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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]

Log.70 チマミレプール

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 「ってて……」

 スタンガンか何かでやられたらしい。右腕がまだ少し痺れていた。身体を起こすと、真っ白な壁が目に入る。俺がいるのは、学校の教室の半分くらいの部屋。鏡張りの壁が一面あり、白い部屋を映し出している。広く感じるが、実際はそこまで広くない。

 床には俺の他にも何人か倒れていた。美頼に麻尋、そして千夜。辻堂も一緒にいる。だが、古戸霧はいなかった。みんな気を失ったままだ。

 「今度は一体何が起こってるんだ……?」

 前も似たような経験をしたなとうんざりしていると、美頼がうめきながら起き上がった。

 「あ、アキ」

 「大丈夫か?俺が気絶してからどうなったんだ?」

 「わ、私もよく分かってなくて……アキが倒れたらすぐに目の前が真っ暗に……」

 だいぶ怯えているようだ。順に他の3人も目を覚ました。皆で顔を見合わせていると、辻堂が顔をしかめる。

 「レイは?レイはどこ?」

 「あ、ほんとだレイちゃんがいない!」

 するとカチッと軽い音がした。鏡張りの壁が透けて、電気のついた奥の部屋が見えるようになる。マジックミラーだったらしい。

 「な……」

 俺はそこに見えたものに唖然とした。先程の男がフードを被って立っている。変わらず全身黒ずくめだ。そしてその横には大きめの椅子に古戸霧が座っていた。

 全身をロープで縛り付けられながら。

 「今から君たちには推理をしてもらおうと思うが、変な気を起こしてもらっては困る。そこで、この古戸霧レイ君には犠牲になってもらうことにした」

 ボイスチェンジャーを通しているらしく、電子的な男の声がそう告げる。俺が質問を投げかけようとすると、辻堂が真っ先に叫んだ。それは今までと雰囲気がまるで違っていた。

 「あなた、こんなことして一体何のつもり!?」

 「君のことを思ってのことだよ。モモハ君」

 そう言うと、男は右手を振り上げた。その手には大きなナイフが握られていた。猿ぐつわをはめられた古戸霧は、必死に抵抗している。だが次の瞬間、彼の胸にナイフが思いっきり突き立てられた。

 ナイフが引き抜かれ血が滲んだかと思うと、一瞬で古戸霧はだらりとして動かなくなった。椅子から滴る出血は段々と床に広がり、血の池が出来上がる。その一部始終に俺らは言葉を失った。

 「彼は11年前、アメリカにいたようだから。可哀想だが、見世物になってもらったよ」

 11年前……?

 「早速本題に入ろう。君たちの中に人殺しが混じっているんだ。その人殺しを見つけ出して欲しい」

 理解の範疇を超えている。超えまくっている。ただでさえ古戸霧が目の前で殺された事実に目を疑っているのに。

 「11年前の人殺しを殺せ。それが今から君たちに課す任務だ。言うことを聞かなければこの子みたいに全員の命を奪うまでさ」

 話しながら古戸霧をつつく。彼の座る椅子が倒れたかと思えばそのまま消えた。見ると床に穴が開いていた。そしてまた閉じた。

 要するにこれは推理問答部員5名の、命をかけた探り合いというわけだ。
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