青ざめた。
確認すると、俺は最初から、保健室に集めた時から、この事件については遺体が発見されたとしか言っていない。落下死しただなんて、目撃者か犯人しか知り得ないはずなのだ。
これで俺は湖影が三川の死を見届けていたと確信した。ただ、まだ事件は解決とは言えなかった。
陽の話によると、彼女が教室を飛び出してから湖影があとを追いかけている。そのわずかなタイミングの差で、湖影が落ちていく三川を目撃した。つまり、その時屋上には二人ともいなかったことになる。
では三川の自殺なのか。だがそれだと屋上についていた足跡の説明がつかない。
「頼む、本当のことを話してくれないか?」
俺は湖影に問いかける。静寂が流れる。目を泳がせる彼の鼓動が今にも聞こえてきそうだ。すると、湖影はついに俺の方を向いた。その目は微かにさっきとは違った。
「わかった。話す。ただ、信じてくれ。俺は三川を殺してない。ただあのダイイングメッセージを偽装しただけなんだ。ショックでどうかしてたんだよ……」
そこまで言うと、彼はドスッと背中を壁に預け、肩の力を抜いた。
そして、ゆっくりと話し始めた。
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
俺のタマゴ
さつきのいろどり
ミステリー
朝起きると正体不明の大きなタマゴがあった!主人公、二岾改(ふたやま かい)は、そのタマゴを温めてみる事にしたが、そのタマゴの正体は?!平凡だった改の日常に、タマゴの中身が波乱を呼ぶ!!
※確認してから公開していますが、誤字脱字等、あるかも知れません。発見してもフルスルーでお願いします(汗)
ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける
気ままに
ホラー
家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!
しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!
もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!
てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。
ネタバレ注意!↓↓
黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。
そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。
そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……
"P-tB"
人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……
何故ゾンビが生まれたか……
何故知性あるゾンビが居るのか……
そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
「蒼緋蔵家の番犬 1~エージェントナンバーフォー~」
百門一新
ミステリー
雪弥は、自身も知らない「蒼緋蔵家」の特殊性により、驚異的な戦闘能力を持っていた。正妻の子ではない彼は家族とは距離を置き、国家特殊機動部隊総本部のエージェント【ナンバー4】として活動している。
彼はある日「高校三年生として」学園への潜入調査を命令される。24歳の自分が未成年に……頭を抱える彼に追い打ちをかけるように、美貌の仏頂面な兄が「副当主」にすると案を出したと新たな実家問題も浮上し――!?
日本人なのに、青い目。灰色かかった髪――彼の「爪」はあらゆるもの、そして怪異さえも切り裂いた。
『蒼緋蔵家の番犬』
彼の知らないところで『エージェントナンバー4』ではなく、その実家の奇妙なキーワードが、彼自身の秘密と共に、雪弥と、雪弥の大切な家族も巻き込んでいく――。
※「小説家になろう」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。
広くて狭いQの上で
白川ちさと
ミステリー
ーーあなたに私の学園の全てを遺贈します。
私立慈従学園 坂東和泉
若狭透は大家族の長男で、毎日のように家事に追われている。
そんな中、向井巧という強面の青年が訪れて来た。彼は坂東理事長の遺言を透に届けに来たのだ。手紙には学園長と縁もゆかりもない透に学園を相続させると書かれていた――。
四人の学生が理事長の遺した謎を解いていく、謎解き青春ミステリー。
うつし世はゆめ
ねむていぞう
ミステリー
「うつし世はゆめ、よるの夢こそまこと」これは江戸川乱歩が好んで使っていた有名な言葉です。その背景には「この世の現実は、私には単なる幻としか感じられない……」というエドガ-・アラン・ポ-の言葉があります。言うまでもなく、この二人は幻想的な小説を世に残した偉人です。現実の中に潜む幻とはいったいどんなものなのか、そんな世界を想像しながら幾つかの掌編を試みてみました。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる