13 / 13
02:『異世界、されど現世界である場所』
:11 10分後、チーズタルト
しおりを挟む
「とりあえず帰っちゃおっか」
サユキが小声でこちらを伺ってくる。あいつらがまだ近くにいるかもしれない。この高い木の上から直接家まで移動できないか聞いてみる。サユキは明後日の方向を向いた。
「……」
フクロウのような鳴き声が森に響いている。
「任せなさい!この空間魔術師サユキ様にできないことなどないわ!」
「なんだよ今の間!!めちゃくちゃ不安!!」
後ろでプカがクスクス笑っている。もちろん大声は出してない。サユキが余裕のありそうな顔で腕を掴んできた。そして無言で顎を前に突き出し、何か合図を送ってくる。後ろにいるプカの手を掴めと言うことか。プカに手を差し出すと、にっこり笑って握ってくれた。
「じゃあ行くわよ」
次の瞬間サユキは木の枝を蹴り飛ばして宙を舞った。もちろん僕も引っ張られて枝の上から放り出され、プカも後に続く。地面が下に見える。その距離およそ10数メートル。
「おいバカバカバカ!!!」
泣きそうになりながら叫んでしまう。そしてコンマ1秒の間に、周りの景色は溶けるように家の中へと変わっていった。速すぎて目を瞑ることも追いつかない。少し高さがあったが無事着地。怪我はなさそうだ。
「死ぬかと思った……」
ドサッと体が地面に落ちるのを感じて、サユキに怒鳴る余裕もなく一息つく。目を開けると息がかかる距離でプカが顔を赤らめていた。プカを下敷きに僕がちょうど抱き抱えるような形で倒れていて、ワンピース越しに鼓動を感じる。白い肌が僕の腕と密着していた。
「ご、ごめん!!」
慌てて僕が起き上がると、プカの服が破けた。思考が追いつかず混乱。よく見れば僕の服とプカの服の布地が混ざり合って繋がっていることがわかった。プカは流石に耐えられなかったのか、秒速で水による目潰しが飛んでくる。結構痛い。目を押さえて僕は仰向けに倒れ込む。
「いやーごめんごめんーたまに失敗しちゃうんだよねえ。死にはしないんだけど、なんでか身につけてるものが混ざっちゃったりさ」
てへぺろ、とサユキが舌を出す。
「失敗で済む問題じゃねえだろ!!大体なんで突拍子もなく飛び降りた!?」
「ごめんってば。あの高さから瞬間移動すると飛んだ後の場所を間違えて床の中とかに瞬間移動しちゃったりするのよ。割とこの魔法めんどくさいのよ?あたいの想像力が頼りになるんだから!」
どこにでも移動できるとしても、高さを誤る可能性があるのか。たしかにそれは盲点だった。だからあの時彼女は少し口籠もったわけだ。
「な、なるほど……いや飛ぶ前に教えろよ」
「てへ」
「ごめんユヅキ。とりあえずシャワー、どう?」
プカの申し訳なさそうな声が遠くから聞こえる。おそらく僕の目が見えない間に、どこか着替えられる場所に移動したのだろう。サユキが2階にある風呂場の場所を教えてくれた。ありがたく水浸しの服を脱いで洗濯カゴらしき所に放り込む。洗濯機がないが、この世界の人たちはどう洗濯するのだろう?
