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第3章>毒蛇の幻像[マリオネット・ゲーム]

Log.64 ツウガクルート

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 春の陽気も、段々と夏らしく変わりつつある。桜の花はとうに散っていて、青々とした街路樹が気持ちの良い木陰を作っていた。そんな通学路を、美頼と二人で喋りながら歩いている。

 美頼とは話に困ったり沈黙が続いたりすることもないし、むしろ気兼ねなく話せる。なんだかんだで気楽な仲だ。そういう点では、俺も恵まれているんだろうと感じる。

 しばらくすると例の元八百屋が見えてきた。未だに昨日の数時間をここで過ごしたとは思えない。というかゾンビの世界がリアルすぎて、あそこにいたのが数時間だとは思えなかった。

 「ほんとに、リアルだったよね。ゾンビゲーム」

 「お前は超能力者か何かか」

 「あ、やっぱ同じこと考えてた?」

 警察が残していったであろう、立ち入り禁止のテープを横目に、その建物は後にした。するとすぐに、美頼がこんなことを言い出した。

 「てかさ、昨日あのキモい男に何言われたの?最後口調が違ったとかなんとか言ってたけどさ、私があいつにやられてからアキがゲーム終わるまで一時間くらいでしょ。結構話してるよね」

 「いや、ちょっと苦戦はした。咲夜は刺したんだけど、なんか変な薬使って例のムカデに変身しやがってさ」

 そういえば詳しいことは話していなかった。美頼が驚きの声を上げる。

 「嘘でしょ?!そんなん勝てるわけないじゃん。どうやったの」

 「実は優衣さんが再起動して戻ってきてくれたんだ。俺がまた囮になって、その隙に倒してくれたんだよ」

 美頼がまた驚きの声をあげる。

 「嘘でしょ?!優衣さんが!?え、生きてたの!?」

 「忙しいな、お前……」

 「いやだって……情報量多すぎじゃん?」

 色々詳しいことを説明すると、なるほどと納得してくれた。また、優衣さんが俺の母親だったと知って、3度目の驚きの声も聞けた。

 すると、美頼が腕を組みながら首をひねる。

 「でもなぁ……てことはあれだよね。言われたら思い出したけど、マヒロンってアキのお母さんにすっごく似てるよね。昔の記憶にうっすらとだけど残ってる」

 「ああ、多分それが既視感の原因だ」

 話しながら、悩む。麻尋が俺の妹。そう奴が言っていたことを、美頼に話すべきだろうか。

 「あー……美頼?」

 「なに?」

 美頼がこちらを見上げてくる。

 「……いや、なんでもない」

 「はぁ?」

 やっぱりもう少し整理してからにしよう。そう思い直し話すのを止めると、美頼は怪訝な顔をしていたが、しばらくして考えるのをやめたようだった。

 何故かと言えば、学校に着いたからなんだが。

 「お!!アキ、ひーちゃん!昨日は散々だったみたいだね!」

 見ればいつものように元気な千夜が下駄箱の前に立っていた。

 「お前……もう風邪は治ったのか?」

 「熱が下がったから来たんだよ。まだ鼻水は出るよ。……欲しい?」

 「鼻水を?は?」

 今日も千夜は通常運転だ。いや、流石に通常よりか頭がおかしい。多分風邪のせいだろう。

 「じゃー先行くねー。お二人さん」

 美頼がすました顔で階段の方へ歩いていく。一先ず上履きに履き替えて、俺たちも後に続く。すると、美頼は立ち止まっていた。携帯を持っている。

 「校内で堂々すぎるだろ。没収されるぞ?」

 「うるさいなぁ。忘れてたから電源切ってたの」

 美頼は無駄に怒りながら、そっぽを向いて階段を上がり出す。俺は千夜と顔を合わせる。

 痴話喧嘩を見て喜んでいるおっさんのような変顔を向けてきたので、一発殴って俺も教室に向かった。
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