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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]

Log.82 テガカリシーク

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 「結局、からくり人形の話は全て嘘だったのか?」

 「ええ……祖父がこのカラクリ屋敷を残したのは本当よ。でも人形はどこにもないわ」

 作り話だったのか……元から半信半疑だったが、道理で筋が通らないわけだ。今思えば、みんなの演技だったとすれば全てに説明がつく。

 最初からずっと上手く喋れてなかった美頼。こいつはただ演技が下手で棒読みだっただけだ。千夜が不自然に名乗り出たのだって、俺の本性を引き出すためにわざと目の前で死んだフリをしたのだ。麻尋はドッキリだと思ってるから最初から無神経なことしか口にしない。そして辻堂は俺の人格のことばかり聞いてきた。

 「まんまと騙されたよ。笑えてきた」

 「ごめんアキ!!ほんっとにごめん!!!」

 「お前はずっと棒読みだったけどな」

 「ぷふっ……ちょっと待ってひーちゃん。あ、ちょっと、いや違う今のは思い出し笑いでそこは曲がらない骨だから、だからなんで曲がるのぉっ!??!いだぁぁぁぁ」

 俺のツッコミに、美頼は顔を真っ赤にして頬を膨らませる。そして吹き出した千夜が犠牲となった。

 「ちなみにそれが理由でバレてしまわないか心配してたのよ。だから美頼さんに先に落ちてもらったの。ちょうど薪原さんが動いてくれたから」

 「辻堂さんまでぇ……私そんなに大根役者ぁ……?」

 美頼はだいぶ涙声だ。その真下で千夜が泡を吹いているが。

 今回の答え合わせはひと通り済んだだろう。いや、まだわかっていない点もあったか。

 「問題はメールの差出人だな」

 「ええ。しかも私の携帯から薪原さん達に送ったことにもできる技術の持ち主だわ」

 「ハッキングってことか」

 キイノの顔が脳裏に浮かぶ。最初の事件もそうだ。吉田希猪乃よしだきいのがダイイングメッセージを書き換えてしまった最初の事件。あの時もウイルス付きの犯行助長メールが事の発端だった。

 そこまでのハッキングをしたのは、あのデスゲームの作者、蒲通咲夜がまどおりさくやならあり得るだろう。だが今となっては彼はもういない。おそらく彼の裏にいたであろうもう1人の人物……。

 「だめだ……動機が一切分からねえ」

 「そうね……父にも聞いてみるけど、よほど用意周到な人なんでしょうね。証拠をなに一つ残さないなんて」

 初対面の女の決めつけによって俺は仲間に裏切られたはずなのに、なぜだかもう腹は立っていなかった。その原因のメールは俺が辻堂を疑う原因でもあったし、忘れてしまいそうだがクロとの人格交代まで起こったのだ。情報量が多すぎる。

 そういえばシロは、クロが何かの最後の切り札になるとかで誰にもバラすなと言っていた。あれはなんだ?外から干渉を受けたってどういう意味だ?

 「んんーっ!どうあがいても情報過多!!!」

 俺は半分投げやりに両手を広げて、また床に横になる。

 「ええと、とりあえずここから出ましょうか……秋君、今回は本当にごめんなさい。いくら謝罪してもしきれない……」

 「あーもういいって、気にすんな」

 「なんか今日の話、めちゃくちゃもやもやするね」

 そう言ったのは美頼だ。相変わらず古戸霧と麻尋はイチャイチャしている。いや、一方的に古戸霧がやられている。

 「なんかここまでわからないことだらけだと……そうだ、アキのお父さんの研究所って、僕たちでも行けるの?」

 「あぁ、俺もちょうどそう考えてたところだ」

 URAY脳科学研究所。あそこなら俺の父を知っている人もいるだろうし、俺の人格についても何かわかるかもしれない。

 「奇遇ね。私もあなたを試し……ごめんなさい、調べてみて、何も出てこなかったらそっちに行こうと思っていたの。父の捜査資料は見たけど、実際に現場を確かめたことはなかったから」

 辻堂もそう言った。確かに、こいつの母親が呼ばれた経緯とかも知りたい。

 「決まりだな」

 推理問答部の次の遠征先は、URAY研究所だ。美頼も、千夜も、辻堂も、俺の言葉に頷いた。

 「何が決まったんですか?あ、マヒロさんそこはぁ!」

 その中でまた古戸霧の甲高い声が聞こえる。最初から最後まで能天気な2人だった。







~第3章 完~
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