パステルカラーの洋風なタイルが敷き詰められた部屋で、カーテンを閉めてシャワーを浴び始めると鏡が目に入った。僕の右目は相変わらず白かった。見える景色に変化はないからとても不思議な感覚だ。日常生活に支障がなくて良かったと、本当に安心した。
僕の魔法はなんなのだろうか。先程の白昼夢が相手の女の魔法ではなく僕の魔法だったのかもしれない。そういえば元の時間に戻った時に背筋に冷たいものが走ったのを思い出した。
「魔法を使うときに体温も奪われるってあいつ言ってたよな」
シャワーを止めて、脇に置かれたタオルに手を伸ばす。あまりここら辺は元いた世界と大差ないようだ。少し裕福な人が住んでいる家、例えば巡の家なんかはこんな感じだった気がする。入る前にプカが渡してくれた服を着て、シャワー室を出る。
部屋を出た途端に嗅いだことのない香ばしい香りがそこら中に広がっていた。階段を降りると、ソファに座って女子がお茶会をしていた。
「おっ、来たねユヅキ。いやーすまんかったなあー!」
「もういいよ……というかこの匂いは?」
プカが手に持つティーカップを見せながら答える。
「紅茶、あとチーズタルト、だよ」
サユキに座れとポンポンソファを叩かれたので、空いてる席に座ると一人分のティーセットが出てきた。食事を楽しむどころか、間食を楽しむなど初めての経験……いや正しくはタワーの一回で巡と食べたのが初めてだが、こうして本物のお菓子を食べるのは初めてだ。
「なんだこれ、めちゃくちゃ美味しい!」
「プカの手作りだぜ。よかったねえプカ」
プカは無言でコクコク頷く。そしてそれはともかく、とサユキが話を変えた。
「あの犬のやつとフードの女。ユヅキの知り合いか?ユヅキの名前が出てたけど……」
「え?そうなの?僕はあんな奴ら見たことないんだけど……なんて言ってたんだ」
犬の少年が話していた言語は日本語じゃなかったから僕にはわからなかった。
「おかしい、テトラはユヅキを予知していたのに……みたいな感じだったと思う。それで彼女はまだ本調子じゃないみたいに女が返してたから、テトラ?っていう人の予知を見てあの場所に来たのかなって」
「なるほど……」
テトラっていう人がまた別にいるのか。あいつらの仲間か?白昼夢の時はいきなり戦闘が始まったから何も情報を得られなかったが……。
「あ、僕も聞きたいことがあるんだけど……僕があいつらの来るのを知ってた理由が、一回体験してたからなんだよね」
「『体験』?『体験』って『経験』みたいな?」
プカが反応する。自分の知っている単語と違う意味があるのではと考えたらしい。
「そうそう。なんかまるでその場で起こっているみたいな感じで、一回あいつらが僕たちのいる所に来て、プカとサユキをあのタイムマシンを消した光みたいなので消したんだ。それで焦ってたら女の光に僕も当たりそうになって、当たったのか当たらなかったのかはわからないけど気付いたら時間が戻って……そのあと寒気みたいなのがしたから魔法を使ったのかと」
サユキが唸る。
「うーん……一種の未来予知の魔法かな。時間を飛ばすだとしても飛んだ先に自分がいないといけないし。たしかに魔法を使った後は氷が体に流れてるような感覚になるよ。そんな感じ?」
「そこまでは覚えてないけど……そうだったかも」
「もう一回使うことはできる?自分の使える能力をちゃんとわからないと、魔法って使えないから……」
そう口を挟んだのはプカだ。確かに。皆が息を呑む中、僕はそのまま未来を見ようと念じてみる。または過去を見ようと念じてみる。だが何も起こらない。側から見たらただ右目に手を当てて力んでいる痛い奴だ。
「ま、まぁそんなに急がなくてもいいんじゃないか?それ以外にもユヅキがやらなきゃいけないこともあるし」
なだめるようにサユキが沈黙を遮った。
「やらなきゃいけないこと?」
「ほら、マリヤナ語を覚えなきゃ!」
マリヤナ語。新たな単語だが、おそらくこの世界の言語だろう。魔法が使えるようになった元凶の放射線、マリヤナ線の名前がついてることから容易に想定できる。
「世界が滅亡してから、言語はマリヤナ語に統一されたの。日本語を話す人はこの時代にはほぼいなくなっちゃったね。古代言語みたいな感じ。あたいは日本の文化が好きだからめっちゃ勉強したんだ!!」
「そういえばその服……そういうことだったのか」
サユキのマントの下にはシンプルに可愛らしいデザインの浴衣が見え隠れしていた。
「そうよ。いいでしょこれ。プカの手作りだぜ」
「ふふ。嬉しい」
「プカなんでもできるな!?」
僕のツッコミにサユキが笑いながらそそくさと立ち上がった。2階に上がってしばらくすると何冊か本を持って降りてくる。サユキが僕に顔を近づけて話し出した。
「さっきプカと話してたんだけどね。まず……まあ仕方ないからしばらく私たちの家で泊めてあげるわ。日本語じゃなくてマリヤナ語を覚えるまでね」
ついでに話した程度のトーンで言うが、見知らぬ人を家に泊めるなんて……素晴らしく寛容な心の持ち主だ。
「本当か?!それはめちゃくちゃ助かる!!」
「それで本題だけど、これがマリヤナ語で書かれた日本語の教科書ね。読めそう?」
目の前にドシンと重そうな本が置かれる。片手で掴めないくらい分厚い。本を開いてみると、懐かしい文字の羅列が目に入った。こんにちは……か。ただ問題なのが、日本語以外こちらの言語で書かれているので発音がよくわからない。サユキに尋ねる。
「これなんて読むんだ?」
「どれどれ……ああ、これはね……」
ゴニョゴニョとサユキが耳打ちする。僕は真剣に耳を澄まして、同じ発音を再現しようとした。プカの方を見て、こんにちはと言うだけだ。なんて簡単なのだろう。
「プカ」
僕が呼ぶとちゃんとこっちを向いてくれる。可愛い。
「とるえぷらぁ!」
これでどうだ。プカも同じ言葉を返してくれるかと思えば、見る見る彼女は赤面してい……く?
