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第2章>仔羊の影踏[ゾンビ・アポカリプス]

Log.57 what's what

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 「種明かしするとね、ゾンビ化のプログラムを加えられる前に命を絶つ。それはまあシャットダウンってことになるんだけど、そうすれば再起動もできるのよ。パソコンとかも、バグが起きた時に再起動すれば、全てリセットできたりするじゃない?そういうことなんだけど、でもまだこの世界で生き返る保証はなかったし……さっきのが最後の別れになるかもしれなかったから、あんな感じになっちゃったけどねん」

 咲夜の体をショットガンでつつきながら、彼女は説明する。しまいには頬をつつきだしたので、俺は慌ててやめさせた。

 「生き返るなら、最後の別れにはならないんじゃ……?なんで会えなくなるかもしれないんですか?」

 「ああ!もう、もどかしい!言いたいのに言えない!ホントふざけんなよこのプログラムめ」

 ごめんね、と謝る優衣さん。俺は笑いながら、気にしないでくださいと伝える。再起動したのもあって、話せないことがリセットされたようだ。なんか段々と優衣さんの人柄が見えてきた気がする。

 ふと見ると、彼女の目線はある一点に留まっていた。その方角を見て、俺は納得する。

 「その子がもしかして麻尋ちゃんかな。ほんとに私にそっくりだけど」

 「名前、よく覚えてますね。1回しか言わなかったような……」

 「そりゃ、人工知能なんだから」

 記憶力は馬鹿にならないわよ。と言いながら優衣さんは麻尋の入ったタンクに近づいた。

 「この子まさか……」

 今までとは少し異なる雰囲気で、優衣さんは麻尋を見つめる。そして次の瞬間。そこに彼女の姿はなかった。

 本当にいつの間にか、いなくなっていた。

 ほんの一瞬、瞬きしただけで、優衣さんは跡形もなく消えていた。

 「……今度はなんだ?優衣さん!?」

 彼女の名前を呼ぶが、返事はない。辺りは静まり返っている。その静けさも長くは続かなかったが。

 「まぁまぁ。落ち着いてくれ。このゲームは君の勝ちだ」

 「……!?死ぬんじゃなかったのか!?」

 驚いて振り向けば、いつの間にかムカデの体も消えて、咲夜が元の姿に戻っている。

 「ごめんね、俺は少し嘘をついたのさ。デスゲームなんてやっていない。致死量の電流が流れる機械など作ってないんだよ」

 「えぇ……」

 安心したような、ガッカリしたような。命がかかってなくて良かったのは確かだが、このタイミングでそういうネタばらしをされると、とてもいい気分とは言えない。死闘を繰り広げた末に勝った。そのはずなのに、全て幻だったことになるじゃないか。

 「お詫びと言ってはなんだが、俺の知ってることを全て話そう。ここに君達を誘った経緯いきさつも、についても……」

 麻尋について?

 「俺は蒲通咲夜がまどおりさくや。仲山愁先生の研究に協力していた、天才プログラマーだ。そしてこの国の戸籍データベースにハッキングして、麻尋ちゃんを薪原邸の長女に仕立てあげた張本人でもある」

 パズルのピースが少しずつ埋まっていくのを感じる。

 ……こいつがそれの犯人だったのか。

 「てことは確か……蓑畑雪穂みのはたせつほ、だったっけ。あのアンドロイドもお前が作ったとか……?」

 「ははっ。そうそう!鋭いねぇアキ君。やっぱり君はいいよ」

 嬉しそうに咲夜は答える。いいとはなんだ。誰にでもわかりそうな当たり前のことを言っただけだろう。

 「でも流石にここまでは分からないだろう。この子は、薪原麻尋ちゃんはね、実は君の……」

 咲夜の表情が少し、真面目になる。

 「君の妹なんだよ」



 「…………は?」



 俺は目の前のタンクに入った少女をもう一度見た。麻尋を見る度に感じていた懐かしい感覚の意味。俺はそれに少しずつ近づいていた。

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