上 下
15 / 92
第1章>牝鹿の伝言[ハイスクール・マーダー]

Log.13 懐しむ

しおりを挟む
 そこに居たのは、入学式の日コンビニで働いていた薪原さんだった。ただ、その時の上品な印象とはだいぶ違っていた。
 
 伸びた前髪で半分程隠れた顔。小麦色の肌に、半袖セーラー。上に来ていたと思われるセーターは腰回りで巻かれて結ばれていた。そして腕を組んで戸の脇の壁に寄りかかり、こちらを眺めるそんな姿……それは若干不良を彷彿とさせてもおかしくなかった。そこにまだ何処となく既視感があるが……。

 三川が振り返って説明し始める。

 「彼女は薪原麻尋まきはらまひろさんだ。身長164センチ体重55キログラム。バストは……」

 「ちょちょちょちょ、え?なになに、ミカちんプライバシーは?!なんでウチのことそんな知ってるんさ」

 ペラペラと聞いてもないことまで喋り出す三川に、薪原が慌てる。すると三川はまた得意げになって、

 「元新聞部員の私の情報網をなめ……」

 「言わせねーよ?!」


 ーー今の時刻は15時40分頃。まだ廊下の方はたまに生徒達が通る声がする。三川は床にきちんと正座させられて、反省している格好を見せている。俺たちはその横で、話しやすいように椅子を並べて座っている。つい先ほどお互いの自己紹介を軽く済ませたところだ。

 「それで……なんでまたこんな部活に……」

 「おい」

 「……なんでこの部活に来たの?薪原さん」

 本人からは親しくしてねと言われつつ、敬語になってしまう千夜。薪原の表情が少し変わった。

 「いやぁ……ウチは別にどこでもよかったんだけどね。一週間前くらいからかな。お母さん達が推理問答部に入りなさいって言い始めたのは」

 美頼がとっさに口を開く。膝の上にキイノを乗せながら。

 「え??なんで??」

 「ウチもわかんないんさ。まあでもそんなわけでここに入部するってこと」

 言いながらポニテをいじる薪原。近いうちにご両親を伺う時が来るかもしれない。隣で千夜が口を開く。

 「へぇー、なんか裏がありそうだね」

 「ありまくりじゃないの」

 美頼はそう言ってキイノの髪を縛っている。キイノの方はくすぐったそうに顔をしかめていた。薪原が特に何の変哲も無いコンピューター室を見回す。

 「てかさ、ここってどーゆうことしてるん?」

 「いやぁーまだそんなハッキリとした活動はできてないんだよね。僕はさっきまでアキとダイイングメッセージについて話し合ってたけど」

 すると今まで黙っていた三川が反応した。

 「それはあれか?佐藤の話か?」

 「え、あ、うん。そうだけど……どうしたの三川……さん」

 「……呼び捨てでいいんだが。いや、実は知り合いに詳しい奴がいてな。私にとって馴染みのある話なのだ。しかし今時現実でダイイングメッセージなど……私だったらカタカナだろうなあ」

 ーーなんだいきなり。フラグか?

 「え、なんでカタカナ?」

 「ひらがなよりも曲線が少なく書きやすいだろう?」

 「あ、確かに!!!」

 キイノを膝の上で寝かせながら話に参加しだす美頼。みんなで何となくミステリーチックな意見を出し合う。なんだか部活っぽい。

 ふと俺は薪原を見る。さっきから薪原への既視感を、同じ学校だったからという理由だけで済ませてはいけない気がするのはなぜだろう。

 「どうしたん秋山。さっきからウチに見惚れちゃって」

 一瞬反応が遅れて、苦笑した。薪原はあだ名をつけるのが好きなようだが、実は俺のあだ名は秋山になってしまったのだ。少し足掻いてみたのだが、もう諦めた。

 「あぁ、なんか、薪原って誰かに似てるよなって思ってさ」

 「あ、それ私もー。コンビニの時から思ってたけど、やっぱどっかで見たことあるよ」

 美頼が声を上げた。お前もか。

 「ほえーなんでだろ」

 不思議そうに首を傾げながら、薪原は両手を思い切りあげて伸びをする。それを見てどこか懐かしい、暖かい気持ちになった。

 「あ、そうだ」

 「ん、どした」

 横に座る千夜が振り向いた。俺が言葉を選ぶ少しの間、沈黙と共にキイノの寝息が微かに聞こえてくる。

 「……迷ったけどみんなにも言おうと思う。えっと……俺の父さんの死について一緒に推理し合わないか?」

 えっ、という顔になったのは、父さんの死を知らない薪原と三川だけだ。俺は続ける。

 「11年前の火事のことを、詳しく思い出さないといけない気がするんだ」

 できるだけ、早く。人格交代が起こってから俺はそんな風に感じていた。美頼と千夜は少し心配そうに俺の顔を伺っている。薪原と三川もなにか言いたげだ。キイノはぐっすりと眠っているようだ。

 そして詳しく話そうとした時だった。

 ーー俺は自分がひどい頭痛にしかめっ面をしていることに気づいた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

俺のタマゴ

さつきのいろどり
ミステリー
朝起きると正体不明の大きなタマゴがあった!主人公、二岾改(ふたやま かい)は、そのタマゴを温めてみる事にしたが、そのタマゴの正体は?!平凡だった改の日常に、タマゴの中身が波乱を呼ぶ!! ※確認してから公開していますが、誤字脱字等、あるかも知れません。発見してもフルスルーでお願いします(汗)

少年の嵐!