放水。
身体中びちょびちょに逆戻りしてしまった僕の横で、サユキは涙が出るほど爆笑している。
「プクククク。ユヅキ、ごめん、『こんにちは』は『トルアエ プロァ』だから。と、る、あ、え、ぷ、ろぁ!」
「じゃあ僕今なんて言ったんだ?」
「『トルエ』は『裸』で『プラ』は『女』って意味だから、今の言い方だと……」
笑いすぎて腹を抱えながら、サユキがゆっくり丁寧に教えてくれた。
「おめースッポンポンだな!みたいな感じかな」
「もうやだ帰りたい」
僕がマリヤナ語を習得するまで、まだまだ先は長そうだ。
サユキが小声でこちらを伺ってくる。あいつらがまだ近くにいるかもしれない。この高い木の上から直接家まで移動できないか聞いてみる。サユキは明後日の方向を向いた。
「……」
フクロウのような鳴き声が森に響いている。
「任せなさい!この空間魔術師サユキ様にできないことなどないわ!」
「なんだよ今の間!!めちゃくちゃ不安!!」
後ろでプカがクスクス笑っている。もちろん大声は出してない。サユキが余裕のありそうな顔で腕を掴んできた。そして無言で顎を前に突き出し、何か合図を送ってくる。後ろにいるプカの手を掴めと言うことか。プカに手を差し出すと、にっこり笑って握ってくれた。
「じゃあ行くわよ」
次の瞬間サユキは木の枝を蹴り飛ばして宙を舞った。もちろん僕も引っ張られて枝の上から放り出され、プカも後に続く。地面が下に見える。その距離およそ10数メートル。
「おいバカバカバカ!!!」
泣きそうになりながら叫んでしまう。そしてコンマ1秒の間に、周りの景色は溶けるように家の中へと変わっていった。速すぎて目を瞑ることも追いつかない。少し高さがあったが無事着地。怪我はなさそうだ。
「死ぬかと思った……」
ドサッと体が地面に落ちるのを感じて、サユキに怒鳴る余裕もなく一息つく。目を開けると息がかかる距離でプカが顔を赤らめていた。プカを下敷きに僕がちょうど抱き抱えるような形で倒れていて、ワンピース越しに鼓動を感じる。白い肌が僕の腕と密着していた。
「ご、ごめん!!」
慌てて僕が起き上がると、プカの服が破けた。思考が追いつかず混乱。よく見れば僕の服とプカの服の布地が混ざり合って繋がっていることがわかった。プカは流石に耐えられなかったのか、秒速で水による目潰しが飛んでくる。結構痛い。目を押さえて僕は仰向けに倒れ込む。
「いやーごめんごめんーたまに失敗しちゃうんだよねえ。死にはしないんだけど、なんでか身につけてるものが混ざっちゃったりさ」
てへぺろ、とサユキが舌を出す。
「失敗で済む問題じゃねえだろ!!大体なんで突拍子もなく飛び降りた!?」
「ごめんってば。あの高さから瞬間移動すると飛んだ後の場所を間違えて床の中とかに瞬間移動しちゃったりするのよ。割とこの魔法めんどくさいのよ?あたいの想像力が頼りになるんだから!」
どこにでも移動できるとしても、高さを誤る可能性があるのか。たしかにそれは盲点だった。だからあの時彼女は少し口籠もったわけだ。
「な、なるほど……いや飛ぶ前に教えろよ」
「てへ」
「ごめんユヅキ。とりあえずシャワー、どう?」
プカの申し訳なさそうな声が遠くから聞こえる。おそらく僕の目が見えない間に、どこか着替えられる場所に移動したのだろう。サユキが2階にある風呂場の場所を教えてくれた。ありがたく水浸しの服を脱いで洗濯カゴらしき所に放り込む。洗濯機がないが、この世界の人たちはどう洗濯するのだろう?
