上 下
76 / 92
第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]

Log.70 チマミレプール

しおりを挟む

 *

 「ってて……」

 スタンガンか何かでやられたらしい。右腕がまだ少し痺れていた。身体を起こすと、真っ白な壁が目に入る。俺がいるのは、学校の教室の半分くらいの部屋。鏡張りの壁が一面あり、白い部屋を映し出している。広く感じるが、実際はそこまで広くない。

 床には俺の他にも何人か倒れていた。美頼に麻尋、そして千夜。辻堂も一緒にいる。だが、古戸霧はいなかった。みんな気を失ったままだ。

 「今度は一体何が起こってるんだ……?」

 前も似たような経験をしたなとうんざりしていると、美頼がうめきながら起き上がった。

 「あ、アキ」

 「大丈夫か?俺が気絶してからどうなったんだ?」

 「わ、私もよく分かってなくて……アキが倒れたらすぐに目の前が真っ暗に……」

 だいぶ怯えているようだ。順に他の3人も目を覚ました。皆で顔を見合わせていると、辻堂が顔をしかめる。

 「レイは?レイはどこ?」

 「あ、ほんとだレイちゃんがいない!」

 するとカチッと軽い音がした。鏡張りの壁が透けて、電気のついた奥の部屋が見えるようになる。マジックミラーだったらしい。

 「な……」

 俺はそこに見えたものに唖然とした。先程の男がフードを被って立っている。変わらず全身黒ずくめだ。そしてその横には大きめの椅子に古戸霧が座っていた。

 全身をロープで縛り付けられながら。

 「今から君たちには推理をしてもらおうと思うが、変な気を起こしてもらっては困る。そこで、この古戸霧レイ君には犠牲になってもらうことにした」

 ボイスチェンジャーを通しているらしく、電子的な男の声がそう告げる。俺が質問を投げかけようとすると、辻堂が真っ先に叫んだ。それは今までと雰囲気がまるで違っていた。

 「あなた、こんなことして一体何のつもり!?」

 「君のことを思ってのことだよ。モモハ君」

 そう言うと、男は右手を振り上げた。その手には大きなナイフが握られていた。猿ぐつわをはめられた古戸霧は、必死に抵抗している。だが次の瞬間、彼の胸にナイフが思いっきり突き立てられた。

 ナイフが引き抜かれ血が滲んだかと思うと、一瞬で古戸霧はだらりとして動かなくなった。椅子から滴る出血は段々と床に広がり、血の池が出来上がる。その一部始終に俺らは言葉を失った。

 「彼は11年前、アメリカにいたようだから。可哀想だが、見世物になってもらったよ」

 11年前……?

 「早速本題に入ろう。君たちの中に人殺しが混じっているんだ。その人殺しを見つけ出して欲しい」

 理解の範疇を超えている。超えまくっている。ただでさえ古戸霧が目の前で殺された事実に目を疑っているのに。

 「11年前の人殺しを殺せ。それが今から君たちに課す任務だ。言うことを聞かなければこの子みたいに全員の命を奪うまでさ」

 話しながら古戸霧をつつく。彼の座る椅子が倒れたかと思えばそのまま消えた。見ると床に穴が開いていた。そしてまた閉じた。

 要するにこれは推理問答部員5名の、命をかけた探り合いというわけだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

密室島の輪舞曲

葉羽
ミステリー
夏休み、天才高校生の神藤葉羽は幼なじみの望月彩由美とともに、離島にある古い洋館「月影館」を訪れる。その洋館で連続して起きる不可解な密室殺人事件。被害者たちは、内側から完全に施錠された部屋で首吊り死体として発見される。しかし、葉羽は死体の状況に違和感を覚えていた。 洋館には、著名な実業家や学者たち12名が宿泊しており、彼らは謎めいた「月影会」というグループに所属していた。彼らの間で次々と起こる密室殺人。不可解な現象と怪奇的な出来事が重なり、洋館は恐怖の渦に包まれていく。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

13歳女子は男友達のためヌードモデルになる

矢木羽研
青春
写真が趣味の男の子への「プレゼント」として、自らを被写体にする女の子の決意。「脱ぐ」までの過程の描写に力を入れました。裸体描写を含むのでR15にしましたが、性的な接触はありません。

処理中です...