かざぐるま
ミステリー
小6になった春に父を失った内気な少年、信夫(のぶお)の物語りです。イラスト小説の挿絵で物語を進めていきます。

ゾンビだらけの世界で俺はゾンビのふりをし続ける

気ままに
ホラー
 家で寝て起きたらまさかの世界がゾンビパンデミックとなってしまっていた!  しかもセーラー服の可愛い女子高生のゾンビに噛まれてしまう!  もう終わりかと思ったら俺はゾンビになる事はなかった。しかもゾンビに狙われない体質へとなってしまう……これは映画で見た展開と同じじゃないか!  てことで俺は人間に利用されるのは御免被るのでゾンビのフリをして人間の安息の地が完成するまでのんびりと生活させて頂きます。  ネタバレ注意!↓↓  黒藤冬夜は自分を噛んだ知性ある女子高生のゾンビ、特殊体を探すためまず総合病院に向かう。  そこでゾンビとは思えない程の、異常なまでの力を持つ別の特殊体に出会う。  そこの総合病院の地下ではある研究が行われていた……  "P-tB"  人を救う研究のはずがそれは大きな厄災をもたらす事になる……  何故ゾンビが生まれたか……  何故知性あるゾンビが居るのか……  そして何故自分はゾンビにならず、ゾンビに狙われない孤独な存在となってしまったのか……

「蒼緋蔵家の番犬 1~エージェントナンバーフォー~」

百門一新
ミステリー
 雪弥は、自身も知らない「蒼緋蔵家」の特殊性により、驚異的な戦闘能力を持っていた。正妻の子ではない彼は家族とは距離を置き、国家特殊機動部隊総本部のエージェント【ナンバー4】として活動している。  彼はある日「高校三年生として」学園への潜入調査を命令される。24歳の自分が未成年に……頭を抱える彼に追い打ちをかけるように、美貌の仏頂面な兄が「副当主」にすると案を出したと新たな実家問題も浮上し――!? 日本人なのに、青い目。灰色かかった髪――彼の「爪」はあらゆるもの、そして怪異さえも切り裂いた。 『蒼緋蔵家の番犬』 彼の知らないところで『エージェントナンバー4』ではなく、その実家の奇妙なキーワードが、彼自身の秘密と共に、雪弥と、雪弥の大切な家族も巻き込んでいく――。 ※「小説家になろう」「ノベマ!」「カクヨム」にも掲載しています。

全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―

入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。 遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。 本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。 優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。

広くて狭いQの上で

白川ちさと
ミステリー
ーーあなたに私の学園の全てを遺贈します。   私立慈従学園 坂東和泉  若狭透は大家族の長男で、毎日のように家事に追われている。  そんな中、向井巧という強面の青年が訪れて来た。彼は坂東理事長の遺言を透に届けに来たのだ。手紙には学園長と縁もゆかりもない透に学園を相続させると書かれていた――。  四人の学生が理事長の遺した謎を解いていく、謎解き青春ミステリー。

7月は男子校の探偵少女

金時るるの
ミステリー
孤児院暮らしから一転、女であるにも関わらずなぜか全寮制の名門男子校に入学する事になったユーリ。 性別を隠しながらも初めての学園生活を満喫していたのもつかの間、とある出来事をきっかけに、ルームメイトに目を付けられて、厄介ごとを押し付けられる。 顔の塗りつぶされた肖像画。 完成しない彫刻作品。 ユーリが遭遇する謎の数々とその真相とは。 19世紀末。ヨーロッパのとある国を舞台にした日常系ミステリー。 (タイトルに※マークのついているエピソードは他キャラ視点です)

グリム・リーパーと呼ばれる男

くろとら
ミステリー
グリム・リーパー周囲からそう呼ばれている大学生海道零時はある事件をきっかけに同じ大学に通う女子生徒大原葵と知り合うことになった。 零時は持ち前の推理力と人には無い特別な特殊能力を駆使して警察でも頭を抱える怪奇事件に次々と挑むことになった。 様々な怪奇事件を通して零時の周りには次第に様々な人達が集まって来るようになった。

処理中です...