パステルカラーの洋風なタイルが敷き詰められた部屋で、カーテンを閉めてシャワーを浴び始めると鏡が目に入った。僕の右目は相変わらず白かった。見える景色に変化はないからとても不思議な感覚だ。日常生活に支障がなくて良かったと、本当に安心した。
僕の魔法はなんなのだろうか。先程の白昼夢が相手の女の魔法ではなく僕の魔法だったのかもしれない。そういえば元の時間に戻った時に背筋に冷たいものが走ったのを思い出した。
「魔法を使うときに体温も奪われるってあいつ言ってたよな」
シャワーを止めて、脇に置かれたタオルに手を伸ばす。あまりここら辺は元いた世界と大差ないようだ。少し裕福な人が住んでいる家、例えば巡の家なんかはこんな感じだった気がする。入る前にプカが渡してくれた服を着て、シャワー室を出る。
部屋を出た途端に嗅いだことのない香ばしい香りがそこら中に広がっていた。階段を降りると、ソファに座って女子がお茶会をしていた。
「おっ、来たねユヅキ。いやーすまんかったなあー!」
「もういいよ……というかこの匂いは?」
プカが手に持つティーカップを見せながら答える。
「紅茶、あとチーズタルト、だよ」
サユキに座れとポンポンソファを叩かれたので、空いてる席に座ると一人分のティーセットが出てきた。食事を楽しむどころか、間食を楽しむなど初めての経験……いや正しくはタワーの一回で巡と食べたのが初めてだが、こうして本物のお菓子を食べるのは初めてだ。
「なんだこれ、めちゃくちゃ美味しい!」
「プカの手作りだぜ。よかったねえプカ」
プカは無言でコクコク頷く。そしてそれはともかく、とサユキが話を変えた。
「あの犬のやつとフードの女。ユヅキの知り合いか?ユヅキの名前が出てたけど……」
「え?そうなの?僕はあんな奴ら見たことないんだけど……なんて言ってたんだ」
犬の少年が話していた言語は日本語じゃなかったから僕にはわからなかった。
「おかしい、テトラはユヅキを予知していたのに……みたいな感じだったと思う。それで彼女はまだ本調子じゃないみたいに女が返してたから、テトラ?っていう人の予知を見てあの場所に来たのかなって」
「なるほど……」
テトラっていう人がまた別にいるのか。あいつらの仲間か?白昼夢の時はいきなり戦闘が始まったから何も情報を得られなかったが……。
「あ、僕も聞きたいことがあるんだけど……僕があいつらの来るのを知ってた理由が、一回体験してたからなんだよね」
「『体験』?『体験』って『経験』みたいな?」
プカが反応する。自分の知っている単語と違う意味があるのではと考えたらしい。
「そうそう。なんかまるでその場で起こっているみたいな感じで、一回あいつらが僕たちのいる所に来て、プカとサユキをあのタイムマシンを消した光みたいなので消したんだ。それで焦ってたら女の光に僕も当たりそうになって、当たったのか当たらなかったのかはわからないけど気付いたら時間が戻って……そのあと寒気みたいなのがしたから魔法を使ったのかと」
サユキが唸る。
「うーん……一種の未来予知の魔法かな。時間を飛ばすだとしても飛んだ先に自分がいないといけないし。たしかに魔法を使った後は氷が体に流れてるような感覚になるよ。そんな感じ?」
「そこまでは覚えてないけど……そうだったかも」
「もう一回使うことはできる?自分の使える能力をちゃんとわからないと、魔法って使えないから……」
そう口を挟んだのはプカだ。確かに。皆が息を呑む中、僕はそのまま未来を見ようと念じてみる。または過去を見ようと念じてみる。だが何も起こらない。側から見たらただ右目に手を当てて力んでいる痛い奴だ。
「ま、まぁそんなに急がなくてもいいんじゃないか?それ以外にもユヅキがやらなきゃいけないこともあるし」
なだめるようにサユキが沈黙を遮った。
「やらなきゃいけないこと?」
「ほら、マリヤナ語を覚えなきゃ!」
マリヤナ語。新たな単語だが、おそらくこの世界の言語だろう。魔法が使えるようになった元凶の放射線、マリヤナ線の名前がついてることから容易に想定できる。
「世界が滅亡してから、言語はマリヤナ語に統一されたの。日本語を話す人はこの時代にはほぼいなくなっちゃったね。古代言語みたいな感じ。あたいは日本の文化が好きだからめっちゃ勉強したんだ!!」
「そういえばその服……そういうことだったのか」
サユキのマントの下にはシンプルに可愛らしいデザインの浴衣が見え隠れしていた。
「そうよ。いいでしょこれ。プカの手作りだぜ」
「ふふ。嬉しい」
「プカなんでもできるな!?」
僕のツッコミにサユキが笑いながらそそくさと立ち上がった。2階に上がってしばらくすると何冊か本を持って降りてくる。サユキが僕に顔を近づけて話し出した。
「さっきプカと話してたんだけどね。まず……まあ仕方ないからしばらく私たちの家で泊めてあげるわ。日本語じゃなくてマリヤナ語を覚えるまでね」
ついでに話した程度のトーンで言うが、見知らぬ人を家に泊めるなんて……素晴らしく寛容な心の持ち主だ。
「本当か?!それはめちゃくちゃ助かる!!」
「それで本題だけど、これがマリヤナ語で書かれた日本語の教科書ね。読めそう?」
