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第1章>牝鹿の伝言[ハイスクール・マーダー]

Log.23 明かす

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 同性愛者。つまり……三川が、レズ?

 そう聞くと、俺の中でも思い当たる節がある。

 彼女自身が『特に女子生徒に関しては調べ尽くしてある』と言っていたこと。

 誇りにするほど入れ込んでいた新聞部ではなく、推理問答部に入ったこと。これはキイノによほど惚れ込んでいたと思えば説明がつくだろう。

 つまり自分が気になる女子に関しては念密に調べていたとなると、佐藤陽の家庭内事情について知るに至ったのも納得がいく。
 
 そう考えると、つまり陽にも興味があったということは……

 「まさか……」

 「そのまさかですよ、私、色々といやらしいことされたんです」

 可愛い顔してなんてこと言うんだ。俺は気まずくなってつい顔をそらしてしまう。

 「私は全然そんな気はないんですよ?でも男の人にやられるよりはマシだし、それで私の学校生活が平穏で済むならいいかなって思ってました。ただ、それを兄さんに勘付かれちゃったんです」

 「……そういうことか。それで喧嘩になったと」

 陽は深く頷く。部活中までもしつこく問い詰めてくるので、我慢の限界だったと彼女は続けた。

 「わかった、とりあえずあとはお兄さんに話を聞いてみるよ」

 そう俺が話すと、陽は今までで一番安らかな表情をした。一気に息を吸い込むと空気が軽くなっているように感じた。

 そしてまた本題に戻る。湖影こかげの話だ。彼が屋上までたどり着けたこと、そして意味深な発言。『お前、ここでなんか見なかったか』

 ほぼ確実だろう。

 湖影がこちらへ歩いてくる。俺の前まで来ると、こちらの顔を少し伺って、その場にしゃがみ込んだ。

 「ふぅ、何でも聞いてくれ」

 「じゃあまず今回の事件について整理してもいいか?被害者は三川文、校舎脇の花壇で遺体が発見された。何で彼女は死んだんだっけ」

 「なんでって、屋上から落ちたんだろ?」

 「何でそれを知ってるんだ?」

 淡々と進む会話。その最後に自分がした失言を理解し、湖影は青ざめた。

 確認すると、俺は最初から、保健室に集めた時から、この事件については遺体が発見されたとしか言っていない。落下死しただなんて、目撃者か犯人しか知り得ないはずなのだ。

 これで俺は湖影が三川の死を見届けていたと確信した。ただ、まだ事件は解決とは言えなかった。

 陽の話によると、彼女が教室を飛び出してから湖影があとを追いかけている。そのわずかなタイミングの差で、湖影が落ちていく三川を目撃した。つまり、その時屋上には二人ともいなかったことになる。

 では三川の自殺なのか。だがそれだと屋上についていた足跡の説明がつかない。

 「頼む、本当のことを話してくれないか?」

 俺は湖影に問いかける。静寂が流れる。目を泳がせる彼の鼓動が今にも聞こえてきそうだ。すると、湖影はついに俺の方を向いた。その目は微かにさっきとは違った。

 「わかった。話す。ただ、信じてくれ。俺は三川を殺してない。ただあのダイイングメッセージを偽装しただけなんだ。ショックでどうかしてたんだよ……」

 そこまで言うと、彼はドスッと背中を壁に預け、肩の力を抜いた。

 そして、ゆっくりと話し始めた。
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