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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]

Log.71 タンテイゲーム

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 いつの間にか男は消えていた。と思ったが、向こうの部屋が暗くなり、壁がただの鏡に戻っただけだった。

 騒然とする室内。

 美頼はキョロキョロと周りの顔色を伺っている。千夜は斜め下の床をじっと見つめている。麻尋は立ち上がって鏡の方を調べている。辻堂は口元に手を当てながら険しい顔つきになっている。

 この中に殺人犯がいる?しかも11年前の?

 何を言っているんだ。当時はまだみんな幼い子供じゃないか。

 とりあえず俺は辻堂に問いかけた。

 「辻堂。あの男は誰なんだ」

 「人形よ」

 目をそらしながら、彼女は答える。

 「人形?あれが?」

 「言ったでしょ。人形と会話ができるって」

 あの男がからくり人形というわけか。自分の意思を持って動いてるようにしか見えないのだが。辻堂は肩にかかったツインテールを払い除けて、続けた。

 「ここも例のからくり屋敷の中よ。見たことある」

 そう言って、下唇を噛む。麻尋が鏡から離れ、壁の方を探り始める。逃げ道がないか見ているのだろう。だがその瞬間、辻堂は麻尋に向かって叫んだ。

 「動かないでっ!!!」

 「なっ、どしたのモモちー!?」

 「ここはからくり屋敷なのよ。さっき古戸霧君が落ちたところ見たでしょ?ああいう仕掛けがあるかもしれないの。私は全部把握しきれてないから、あまり動かないでくれる?」

 「で、でも、逃げる道を探さないといけないんじゃない……?」

 震え声でそう言ったのは美頼だ。横にいた千夜が頷く。

 「みんな意見は正しいよ。とりあえず真ん中に集まって話し合おう」

 「はいよー」

 麻尋が軽い返事をした。同級生が一人死んだというのに、こいつはなんとも思ってないのだろうか。俺は今でも古戸霧の胸からじんわりと滲む血液が、脳裏から離れないというのに。

 「お前ら少し冷静すぎないか……?同級生が一人死んでるんだぞ」

 「そうかしら。そう言うあなたも同じようなものじゃない」

 辻堂に冷たく言い返されて、少しイラっとする。確かに自分の命が保証されてない今は、状況把握の方が大事かもしれない。俺は辻堂に質問することにした。

 「あの男……人形が言ってたお前のためってのはなんなんだ辻堂。話を聞かせてもらおうか」

 「仕方ないわね……」

 皆の注目が彼女に集まる。この事件の原因は何なのか、俺達には知る権利があるだろう。

 「11年前、私がまだ幼かった頃の話よ。あの人形のことはイムって呼んでた。私の母は医者で、父は警察官だったのだけれど、そのせいで幼少期から1人の時間が多かったわ。そういう時はここでイムと色々話してたの。この屋敷で」

 でも……と彼女は続けた。

 「突然。ほんとに突然だった。私の母が何者かに殺されたのよ」

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