目の前にドシンと重そうな本が置かれる。片手で掴めないくらい分厚い。本を開いてみると、懐かしい文字の羅列が目に入った。こんにちは……か。ただ問題なのが、日本語以外こちらの言語で書かれているので発音がよくわからない。サユキに尋ねる。
「これなんて読むんだ?」
「どれどれ……ああ、これはね……」
ゴニョゴニョとサユキが耳打ちする。僕は真剣に耳を澄まして、同じ発音を再現しようとした。プカの方を見て、こんにちはと言うだけだ。なんて簡単なのだろう。
「プカ」
僕が呼ぶとちゃんとこっちを向いてくれる。可愛い。
「とるえぷらぁ!」
これでどうだ。プカも同じ言葉を返してくれるかと思えば、見る見る彼女は赤面してい……く?
放水。
身体中びちょびちょに逆戻りしてしまった僕の横で、サユキは涙が出るほど爆笑している。
「プクククク。ユヅキ、ごめん、『こんにちは』は『トルアエ プロァ』だから。と、る、あ、え、ぷ、ろぁ!」
「じゃあ僕今なんて言ったんだ?」
「『トルエ』は『裸』で『プラ』は『女』って意味だから、今の言い方だと……」
笑いすぎて腹を抱えながら、サユキがゆっくり丁寧に教えてくれた。
「おめースッポンポンだな!みたいな感じかな」
「もうやだ帰りたい」
僕がマリヤナ語を習得するまで、まだまだ先は長そうだ。
0
お気に入りに追加
8
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(3件)
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
美しい姉と痩せこけた妹
サイコちゃん
ファンタジー
若き公爵は虐待を受けた姉妹を引き取ることにした。やがて訪れたのは美しい姉と痩せこけた妹だった。姉が夢中でケーキを食べる中、妹はそれがケーキだと分からない。姉がドレスのプレゼントに喜ぶ中、妹はそれがドレスだと分からない。公爵はあまりに差のある姉妹に疑念を抱いた――
《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。
友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」
貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。
「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」
耳を疑いそう聞き返すも、
「君も、その方が良いのだろう?」
苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。
全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。
絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。
だったのですが。
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】私だけが知らない
綾雅(りょうが)祝!コミカライズ
ファンタジー
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
キャンピングカーで往く異世界徒然紀行
タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》
【書籍化!】
コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。
早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。
そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。
道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが…
※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜
※カクヨム様でも投稿をしております
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
小説大賞だされてたんですね!
!!ヽ(゚д゚ヽ)(ノ゚д゚)ノ!!
はじめてボタン押すのでちゃんと押せてるかどうか、、、
応援してまーす
ふあるさん、、更新止まっているのにわざわざありがとうございます。本当に感謝です。
時間出来次第執筆したいのでその時はよろしくお願いします😭
(*σ´ェ`)σまってました!
お待たせしました!!笑笑
話のプロットは考えているのですがとにかく時間軸がこんがらがる設定なのでどこから描写しようか悩んでしまいます、、笑笑
これからは少なくとも週一で更新目指しますのでよろしくお願いします🙇♂️🙇♂️
(*´艸`*)いいですねー
今日初めて読ませていただきました。
次回更新、よみなおしつつおまちしてまーす
ありがとうございます……!はじめての感想にとても胸が熱くなっております!!更新滞らないよう頑張らせていただきます!!
めちゃくちゃモチベになるのでまた気が向いたらコメントいただけると幸いです笑笑
コメント感謝です〜!